パワハラが原因で社員がうつ病で休職!? 会社はどんな責任を問われる?

この記事で分かること
  1. パワハラでうつ病になった社員に対し、会社側は損害賠償責任を負うことも
  2. パワハラが発覚した場合は早期対応と適切な対処を
  3. 社員の健康管理は会社の責任。身体だけでなく精神的ケアも必要
  4. パワハラを防ぐために就業規則等の改訂も検討する

社員が上司などのパワハラが原因でうつ病になり休職し、その原因が会社にあると判断された場合、会社は社員に対し損害賠償責任を負います。そもそも社員の健康管理は会社の義務であり、法律でも定められています。現在は身体のケアだけでなく精神的ケアも求められていますので、社内で対応を検討し実践していく必要があります。

パワハラでうつ病になった社員に対する会社の責任とは

パワハラとは、一般的に上司が部下に対し職務上の権限を濫用して嫌がらせやいじめを行うことを指します。パワハラに対し直接的に処罰する法律はありませんが、パワハラが原因で社員がうつ病になった場合、会社は損害賠償責任を問われることがあります。

使用者責任

上司から受けたパワハラで社員がうつ病になり仕事が出来なくなった場合、会社は使用者責任に基づき損害賠償責任を負うことがあります。パワハラを行った上司だけでなく、使用者である会社側も責任を問われるのです。(民法715条 使用者等の責任)

安全配慮義務

会社が上司の部下に対するパワハラ行為を認識していたにも関わらず、それを防ぐための措置を取らなかった場合、安全配慮義務や職場環境を維持する義務を怠ったとされ、債務不履行責任を負うことになります。(民法415条 債務不履行による損害賠償)

パワハラによるうつ病で休職した社員に対する会社責任の判断基準は

社員が「パワハラが原因でうつ病になった」と主張してきた場合、どのような要件があると会社側に責任が生じるのでしょうか。詳しい内容について、事前によく理解しておくことが大事です。

会社の損害賠償責任を問う要件について

社員のうつ病について会社の損害賠償が問われた多くの裁判例では、下記の要件に従い会社の賠償責任の有無を判断しています。

①業務起因性

うつ病が発生した原因が会社の業務に起因するものであること

②帰責性

社員のうつ病発生について、会社に故意・過失があること

③損害の発生

社員がうつ病により治療費等の損害が発生すること

④帰責性と損害との因果関係

会社の故意・過失により損害の発生に因果関係があること

「業務起因性」でまず判断される

会社に損害賠償の責任があるかどうかは、まず「業務起因性」があるかどうかで判断されます。うつ病が発生した原因が、社員の持病や私生活上の問題に基づくものではなく、会社の業務が原因であることが要件になります。

裁判において業務起因性が肯定された場合、大半のケースで会社側の「②帰責性」、「③損害の発生」、「④帰責性と損害との間の因果関係」は認められていいます。

労災認定されている場合、会社の賠償責任も肯定される可能性が大きい

社員がうつ病で損害賠償を求めてくる場合、事前に労災請求をしていることが多いでしょう。既に労災認定を受けている場合、会社側の賠償責任についても肯定される可能性は大きいです。
実際に会社の損害賠償責任が問われた裁判では、厚生労働省が発表している「心理的負荷による精神障害の労災認定基準」により業務起因性の有無を判断しています。

ワンポイントアドバイス
損害賠償は民事上の制度で、労災は国(厚生労働省)が保険金を支給する制度でそれぞれ異なる制度ですが、どちらもうつ病罹患の判断基準は「業務起因性」があるかどうかがポイントになります。

パワハラによるうつが認められた場合は早期対応を。予防の対策も必要

社内でパワハラの事実が明らかであると認められた場合、会社側は対応策を検討する必要があります。パワハラを受けた社員の損害賠償請求や労災認定の有無に関わらず、企業として早期に解決を目指すことが賢明です。

パワハラに対する対応

パワハラに対する実態調査

社内でパワハラが起きていることが疑われた場合、実態調査を行います。ただしパワハラの境界線は明確に定めることはできないため、上司の部下に対する指導が熱心過ぎたのか、部下が過剰に反応したのかなど慎重に事実関係を把握する必要があります。

当該社員からの聞き取り調査だけでなく、メールのやり取り内容を確認したり、現場を目撃した社員へのヒアリングも行います。

パワハラをした社員に対する処分

パワハラであることが明らかに認められた場合、パワハラを行った社員に対しては何らかの処分を検討すべきです。
しかし直ちに懲戒解雇を行うことは難しいため、譴責(けんせき)処分といった注意・警告や顛末書の提出、出勤停止など比較的軽い処分から検討します。人事異動や、当事者が管理職であれば降格なども手段の一つです。

パワハラを防ぐために就業規則等でルールを制定することも検討

社内でのパワハラを防ぐためには、就業規則やその他の服務規定にパワハラについてルールを定めることを検討しましょう。
パワハラについての禁止条項や、パワハラを行った場合の懲戒処分について明文化するほか、より詳細に規定する場合は「パワーハラスメント防止規程」を作成します。

ワンポイントアドバイス
社内でのパワハラが明らかな場合は労災認定等に関わらず早期対応を目指しましょう。就業規則にパワハラの規定を設けて明文化しましょう

パワハラでのうつ病で休職する社員への対応は?

休職とはケガや病気などが原因で業務ができなくなった社員が会社に在籍したまま一定期間休むことです。社員が「パワハラが原因でうつ病になり休職したい」と申し出てきた場合、会社側は休職を拒否したり渋ることはできないでしょう。

休職後のビジョンを明確にする

会社側はうつ病で休職する社員に対し、休職後のビジョンを明確にしてあげることが大事です。どんな原因であれ休職することは本人にとって大きな不安であり、ましてパワハラを受けた心的負担もあります。その場しのぎの説明や、今後の対応を決めずに休職期間がズルズル延びていくことは避けなくていけません。

就業規則内に休職規定を制定しておく

労働基準法では社員の休職に関する規定はありません。しかし休職、復職する際の基準や手続きが判らなければ休職する社員は不安に感じるだけでなく、口約束では後々「言った、言わない」というトラブル元です。
就業規則内で「休職規定」の項目を作成し、休職期間や内容について具体的に制定しておきましょう。休職する前に社員に対し具体的に説明できるようにします。

ワンポイントアドバイス
休業規定に関する法律は定められていませんが、就業規則できちんと定めておきます。
休業後の会社と社員のトラブルを避けるため、お互い理解し納得した上で休業できるようにしましょう。

社員がうつ病になり休職することを防ぐためには

社員がうつ病で出社できなくなり、長期間休職してしまうことは会社にとっても大きな影響があります。休職者への対応だけでなく、他の社員への業務分担や社内の人員配置まで見直す必要があるからです。

健康管理は会社の責任

かつての日本は、会社で働く上で健康であることは当たり前であり、病気や体調不良は自己責任という考えが主流でした。しかし時代とともに健康上の不具合は会社の不備であり、労働災害が認定されるケースも増えました。現在、社員が安全に健康で仕事をすることは、安全配慮義務として法律で規定された会社の責任です。

うつ病になる社員をなくすための対策

メンタルヘルスケア窓口の設置

会社は法定で定められた健康診断を実施し、社員の健康管理に勤める必要がありますが、身体だけでなく心の健康管理も重要になっています。メンタルヘルスケア窓口のような気軽に相談できる体制を整え、うつ病など精神的な病気を予防する必要があります。

社内教育の実施

社内においてパワハラに関する内容や会社の使用者に対する責任について学ぶ研修を実施します。管理者だけでなくできれば社員全員が受講し、同じ知識を共有することが望ましいでしょう。

長時間労働・業務分担の見直し

社員がうつ病になる原因として、パワハラに加え業務に対する重責や長時間労働も含まれるでしょう。会社が社員の勤務時間や業務分担を適正にし、社員の精神的負担を減らすことも大事です。

ワンポイントアドバイス
社員の健康管理は会社の責任。身体のケアだけでなく心のケアも大事です。
またうつ病を防ぐには社内研修や業務時間や業務分担の見直しも必要です。

以前に比べ、会社と使用者の問題が発生すると会社側の責任が追求されることが多くなりました。様々な労働問題に対応していくには、専門家の意見を取り入れながら社内で適切な対策を実施していくことが重要です。

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