社員を解雇するには?労働法を知ってトラブルを防ぐ

この記事で分かること
  1. 解雇できない状況を把握しておく
  2. 就業規則に解雇の事例を明記しておく
  3. パートやアルバイト社員にも労働法の解雇制限が適用される

日本では労働法により、簡単に解雇できないようになっています。社員を解雇するためには、就業規則などに解雇事由を明記し、かつ客観的にみて該当することを証明できるようにしなければなりません。

社員の解雇は労働法で制限されている

日本では、労働法により従業員は手厚く守られているため従業員を解雇することは難しいと言われています。しかし一方、中小企業などでは、会社側の判断で社員を突然解雇した話を耳にしたことがある人もいるのではないでしょうか。

社員を解雇するには合理的な理由があることと相当であることが必要

法律上、解雇は客観的に見て合理的な理由がない場合や社会的に相当であると認められない場合は無効であると定められています。解雇が正当であると判断されるには、以下の要件を満たすことが必要です。

客観的合理性

「客観的合理性」とは、誰が見ても「解雇されても仕方がない」と思う理由があることです。営業成績が悪い、ミスをよくするなどの理由で解雇することは、客観的に見て合理的であるとは言えず解雇が認められない場合があります。

社会的相当性

「社会的相当性」とは、従業員がした行為や状態と解雇処分とのバランスが社会的に見て相当であることを指します。従業員の行為が軽微であるにもかかわらず解雇を行った場合や、解雇処分を行う以前に会社側の注意、指導、教育や管理面での配慮が欠如していた場合などは、社会通念上相当とはいえないことになります。

社員の解雇が禁じられているケース

以下のケースでは、いかなる理由があっても従業員を解雇してはならないと定められています。具体的にどのようはケースが該当するのか見ていきましょう。

従業員の国籍、信条、社会的身分を理由とすること

従業員が外国人だからと言って解雇することはできません。そのほかにも、ある特定の政党を支持していることや特定の宗教を信仰していることなどを理由に解雇することも禁じられています。

業務や通勤が原因で傷病にかかって休業している期間中と、その後30日間

従業員が業務中や通勤中に生じたケガや病気で休業している場合や、その休業が終わった後の30日間は、該当する従業員を解雇できません。ただし、例外的にその病気やケガが3年以上治らない場合に限り、会社が平均賃金の1200日分以上のお金を支払うことを条件に解雇できる場合もあります。

産前産後の休業期間中及びその後30日間

従業員が出産前後に休業している期間(出産予定日前6週間(双子以上の場合は14週間)と、出産の翌日から8週間)およびその後の30日間は、その従業員を解雇することが禁じられています。

育児休業また介護休業を申出あるいは取得したことを理由とすること
男女関係なく、従業員が育児休業や介護休業を取得したことを理由に解雇するのは、明らかに労働法違反です。女性従業員が結婚・妊娠・出産したことを理由に解雇するのも同様です。

ワンポイントアドバイス
解雇は従業員の生活に重大な影響を及ぼすものなので、よほどの理由がなければ解雇はできないものだと考えてよいでしょう。また、正当な理由があっても社員を解雇してはいけないケースがあることも理解しておくことが大切です。

なるべく穏便に社員を解雇する方法

では、問題なく社員を解雇するにはどうしたらよいのでしょうか?なるべく角が立たない方法としては、会社側が退職勧奨を行って従業員に自主的に辞めさせる方向に話を持っていくことが大切です。

就業規則などに解雇について明記する

10人以上の従業員をかかえる会社では、就業規則を作成して労働基準監督署に届出を行うことが義務づけられています。就業規則の中では、解雇に関わる事項については必ず明記しなければなりません。

従業員が10名以下の小さな会社では就業規則がないところも多いかと思いますが、何らかのトラブルに備えて就業規則を作成しておくことをおすすめします。就業規則に解雇に至るケースを明記することにより、裁判が起こった場合に有利となるからです。なお解雇するには、少なくとも解雇しようとする日の30日以上前に解雇の予告を行うか、それに代わる解雇予告手当として30日分以上の平均賃金を支払うことが必要です。

しかし、就業規則で解雇について明記したからとはいえ、実際に従業員を解雇する前には、上長がその従業員が行う業務内容の見直しや配置転換をしたり、必要な教育・指導などを十分に行ったことを立証できなければ、解雇することは困難です。

退職勧奨をして自主退職させるように話を持っていく

会社の経営的に苦しい場合を除き、就業規則に解雇について記載し、解雇予告手当を払ったとしても、会社側の権利濫用であるとして解雇が無効となるおそれがあります。そこでいきなり従業員に解雇を突きつけるのではなく、退職勧奨をすることになります。

退職勧奨とは、文字通り会社が辞めて欲しい社員に対して「このまま会社に残ったとしても評価や待遇が向上することはないから、他の会社に移ったほうがいい」と退職を促すことです。そこでその社員が素直に言われたことに納得すれば解雇は成立しますが、そう簡単に同意するような社員はいないでしょう。そのため、会社側からは退職金の上乗せや求職のための有休休暇の取得などを代替案として提示することになります。

ただし退職勧奨も何度も従業員の家に押しかけて従業員本人や家族に退職を迫るなどして強引に押し進めると、不当解雇であるとみなされて退職トラブルを引き起こすもとになるため、注意が必要です。

ワンポイントアドバイス
社員が納得しないまま一方的に解雇すると、その社員が退職後に未払いの残業代を請求して来たり、インターネットに会社の悪口を書き込んだりする可能性もあります。なるべく会社に対して悪い印象を持たれないように辞めてもらえるように工夫をすることが大切です。

パートやアルバイト社員でも簡単に解雇できない

正社員を解雇するのは難しくても、パートやアルバイト社員なら簡単に辞めさせることができると考えている人は多いと思いますが、パートやアルバイト社員だからといって簡単に解雇できるわけではありません。

パート・アルバイトも解雇が制限されている

パートやアルバイトなどの非正規社員であっても、労働法によって解雇が制限されており、解雇日まで30日以上の日数を開けない場合は解雇予告手当を払う必要もあります。つまりパートやアルバイトなどの非正規社員も、正社員と同様に簡単には解雇できないと考えてよいでしょう。

しかし、正社員とパートやアルバイトの解雇に関する条件として唯一異なるのは、パートやアルバイトは、半年間もしくは1年間などと期間を定めて契約することがある点です。そのため、契約期間中の解雇はよほどやむを得ない事情がない限りできないことになっています。これは、契約期間中はパートやアルバイトはその身分を保証されており、期間の途中で契約を打ち切られるとたちまち生活に支障をきたすことになるからです。そのため、パート・アルバイトの契約期間中の解雇は正社員の解雇以上に制限されているとも言えるでしょう。

契約満了に伴う解雇ができるかどうかは、契約更新の回数にもよる

パート・アルバイトが有期雇用であれば、会社側の都合で契約期間の満了に伴って契約を終了することは法的に認められています。一般的にも、パートやアルバイトの契約を更新しないで雇用契約を終了させる「雇い止め」が行われています。

ただし、契約期間満了に伴う雇い止めをするにも、一定の条件があります。以下の条件を満たさなければ、雇い止めをすることは難しいでしょう。

  • 業務が臨時的なものであること
  • パート・アルバイトの地位が臨時的なものであること
  • 上長から契約の継続を期待させるような発言がない
  • 契約更新の回数は2回までで、なおかつ雇用期間が1年を超えていない
  • 契約更新の手続きが正式に毎回行われている
  • 他のパート・アルバイトも雇い止めにしている

契約期間を3回以上更新していたり、パート・アルバイトであっても実際の職務上の立場が「店長補佐」など明らかに臨時的なものではない場合には、期間の定めのない雇用であるとみなされることがあるため注意が必要です。

ワンポイントアドバイス
パート・アルバイトだからといって、簡単に解雇できるわけではありません。業務が恒常的なものだったり、何度も契約の更新を繰り返しながら長期で働いている場合は、事実上無期雇用と同じ扱いになることがあるので、解雇を考える際には慎重に行いましょう。

従業員を円満に解雇したい場合は労働法に詳しい弁護士に相談を

社員を解雇することは、その社員の生活を大きく左右することになるため、想像以上に難しいものです。解雇のときにトラブルになれば、不当解雇であると訴えられて、多額の賠償金を払うケースもあります。社員の解雇を検討する場合は、労働法に強い弁護士や社労士などの専門家にアドバイスを求めながら行うことをおすすめします。

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