知らない間に横領?何をしたら逮捕されてしまうのか

この記事で分かること
  1. 3つの横領罪の種類とその内容について分かる
  2. 横領罪と共通点が多い背任罪は横領罪の上に成り立つ
  3. 横領罪で逮捕された場合、早急に弁護士に依頼することが大切

横領罪は会社のお金を使いこむようなことをイメージしますが、落とし物をそのまま自分のものにしてしまうようなケースもそれにあたります。逮捕されれば、拘留されて取り調べを受けることになるので、早急の弁護士の依頼が必要になります。

横領罪とはどんな犯罪なのか

横領罪とは、簡単に言えば「他人から預かっていた物を、勝手に自分の物にしてしまうこと」です。テレビや新聞で「社員が会社のお金を○千万円横領して逮捕された」といったニュースを目にすることが多いと思いますが、被害額が○億円や○千万円の大きな単位ではなくても横領罪は成立します。

横領罪には3種類ある

「横領罪」とひとくちに言っても、①(単純)横領罪、②業務上横領罪、③遺失物等横領罪の3種類があります。横領罪で逮捕されると実刑判決を受け、懲役に服さなければならない事態となります。

横領罪はそれぞれ、以下のような罪になります。

罪名 刑罰
(単純)横領罪 5年以下の懲役
業務上横領罪 10年以下の懲役
遺失物等横領罪 1年以下の懲役または10万円以下の罰金もしくは科料

起訴されるか否かが運命の分かれ道

遺失物等横領罪は罰金刑で済む傾向が多いものの、(単純)横領罪や業務上横領罪で逮捕されて起訴されるとなると、執行猶予がつかなければ罰金刑ではなく、いきなり懲役刑となります。懲役刑となれば前科がつく上にその後の生活が一変してしまうこととなるため、可能であれば逮捕・起訴前に示談に持っていくことがベストです。

ワンポイントアドバイス
横領罪は単純横領罪、業務上横領罪、遺失物等横領罪の3種類があり、逮捕され実刑判決を受けると懲役刑が科せられることもあります。業務上横領罪は、単純横領罪よりも「業務上」という信頼関係が重視される立場を侵害する行為とみなされ、最高懲役が10年と更に重い刑が科されます。

(単純)横領罪・業務上横領罪・遺失物等横領罪の違いとは

では、(単純)横領罪・業務上横領罪・遺失物等横領罪の違いについて、具体的に解説します。この3つはそれぞれどのような罪になるのでしょうか。

(単純)横領罪とは

(単純)横領罪は、他人の物を盗って自分のものにしてしまう点で、「窃盗罪」とよく似ています。そこで、「窃盗罪」との違いについても併せて見ていきましょう。

「(単純)横領罪」とは、自分が占有している、もしくは預かっている他人の物を勝手に自分のものであるかのように処分してしまうことです。たとえば、借りたレンタカーを指定された期日までに返却せず音信不通になったり、ずっと返さないで使用していたりする、などの状態のことを指します。

「窃盗罪」との違いとは

窃盗罪も他人の物を勝手に自分のものにしてしまうことで成立します。「横領」は、「その物について権限がないのに所有者でなければできないような処分をすること」であるのに対し、「窃盗」は「所有者を排除して他人の物を自分の物として利用したり処分したりすること」を指す点で違いがあります。
つまり、財物が自分の占有下にあれば横領、他人にあれば窃盗になるのです。会社の経理課の人が預かっている会社のお金を使いこめば、横領になりますが、経理課以外の人間が企業のお金を盗めば窃盗になります。

業務上横領罪とは

新聞やテレビなどのニュースなどで横領罪が話題になる場合、その多くが業務上横領のことです。たとえば、営業部の社員が出張の旅費交通費を水増しして請求し、そのお金を着服すると業務上横領にあたります。

業務上横領の要件

「業務上横領」とは、業務上自分が占有する他人の物を、他人からの信頼を裏切って横領することを指します。業務上横領の場合は、信頼関係がより重視される「業務」の中で相手の信頼を損なって行われる行為のため、(単純)横領罪よりも罪が重くなるのが一般的です。

「業務」とは

業務とは、一般に「社会生活上の地位に基づき反復・継続して行われる事務」のことを指します。ここでいう「業務」とは、役所や会社などの仕事に限りません。たとえば、町内会やPTA、クラブ活動など報酬・利益を目的としないような仕事も広い意味で「業務」であると解釈されます。

遺失物等横領とは

「遺失物等横領罪」とは、別名「占有離脱物横領罪」とも呼ばれる横領罪のひとつです。遺失物や漂流物など、だれかの占有を離れた他人の物を横領することを指します。たとえば、落とし主のわからない財布を拾って自分のものにすることが遺失物等横領となります。
(単純)横領罪、業務上横領罪とは性質が異なります。

他の横領罪との違い

遺失物等横領は、信任委託関係を前提としない点で(単純)横領、業務上横領と異なります。道端で拾った財布は、それを落とした人から委託されたわけではありません。横領の典型例が「他人から預かった物を自分の物にしてしまう」ことなので、(単純)横領・業務上横領とは性質が異なります。

こんなケースも遺失物等横領罪に

遺失物等横領罪は軽微な犯罪です。過去には軽い気持ちでやってしまったのだと思われる事案がこの罪に問われていますが、具体的にはどのようなことが遺失物等横領罪とされたのでしょうか。

網生けすから逃げた鯉を売却して横領罪に

秋田県の八郎湖で漁業を営んでいた被告人は、同じ湖にある他人の生けすから逃げ出した養殖の錦鯉、緋鯉など約60尾が自分の網にかかっているのを発見し、それらが他人の物であることを知りながら別の養殖業者に売り渡します。被告人は「鯉が生けすから逃げ出したと同時に無主物になったため無罪である」と主張しましたが、「懲役4か月、執行猶予2年」の有罪判決となりました。

拾った切符を換金しようとして横領罪に

被告人は国鉄上野駅(現JR上野駅)で拾った870円相当の乗車券を換金しようと考え着服。翌日、他の駅で「上野駅で買った切符を払い戻してください」と言ってみたものの、駅の職員に不正を見破られます。裁判では、「有効な無記名式乗車券を拾得した者がこれを着服すれば遺失物等横領罪となる」とされ、「懲役4か月執行猶予2年」の判決が言い渡されました。

ワンポイントアドバイス
一般的に業務上横領罪の方が単純横領罪よりも重い罪に問われ、「業務上」とは会社などに限らず、町内会やPTA活動なども含まれると解釈されています。また、ちょっとした軽い気持ちでしてしまった行為が、遺失物等横領罪にあたることもあります。

横領罪と背任罪の違いとは

横領罪とよく似た犯罪に「背任罪」があります。この「背任罪」と「横領罪」は共通点が多く区別がつきにくいため、どちらを適用すべきか問題となるケースがあります。

横領罪と背任罪の共通点

横領罪も背任罪も、ともに信任関係に背いて犯される財産犯である点で共通しています。他人のために事務を処理しつつ他人の財物を占有してそれを不法に処分することは、横領罪にも背任罪にもなりえます。実際に、そのような事例は過去に多く見られました。
 

横領罪と背任罪の違い

横領罪の対象は特定の財物であるのに対し、背任罪の対象は全体的な財産や財産上の利益である点で両者は異なっています。たとえば、会社のお金を着服することは横領罪にあたりますが、会社のお金を無担保で回収できる見込みのない相手に貸す場合は背任罪にあたります。

まず横領罪の成立を考える

実務では、背任罪は横領罪の上に成り立っていると考えられています。そのため、まず横領罪が成立するか否かを検討し、成立しなければ背任罪を検討します。横領罪と背任罪のどちらが成立するか問題となる場合は、横領罪の成否によって背任罪の成否も左右されることとなります。

ワンポイントアドバイス
背任罪の主体は「他人の事務処理をする者」に限られており、不手際で相手の利益を害したとしても、加害目的がなかった場合は犯罪不成立になります。横領罪が特定の物に対する犯罪であるのに対し、背任罪は目的犯であり、財産上の利益や全体財産に対する罪であることなどがあげられます。

横領罪で逮捕されるとどうなるか

法務省の検察統計によると、2015年の時点で横領の罪で逮捕されるケースは10%ほどとなっています。(※1)横領事件を起こしても、その後被害弁償や示談交渉を進めていれば逮捕されずに済むケースも多いのが現状です。

拘留され、取り調べを受ける

それでも横領事件で逮捕されてしまった場合は、まず身柄を拘束されて以下のような手続きを踏むことになります。自力ではどうにもならないことも多いため、家族や身の回りの人が横領で逮捕されてしまったら、できるだけ早い段階で弁護士に相談することが大切です。

身柄を拘束後、72時間以内は面会できない

刑事事件で逮捕された場合、警察は48時間以内に検察に身柄を送致し、検察はさらにそこから24時間以内に裁判所に対して勾留を請求します。この計72時間の間は、たとえ家族といえども面会することはできません。この時期に面会できるのは、当番弁護士だけです。

勾留中に起訴されるかどうかが決定する

勾留期間は10日間ですが、横領罪の場合は勾留が延長されることも多く、半数以上が20日前後勾留されるケースとなっています。この間に取り調べや捜査が行われ、検察が被疑者を起訴するかどうかを逮捕から23日以内に決定します。

起訴・不起訴の決定

被害者に対して被害弁償を行ったり示談交渉が成立していれば不起訴処分となる可能性が高くなります。この場合、被疑者やその家族が相手方と直接交渉するよりも、横領事件に詳しい弁護士に依頼をして交渉を進めてもらうほうが効率的でしょう。

不起訴となれば釈放される

被疑者が罪を犯していない「嫌疑なし」、あるいは罪を犯しているかもしれないが証拠が不十分である「嫌疑不十分」、また罪を犯したが今回は起訴しない「起訴猶予」のいずれかになれば、不起訴処分となり身柄が釈放されます。

起訴されると裁判を待つことに

一方、起訴が決定すると裁判になるのを待つことになります。もし、起訴になれば実刑判決になる可能性も十分にあるため、可能な限り執行猶予付きの判決もしくは無罪判決を勝ち取ることが非常に重要になってきます。

ワンポイントアドバイス
実際に横領罪で逮捕されるケースは少ないです。しかし逮捕され身柄を拘束されると、ほとんどの場合で送検されることになります。拘留され取り調べを受ける場合、家族とも72時間以内は面会できないなど厳しい制約があります。その後、起訴され裁判になれば、横領罪の場合実刑判決になることが多いです。

横領事件で逮捕・起訴されることになれば、前科がついたり社会的信用を失ったりと、その後の生活に大きな影響を及ぼします。そのため、可能な限り逮捕・起訴される前に信頼できる弁護士に相談して、被害弁償や示談交渉に協力してもらうことが非常に重要となるでしょう。

刑事事件はスピードが重要!
刑事事件に巻き込まれたら弁護士へすぐに相談を
逮捕後72時間、自由に面会できるのは弁護士だけ。
23日間以内の迅速な対応が必要
不起訴の可能性を上げることが大事
刑事事件で起訴された場合、日本の有罪率は99.9%
起訴された場合、弁護士なしだと有罪はほぼ確実
上記に当てはまるなら弁護士に相談