窃盗・万引きで逮捕されるのはどんなケース?~知らないだけで犯罪かも⑧

この記事で分かること
  1. 窃盗の要件は、不法領得の意思を持って、他人の財物を窃取すること。
  2. 窃盗罪は、刑法犯の半数以上を占めている身近な犯罪だが、必ずしも軽い扱いとは限らない。
  3. 窃盗の一種と考えられる万引きは、発覚後に代金を支払っても犯罪が成立する。

万引きという言葉は刑法には存在しません。万引きは窃盗のことです。国語辞典では「買い物をしているようなふりをして、店の品をそっと盗むこと」(岩波国語辞典第3版)と説明されています。

窃盗・万引きとはどういうものか

万引きとは、店などの商品を料金の支払いなしにこっそりと店外に持ち去る行為のことです。盗む様子を目撃したこと、お金を支払わずレジを通過したのを見たこと、盗んだ商品を所持していることを確認したことの要件がそろえば、警察は逮捕できます。

万引き罪というものはなく、窃盗罪になります。
窃盗や万引きと関りのある窃盗罪の基本から、確かめていきましょう。

窃盗の構成要件と法定刑

窃盗罪の要件は①他人の②財物を③窃取したことと④不法領得の意思の存在です。

法定刑は10年以下の懲役又は50万円以下の罰金です。窃盗罪の罰金刑は2006年に追加され、それ以前は懲役刑しかありませんでした。それまでは、軽微な事案では起訴されないことも多かったようですが、罰金刑の追加により、そうしたことは少なくなったと言われています。

2015年の検挙人員のうち、窃盗罪での検挙は51.7%を占めています。第2位の暴行罪は10.6%に過ぎないことから考えても、窃盗(万引き)が身近な犯罪であるのは明らかです(平成28年版犯罪白書より)。

窃盗罪の要件の詳細

窃盗罪の構成要件について、もう少し細かく見てみましょう。

電気やガスは財物か

窃盗罪の対象となる財物は管理が可能なもので、必ずしも有体物でなくてもよいというのが一般的な考え方をしています。電気が財物であることは条文に明記されており、ガスも判例では財物と扱われています。

窃取とは「占有の移転」

窃取は他人の持ち物をその人の意思に反して、自分のものにしてしまう「占有の移転」です。その際に、占有を移転する際に暴行・脅迫を用いると恐喝罪もしくは強盗罪、相手を欺罔(騙す行為)した場合は詐欺罪になりますが、それ以外では占有を移転する手段、方法は問わず、窃盗罪が成立します。たとえば、客を装って衣類を試着したままトイレに行くと言って逃げた場合は窃盗罪となります。

故意プラス不法領得の意思が必要

過失犯を除き、犯罪の成立には故意が必要です。窃盗の故意は「他人の財物を領得することを認識すること」です。これに加えて窃盗の場合は、不法領得の意思が必要とされています。不法領得とは、その財物を持っているものの権利者を追い払って、さも自分が権利者のようにふるまうこととされています。

ワンポイントアドバイス
刑法犯の半数以上が窃盗犯であり、身近な犯罪と言えます。以前は軽い事案では起訴されないこともありましたが、2006年に罰金刑が追加されてからは不起訴で済むことは少なくなったので注意が必要です。また、電気やガスについても窃盗罪が成立します。

たかが窃盗や万引きと思っても逮捕される

万引きは言うまでもなく犯罪です。窃盗罪に罰金刑が加えられたことにより、厳罰化が進んだと言えます。ここでは窃盗の中でも「万引き」に関する問題を触れていきます。

万引きの未遂と既遂の分岐点

テレビのドキュメンタリーでもおなじみですが、万引きはスーパーマーケットで行われることが多いようです。そこでの万引きの未遂、既遂について説明します。

窃盗の既遂はレジ線が基本

既述したように、窃盗は他人の占有する財物を、自己の占有に移した時に既遂に達します。スーパーマーケットでの窃盗の既遂については、レジのあるラインを超えて持ち出したら既遂(犯罪成立)であるとの判例があります。「買い物かごに商品を入れた犯人がレジを通過することなくその外側に出た時は、代金を支払ってレジの外側に出た一般の買物客と外観上区別がつかなくなり、犯人が最終的に商品を取得する蓋然性が飛躍的に増大すると考えられるから」と、その理由を説明しています。

自らの支配内に移せば既遂

商品陳列のスペースであっても、ポケットやカバンの中に商品を入れた場合は、事実上、自己の支配内に移したと言えます。窃盗罪というのは財物を自己の占有に移した時に既遂に達するため、レジ線を超えていなくとも、この場合は既遂に達したと言えるでしょう。

万引きして「お金を払います」は罪に問われない?

テレビなどで万引き犯が捕まった後に店の人に「お金を払えばいいでしょ!」と開き直るシーンを目にしたことがある人もいるでしょう。しかし、窃盗が既遂に達しているわけですから、代金相当額を支払っても成立した犯罪が不成立になるわけではありません。代金相当額を支払えば民事上の損害賠償責任を果たすことになるかもしれませんが、刑事上の責任は残るのです。

万引きの危険性

たかが万引きという軽い気持ちで犯行に及んでも、重大な刑事責任を負う可能性があります。

窃盗罪の法定刑は、10年以下の懲役もしくは50万円以下の罰金です。論理的には最長で10年間、刑務所に入る可能性があります。

常習窃盗は懲役3年以上

常習的に窃盗を繰り返す場合、特別法である「盗犯等ノ防止及処分ニ関スル法律」で罰せられます。常習として凶器を携帯して窃盗を犯す場合等は、懲役3年以上の有期刑に処せられます。犯行時に過去10年で3回以上6月以上の懲役(執行猶予含む)を受けた常習累犯窃盗も同様です。

強盗致傷になる場合も

万引き後、追いかけてきた店員や警備員に対して抵抗して相手を負傷させた場合には、(事後)強盗致傷罪が成立することがあります。法定刑は無期又は6年以上の懲役です。傷の程度が軽い場合には窃盗と傷害の併合罪で処理する場合が多いとは言われますが、重大な犯罪となり得ます。

ワンポイントアドバイス
軽い犯罪と考えがちな万引きですが、捕まった後にお金を払っても窃盗罪は成立していますし、凶器を携帯したり、追いかけてきた相手を負傷させたりすれば重大な犯罪となる場合があるので、「たかが万引きくらい」と考えるのは禁物です。

窃盗や万引きで逮捕にまつわる話

窃盗にまつわる話として、親族相盗や盗品に関する問題について触れておきます。

親族内の窃盗の処理

窃盗罪等には、親族間の犯罪に関する特例が適用されます。

親族相盗とは

窃盗罪についての親族間の犯罪に関する特例は親族相盗と呼ばれます。配偶者、直系血族又は同居の親族との間で未遂を含む窃盗罪を犯した場合には刑が免除されます。それ以外の親族間で窃盗が行なわれた場合、告訴がなければ公訴提起ができません。このような規定があるのは「法は家庭に入らず」の考えによるものです。「家の中の窃盗は、家の中で解決しなさい」ということです。

内縁関係に親族相盗の適用はなし

内縁関係にある人との間で親族相盗は適用されません。法はあくまでも配偶者であることを要求しています。親族間の犯罪に関する特例は「内縁の配偶者に適用又は類推適用されることはない」という判例があります。

占有者のほかの親族関係が要求される場合も

親族相盗は、犯人と財物の占有者との間にだけ親族関係があれば成立するとは限りません。所有者と占有者が別の時は、双方に親族関係が要求される判例があります。この決定の原審はその理由について「窃盗罪においては、財物に対する占有のみならず、その背後にある所有権等の本権も保護の対象とされているというべきであるから」と説明しています。

盗品に関する規定

最後に、窃盗罪で占有が移転した財物に関する決まりを見ておきましょう。

盗品の破壊等、原則は不可罰的事後行為

ある財物を窃盗犯が盗み出して窃盗罪が成立した場合、犯罪はそこで終了します。例えば、XがY宅で高級腕時計を盗み出した場合には窃盗罪が成立しますが、その後、XがYの顔を思い出して不愉快になり、盗んだ高級腕時計を壊したとしても、器物損壊罪は成立しません。一般的にそのような行為は不可罰的事後行為と呼ばれます。

詐取したローンカードで現金を引き出せば併合罪

窃盗によって占有を移転した財物への行為が、すべて不可罰的事後行為になるとは限りません。たとえば詐取したローンカードを使って現金を引き出した場合、詐欺罪とは別に窃盗罪が成立し併合罪となります。

判例はその理由について「同社係員を欺いて同カードを交付させる行為と、同カードを利用して現金自動入出機から現金を引き出す行為は、社会通念上別個の行為類型に属するもの」としています。このように、「社会通念」で別扱いされるような場合には、複数の犯罪が成立するので注意が必要です。

ワンポイントアドバイス
親族間での窃盗罪は刑が免除されたり、被害者からの告訴が必要になったりしますが、内縁関係の場合には適用されません。また、財物の所有者と占有者が別であるときは、それぞれに親族関係が必要となります。家族間だから必ずしも無罪になるわけではないことに注意しましょう

窃盗や万引きで逮捕されたら、弁護士に相談!

窃盗は刑法犯の半数以上を占める身近な犯罪ですが、罰金刑が制定されて以来、軽微な事案であっても厳罰化が進みました。万引きは捕まってから代金を支払っても犯罪が消えるわけではありませんし、窃盗罪だけで重大な犯罪となることもあります。軽い気持ちで考えないことが大切です。

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