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民事調停手続きをしたい!その流れと手続きを教えて

この記事で分かること

  • 民事調停手続きは裁判所で話し合いによって解決を図る制度です。
  • 民事調停手続きの流れは「申立て→調停期日の決定→調停」となります。話し合いを中心に必要に応じて証拠調べ等も行われます。
  • 話がまとまらない場合、裁判所が職権で解決案を提示する“17条決定”がなされることがあります。
  • 民事調停の申立てには時効の中断効果があります。

民事調停手続きは裁判所で話し合いによって解決を図る制度です。手続きの流れは「申立て→調停期日の決定→調停」となり、話し合いを中心に証拠調べ等も行われます。不調に終わった場合、訴訟に移行することができます。また民事調停の申立てには時効の中断効果があります。しかし民事調停には平日に行われる点や相手が出頭しなければ手続きできない点等、欠点もあります。

民事調停手続きとは

通常貸金は、債務者の支払い能力及び期日通りの返済を見込んで実行されます。企業間の取引でも同様で融資先企業が債務を履行してくれることを見越して融資が行われます。

しかし、取引開始時には債務履行能力があったものの経営状態の悪化等により弁済できなくなるケースがあります。返済を受けられない場合、債権者は裁判も辞さない姿勢で債権回収に臨むことも必要ですが、相手方が重要な取引先等の場合、なるべくなら穏便に済ませたい場合も少なくないでしょう。そんなとき、法的手段も加味しながら話し合いによる解決を図る制度が民事調停手続きです。

民事調停は裁判外紛争解決制度(ADR)の一つ

民事調停手続きとは、端的に言うと裁判所で行う話し合いです。裁判所で執り行われるものの、結論を強制されることなく、話がまとまらなければ不調に終わります。

裁判を起こすには「訴訟要件」を満たしている必要がありますが、私達が社会生活を営む中ではそれを満たさないトラブルも当然発生します。そこで定められたのが裁判外で当事者同士が紛争を解決できる仕組み“裁判外調停制度(ADR)”で、民事調停手続きもその一つです。

譲歩”や“妥協”によって解決に導くスタンスをとる

民事調停手続きの目的は「民事に関する紛争につき、当事者の互譲により、条理にかない実情に即した解決を図ること」です(民事訴訟法第1条)。つまり裁判のように白黒つけるのではなく、“譲歩”や“妥協”すなわち双方の歩み寄りによって解決に導くスタンスを特徴とする制度なのです。

民事調停手続きのメリットは

民事調停手続きでは金銭の貸借や物の売買をめぐる紛争、交通事故に借地借家、公害や日照に関する紛争等、民事のトラブル全般を扱います。では民事調停手続きにはどういったメリットがあるのでしょうか。

スピーディかつ低コストでの解決が見込める

民事調停手続きは裁判所で行われるものの、費用は安く済みます。また調停は解決までにかかる時間も短く、8割のケースでは3か月以内に決着がつくメリットがあります。

手続きも簡単で話し合いが進みやすい

民事調停手続きは比較的簡単で、法的知識に乏しい素人でも十分に独力で行うことができます。加えて、話し合いは調停委員が間に入って進行するので、感情的にならずスムーズに進むのもメリットと言えるでしょう。民間の第三者が介入することで議論が紛糾しにくくなるのです。

秘密厳守で進められる

また調停は裁判のように傍聴されることはなく、非公開の場で執り行われるので、内容が外部に漏れる心配もありません。

ワンポイントアドバイス
民事調停手続きは裁判所で話し合いによって解決を図る制度です。調停委員が入ることで、話し合いがスムーズに進む可能性があります。なるべく穏便に債権回収をしたいときにおすすめの方法です。

民事調停手続きの流れ

民事調停手続きは話し合いが基本になるので、実情に即した円満な解決を可能とします。ではその手続きの流れはどうなっているのでしょうか。ここでは民事調停手続きの流れについて法的観点から具体的に紹介していきます。

民事調停申立て

民事調停の申立ては書面、もしくは口頭で行うことができます。申立ては原則として相手方の住所を管轄する簡易裁判所となります。

調停申立書を裁判所の窓口に提出

調停申立書に必要事項を記入し、裁判所の窓口に提出します。調停申立書は裁判所にあるので、交付してもらいましょう。申立書に記載する事項は次の通りです。

  • 当事者の住所・氏名
  • 申立ての趣旨
  • 申立ての原因
  • 紛争の要因またはその実情

収入印紙を納付し、証拠書類も提出する

この際、請求の価額に応じた額の収入印紙を申立書に貼り納付します。なお申立書は正本一通と相手方の数に応じて副本を添える必要があります。調停申し立ての控えは取っておくようにしましょう。また契約書等、証拠書類があれば提出することで調停員も事件の内容を把握しやすくなります。

調停期日の決定、当事者双方の呼び出し

申立てが受理されると調停委員が組織され、裁判所によって調停期日が決定されます。そして相手方に調停申立書の副本と共に裁判所へ出頭するよう呼び出しがかかります。

正当な理由なくして欠席した場合科料に処される

呼び出しを受けた事件の関係者が正当な理由なく出席しない場合、裁判所から5万円の科料に処されることになっています。

但し欠席しても原告の主張を認めたことにはならない

ただ、欠席しても申立ての内容を認めたことにはなりません。ここは通常の民事訴訟とは大きく異なる点でしょう。通常の民事訴訟では被告が欠席して期日に何も主張しなければ、原告の主張を認めたものとみなされ、原告勝訴となる(欠席裁判) 可能性があります。

調停の開始

続いて第一回期日が行われます。ここまでで約1か月程度かかるのが一般的です。調停では裁判と同様、事実であるかを重視するので、話し合いを中心に証拠調べ等も行われます。

調停委員の仲介の下話し合いが行われる

調停委員から呼び出しを受けた当事者はやむを得ない事情がある場合を除いて自ら出頭しなければなりません。これは調停委員が直接当事者から言い分を聞き直接説得することによって譲歩を引き出し、調停を成立させるためです。

調停調書の作成

話し合いの結果、双方合意の和解案が成立すれば裁判所によって「調停調書」が作成されます。この調停調書は判決と同等の効力を持ち、その内容が実行されない場合、差押え等の強制執行も可能になります。

ワンポイントアドバイス
民事調停手続きの流れは「申し立て→調停期日の決定→調停」となります。話し合いを中心に必要に応じて証拠調べ等も行われます。

民事調停手続き~話がつかない場合

期日では調停委員の仲介の下、話し合いが行われます。民事調停が成立するには双方の歩み寄りが不可欠です。もし、話がまとまらなかった場合はどうなるのでしょうか。

調停に代わる決定「17条決定」

民事調停では様々な民事トラブルを扱うことは前述の通りです。中には複雑な事情が絡み、およそ話し合いでは解決がおぼつかないようなケースもあります。そこで民事調停では裁判所が調停に代わる決定を下す「17条決定」と呼ばれる制度があるのです。

17条決定とは

民事調停は原則的には話し合いによって解決を目指す制度です。しかしながら例外的に裁判所が職権で解決案を提示するケースがあります。これがいわゆる「17条決定」と呼ばれる制度で、調停が成立する見込みがないときに裁判所が双方の公平を考慮しながら、民事調停委員の意見をもとに必要な決定をすることができるものです。名称はこのルールが民事調停法17条に規定されていることにちなんでいます。

17条決定に対する異議申立てもある

この調停に代わる決定がなされてから2週間以内に書面で異論を唱えなければ、当事者はその内容を認めたことになります。しかし告知後2週間内に異議申立をすれば、調停に代わる決定は効力を失います(民事調停法18条)。

通常訴訟に移行することができる

民事調停では強制的に決着をつけることはしないので、合意に至らなければ「調停不成立」として手続きは終了になります。この場合通常訴訟に移行することができます。

不調に終わることは珍しくない

民事調停では双方の歩み寄りを必要としますが、両者が一歩も譲らず平行線をたどり不調に終わるケースは実は非常に多いのです。調停不成立になった場合、訴訟に移行することができます。訴訟の申し立て費用に関しては調停終了の通知から2週間以内に訴えを提起すれば、調停申し立ての際に納付した印紙代を控除した差額で済みます。

いくつかの注意点も

しかし証拠に関しては、新たに提出しなければなりません。また請求額によって管轄裁判所が変わるので注意が必要です。訴額が140万円を超える場合は地方裁判所の管轄になりますが、140万円以下の場合簡易裁判所の管轄となるのです。

ワンポイントアドバイス
話がまとまらない場合、裁判所が職権で解決案を提示する17条決定がなされることがあります。不調に終わった場合、訴訟に移行することができます。

民事調停の申し立てには時効の中断効果がある

債権回収において常に念頭に置いておかなければならないのが、債権には消滅時効が存在することです。例えば飲食代の債権は1年、商品売買では2年の時効があり、時効を迎えた債権は回収することができないのです。時効を中断する方法は幾つかあり、民事調停の申し立てもその一つです。

民事調停をすることで時効を中断できる

消滅時効の存在が債権回収ではスピードが肝心と言われるゆえんの一つで、また厄介な所でもあります。時効を中断する方法としては「仮差押え」や「仮処分」、「承認」等がありますが調停の申し立てもその内の一つ「裁判外の請求」に当たり時効を中断する効果があります。

民事調停には注意点もある

スピーディな解決が可能で費用も安く済み、手続きも簡単で個人でも行える…。そんな民事調停ですが、注意すべき点もあります。

相手方が欠席すると打つ手がない

民事調停手続きは双方の話し合いをベースとした制度です。ですから相手方が期日に出頭してこないと、手続きを進めることができず“お手上げ”状態になってしまいます。もちろん前述の通り正当な理由なくして欠席した場合科料に処される決まりになっていますが、実際には欠席しても支払わずに済むケースが多いのです。また科料に処されるにしても5万円程度です。この程度の額では、相手方の出席意思を喚起することは難しいでしょう。

期日は平日に行われる

加えて、期日は平日に行われるため、仕事で休みが取りにくい場合は不都合です。また一回の調停には少なく見積もっても2時間程度はかかります。それプラス裁判所への往復移動時間が必要になり、かなりの手間と時間を割かなければならないことになります。

ワンポイントアドバイス
民事調停の申し立てには時効の中断効果があります。調停は平日に行われる点や相手が欠席すれば打つ手なしである点に要注意です。

民事調停の手続きで困ったら弁護士に相談!

民事調停は低コストかつスピーディに解決が可能ですが、相手方が出頭してこなければ手続きはできませんし、不調に終わるケースも少なくありません。こうした手続きの特性を理解した上で利用することが大切です。

民事調停で分からないことは、法律のプロの弁護士に相談するのもよい方法です。初回は無料で相談に応じてくれる法律事務所も多いので、問い合わせてみることをおすすめします。

債権回収を弁護士に相談するメリット
  • 状況にあわせた適切な回収方法を実行できる
  • 債務者に<回収する意思>がハッキリ伝わる
  • スピーディーな債権回収が期待できる
  • 当事者交渉に比べ、精神的負担を低減できる
  • 法的見地から冷静な交渉が可能
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上記に当てはまるなら弁護士に相談