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離婚慰謝料の計算方法!離婚理由別相場と高額請求できるケース

この記事で分かること

  • 離婚慰謝料は、【基本慰謝料120万円+請求相手の年収の3%×実質的婚姻年数(1-20年)×有責度(0-1)×調整係数(1.3-0.7)】で金額が把握できる。
  • 不貞行為での慰謝料相場は50-300万円程度。
  • 性格の不一致では、慰謝料が請求できない可能性が高い。
  • 相手に資産がある場合、不倫相手が妊娠した場合、婚姻期間が20年以上の場合は、慰謝料が高額になることも。
  • 慰謝料を請求する場合は、証拠が必須。
  • 慰謝料以外にも、財産分与などで受け取れる金額を調整できる。

離婚慰謝料の額は、実際に利用されている計算式で大まかな金額を把握することができます。また、不貞行為の慰謝料相場は50-300万円程度ですが、性格の不一致のみが離婚理由の場合は、0の可能性もあるでしょう。慰謝料が高額になるケースもありますが、請求をする際はしっかりと証拠を集めないと減額の可能性もあります。財産分与など他の項目で受け取れるお金も含め、全体でいくらになるのかを把握することも大切です。

離婚慰謝料の計算方法

離婚の慰謝料をどのように計算するのかをご存知ない方は多いはずです。慰謝料を請求したいと考えたら、「実際にどれくらい受け取れるのか」を自分で計算してみましょう。早速、離婚慰謝料の計算式をご説明します。

離婚慰謝料を割り出す計算式

配偶者が不倫をしたというケースの場合、一般的には離婚の際に慰謝料請求を考えます。しかし、実際にどれくらいの金額を請求できるのかは悩ましいとことです。法律実務で利用されている計算式としては以下があります。

離婚慰謝料の計算式

離婚慰謝料=基本慰謝料120万円+請求相手の年収の3%×実質的婚姻年数(1-20年)×有責度(0-1)×調整係数(1.3-0.7)

離婚慰謝料は、離婚原因を作ったことに対する慰謝料(離婚原因慰謝料)離婚すること自体の慰謝料(離婚自体慰謝料)の2つに分けることができます。

上記の基本慰謝料が「離婚自体慰謝料」となります。実質的婚姻年数とは、実際の婚姻期間を指します。また、有責度に関しては有責度が極めて高い場合は1、高い程度の場合は0.9-0.2、相手も自分も同程度悪い場合は0の値となります。調整係数は、あなたの就業経験がない場合に1.3となり、配偶者と同じくらいの年収を稼いでいる場合は0.7をかけます。

離婚慰謝料の計算例

例えば、婚姻期間5年で、相手の一方的な不倫が原因で離婚することになったとします。相手の年収は500万円で、あなたは専業主婦です。この場合、以下の計算式となります。

120万円+((500万円×3%)×5年×1×1.3)=217万5000円

婚姻期間ごとの有責度

上記で示した計算式以外でも、婚姻期間ごとの有責度によって、大体の慰謝料の目安を割り出すことも可能です。具体的には以下の通りです。

婚姻期間ごとの有責度による慰謝料金額の目安
有責度(低) 有責度(中) 有責度(高)
1年未満 100万円 200万円 300万円
1-3年未満 200万円 300万円 500万円
3-10年未満 300万円 500万円 700万円
10-20年未満 400万円 600万円 900万円
20年以上 500万円 800万円 1000万円

最初にご紹介した計算式に加えて、婚姻期間ごとの有責度で図る方法は、あくまで目安となるものです。実際に、請求できた金額とは異なります。これらを参考に、当該案件ごとの妥当な金額を割り出していくと考えるべきでしょう。

ワンポイントアドバイス
慰謝料は最初から裁判で話し合うものではなく、最初は当事者間での交渉によって金額に折り合いをつけていくことになります。この場合、当事者が納得して合意した金額が妥当な金額ということになるでしょう。

つまり、当事者が合意すれば、上記で示した計算式を使用しなくても良いということです。そのため、この計算式よりも高額になることもあれば、離婚の条件次第では低い金額になってしまうこともあります。

離婚理由ごとに計算!慰謝料の相場はいくら?

離婚理由は各家庭によってさまざまです。また離婚理由によって、慰謝料額が異なってくることもあります。そこで、ここでは離婚理由あるいは慰謝料を請求する理由ごとの相場をお伝えします。

不貞行為で離婚の慰謝料相場

配偶者が婚姻期間中に不倫行為を行っていた場合、慰謝料を請求できまう。というのも、不倫は不貞行為として民法770条に規定されており、不貞行為があれば相手が応じずとも離婚することが可能です。

また、婚姻生活の維持を困難にするものであるため、精神的苦痛の賠償金として配偶者と不倫相手に慰謝料を請求することができます(民法709条)。不貞行為があった場合は、50万円〜300万円程度が慰謝料相場と言われています。

例えば、東京地裁平成19年6月28日判決では、不倫を理由とする離婚で300万円の慰謝料が認められました。婚姻期間が30年以上であったことや夫が不倫相手と結婚するために離婚を迫った点などで有責度が高いと判断され、300万円の慰謝料が認められました。

これ以外でも、不倫を理由とする慰謝料請求の場合は、年収や婚姻年数から、金額が以下のように変動します。

慰謝料額50-200万円程度

  • 相手の年収:200−800万円
  • 自分の年収:配偶者より少ない
  • 婚姻年数:2-6年未満
  • 有責度:相手が一方的に不倫をして離婚

慰謝料額100-300万円程度

  • 相手の年収:800-1500万円
  • 自分の年収:配偶者より少ない
  • 婚姻年数:10年-20年
  • 有責度:相手が一方的に不倫をして離婚

DV・モラハラでの離婚慰謝料相場

離婚原因で良くあるのが、配偶者による身体的暴力や精神的暴力です。身体的暴力の場合、ドメスティックバイオレンス(DV)と呼ばれ、後遺症が残るなど怪我の程度が酷ければ損害賠償額も大きくなる可能性があります。刑事事件でも立件できます。

また、相手を言葉や大きな物音を立てるなどの行為で精神的苦痛を与えるモラルハラスメントでも、同様に、不法行為に基づく損害賠償として慰謝料請求(民法709条)ができます。

慰謝料相場としては、50-300万円程度であり、東京地裁平成17年9月28日判決では、夫の不貞行為があり、口論の末妻に怪我をさせ、食器を割るなどの行為を行った DV事件の慰謝料請求(婚姻期間5年)にて250万円の慰謝料が認められました。

これ以外でも、DV・モラハラを理由とする慰謝料請求の場合は、年収や婚姻年数から、金額が以下のように変動します。

慰謝料額50-200万円程度

  • 相手の年収:200−800万円
  • 自分の年収:配偶者より少ない
  • 婚姻年数:2-6年未満
  • 有責度:相手の一方的モラハラ

慰謝料額100-300万円程度

  • 相手の年収:800-1500万円
  • 自分の年収:配偶者より少ない
  • 婚姻年数:2年-6年未満
  • 有責度:相手の一方的DV

ギャンブル癖がある、生活費を入れないなどの離婚慰謝料相場

民法770条1項2号では「悪意の遺棄」を規定しています。悪意の遺棄とは、夫婦の同居ぎむや協力・扶助義務に反した場合のことを指します。具体的には、ギャンブル癖があり浪費癖がある、生活費を一切に入れない、理由がないのに別居している、などのケースです。先にご紹介した離婚事由と同じく、50万円〜300万円程度が相場となります。

悪意の遺棄が離婚理由のケースとしては、東京地裁の平成21年 4月27日判決で300万円が認められらた事例があります。30年以上の婚姻生活があり、夫の不貞行為と妻と子を置いて家を出るなどの行為に加え、養育費の支払いも滞ったケースです。

これ以外にも、悪意の遺棄を理由とする慰謝料請求の場合は、年収や婚姻年数から、金額が以下のように変動します。

慰謝料額50-200万円程度

  • 相手の年収:200−800万円
  • 自分の年収:配偶者より少ない
  • 婚姻年数:2-6年未満
  • 有責度:生活費を一切入れない

慰謝料額100-300万円程度

  • 相手の年収:800-1500万円
  • 自分の年収:専業主婦
  • 婚姻年数:10年-20年
  • 有責度:生活費を一切入れない

性格の不一致の離婚慰謝料相場

数ある離婚理由の中でも、トップに入るのが「性格の不一致」という内容です。
内容が抽象的なため、実際に夫婦の中で何があったのかはわかりませんが、一緒に暮らしていてこれ以上婚姻生活を続けることができない事情がある場合を指します。離婚事由としては、第5号の「その他婚姻を継続しがたい重大な事由」に当たるでしょう。

基本的に、性格の不一致のみを理由に相手に慰謝料を請求することは難しいでしょう。相手の言動にモラハラがあった場合などは別として、不貞行為などの他の事情がない限り慰謝料は0円になる可能性も高いと言えます。そのため相場としては0-50万円程度です。

性格の不一致のみを理由に慰謝料を請求する場合、相手側が離婚を希望していて慰謝料を条件に離婚に合意するという場合は、交渉材料として慰謝料を請求できるケースがあります。

この場合も、以下でご紹介するように年収や婚姻年数から、金額が以下のように変動します。

慰謝料額0-30万円程度

  • 相手の年:200−800万円程度
  • 自分の年収:配偶者より少ない
  • 婚姻年数:2-6年未満
  • 有責度:価値観の違いによる離婚

慰謝料額0-50万円程度

  • 相手の年収:800-1500万円程度
  • 自分の年収:配偶者より少ない
  • 婚姻年数:20年以上
  • 有責度:どちらかというと相手が悪いケース
ワンポイントアドバイス
離婚事由ごとの慰謝料幅を見ても、自分のケースでどれくらいになるのかわからないという方が大半でしょう。実際のところ、個別具体的な事情をお聞きしないと判断できないことも多いため、金額に幅ができてしまうのです。

婚姻期間、年収、不貞行為やDVなどの回数・期間、子供の有無、など個別に考慮すべき事由がたくさんあるため、実際の金額を知りたい場合は、弁護士に相談するのが一番です。

高額な離婚慰謝料を請求できるケース

離婚で精神的に傷ついた分、相手にできるだけ多い金額を請求したいという方も多いでしょう。そこで、高額な離婚慰謝料を請求できるケースについてご説明します。

相手に資産がある、著名人の場合

離婚する相手に不貞行為などの慰謝料を求める場合、相手の収入が大きい場合や資産があるという場合、慰謝料請求が高額になるケースがあります。

実際上、不貞行為などの慰謝料請求の根拠がどれだけ有責度が高い場合でも、相手の収入が低ければ、実際に請求できる金額も少なくなってしまいます。高額な慰謝料を請求したところで、相手に支払い能力がなければ請求する意味がないためです。

他方、収入が高い場合は支払い能力も高いということです。専業主婦などの場合、離婚した後に婚姻中と同程度の生活をすることは難しいため、生活を失ったことに対する償いも含め、相手の収入が高ければ慰謝料が高額になることがあります。

また、離婚する相手が著名人である場合も、慰謝料の内容などを公表しないことを条件に高額な慰謝料金額で合意に至るケースがあります。

不倫相手に子どもができた場合

配偶者が不貞行為を行っただけでも辛い思いをしますが、不倫相手に子どもができてしまった場合は、計り知れない精神的苦痛を強いられることになります。

この場合、不倫された配偶者の精神的苦痛の重さを考慮し、慰謝料が高額になるケースがあります。東京地裁平成15年9月8日判決では、夫婦間の子どもが生まれるのと同時期に不倫相手にも子どもが誕生していることが発覚したケースで、450万円の慰謝料が認められました。

一般的に300万円程度に収まると言われている不倫慰謝料の価格よりも大幅に増額されているのがわかります。

婚姻期間が20年以上にあたる場合

結婚している期間が長いほど、良い思い出も悪い思い出もたくさんあることでしょう。夫婦で積み重ねてきた歴史が大きいほど、相手が裏切ったときの精神的苦痛は重いものです。そのため、婚姻期間が長期にわたるケースでは、慰謝料が高額になる傾向があります。

具体的には、20年以上の長期婚姻期間であった場合は、この点が評価され慰謝料が増額される傾向にあるでしょう。仙台地裁平成13年3月22日判決では、婚姻期間33年であることなどが評価され、不貞行為の慰謝料に対し500万円の慰謝料が認められています。

ワンポイントアドバイス
慰謝料が高額になる事情は、ご紹介したように実際にあります。しかし、1つの事情が重く受け取られたとしても、別の事情で減額に働くこともあるのが実情です。

例えば、婚姻期間が20年以上でも、不貞行為が1回のみ、収入も低いという場合は、慰謝料が高額にならないこともあります。総合的に考慮して慰謝料は決まるということを覚えておいてください。

離婚慰謝料計算の際の注意点

最後に、離婚慰謝料を計算する場合に注意すべきポイント3つをお伝えします。

慰謝料請求を根拠づける証拠は必須

離婚の際、慰謝料請求を行うのにはさまざまな理由があるでしょう。先にご紹介したように、不貞行為、悪意の遺棄、DV・モラハラ、性格の不一致など、理由はたくさんあります。しかし、慰謝料を請求するということは、相手に不法行為が成立するということですから、それを根拠づける証拠が必ず必要になります。

例えば、不倫があったと考えている場合ですが、配偶者の直感で気付いたというケースもあるでしょう。しかし、実際上、一切の証拠がなければ慰謝料請求は難しくなります。相手が自白した場合は別として、否定した場合は証拠が必要となり、最終的に裁判になる段階を考えても、証拠を用意しておかないと請求を認めてもらえない可能性が高いからです。例えば、以下のようなものは証拠になります。

  • 不貞行為:性交渉の写真や動画、録音
  • DVやモラハラ:病院に行った際の診断書、領収書
  • 悪意の遺棄:別居の事実、支払い明細(あなた名義の)

以上から、慰謝料を請求する際は証拠を用意するようにしましょう。自分で難しい場合は、探偵を雇うのも良いでしょう。

離婚しない場合、慰謝料は減額される

最初にご説明したように、離婚は離婚自体慰謝料と離婚原因慰謝料に分けることができます。慰謝料を請求するという場合、両者をさしますが、仮に離婚しない場合は離婚自体慰謝料は含まれません。

つまり、離婚の有無によって慰謝料は変わるのです。不貞行為などの慰謝料を請求できる原因があったにもかかわらず、夫婦でもう一度やり直す決意をしたということは、婚姻生活が完全には破壊されなかったということです。そうすると、不倫された配偶者の精神的苦痛は離婚した場合に比べると少ないと考えられてしまうのです。

実際は、「離婚しない決断をした方が辛い」こともあるかもしれません。しかし、裁判実務上は、上記のように考えられているのです。

慰謝料以外にも財産分与などがある

慰謝料で高額な請求は期待できないという場合、離婚後の生活を考えると「離婚しない方がいいかもしれない」と考える方もいます。しかし、慰謝料以外でも離婚後に受け取れるお金はあるので、全体像で考えてから決断しても遅くはないでしょう。

例えば、離婚時には財産分与を行います。離婚の際に、夫婦の財産を原則として1/2に分ける手続きです。この財産分与には、精算的、扶養的、慰謝料的の3つの種類があると考えられています。

わかりやすく説明すると、夫婦で貯めた預金を分けるのが精算的財産分与であり、離婚後に配偶者が生活に困窮しないようにするための財産分与が扶養的財産分与です。そして、精神的苦痛を和らげるためにあるのが慰謝料的財産分与となります。財産分与を分けて考え、請求することで受け取れるお金を増やすことも考えることができるのです。

また、お子さんがいる場合は、養育費と慰謝料を一緒にして請求することもありますが、これらは別の性質を持つため、分けて考えて請求する方がより多く受け取ることができるでしょう。

ワンポイントアドバイス
慰謝料は必ず請求できるというものではありません。性格の不一致など有責性の低い原因の場合は、認められないのが通常です。そのため、不貞行為など確実な有責性がある場合以外は、一度弁護士にご相談されることをおすすめします。

逆に性格の不一致などが問題の場合でも、話していくうちに別の理由で請求できる可能性が見つかることもあります。

適切な慰謝料の計算は離婚に強い弁護士にご相談を

離婚は精神的苦痛を伴うだけではなく、経済的にも苦労を伴うケースがあります。そのため、離婚をお考えの方で慰謝料を請求できる可能性がある方は、きっちりと請求することをおすすめします。慰謝料を受け取ることで、離婚後の生活が楽になる可能性は大きくあるのです。

ご自身のケースを前提に、適切な離婚慰謝料額の計算を行いたい場合は、離婚を専門または多く取り扱う弁護士にご相談ください。有利な交渉で適切な慰謝料額を勝ち取りましょう。

離婚の悩みは弁護士に相談を
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