2018/6/20 22view

法定離婚事由とは?~調停で決裂しても裁判で離婚が認められる「離婚理由」~

この記事で分かること
  1. 相手の合意がなくても裁判で認めてもらえる離婚理由を「法廷離婚事由」という。
  2. 法廷離婚事由があっても、有責配偶者からの離婚は原則として認められない。
  3. 「婚姻を継続しがたい事由」で離婚する場合は、「夫婦関係の破綻」の証明が必須。

相手の合意なく離婚するには、法廷離婚事由があること、そして、それを裁判で認めてもらうことが必要です。法廷離婚事由の種類と、離婚裁判における立証方法を整理しておきましょう。

法廷離婚事由とは?離婚の成立に必要な最低条件

離婚を成立させるためには、最低限必要な条件として、次の2つのうちいずれかをクリアしなければなりません。

条件1:夫婦の双方が離婚に合意すること

離婚は一方の意思だけでできるものではなく、必ずお互いの合意が必要です。一方が離婚を決意すると、まずは当事者間で話し合いを行い(=協議離婚)、離婚に関して他方の同意を得たうえで、親権や慰謝料などのさまざまな離婚条件を決めていきます。

夫婦間の話し合いで解決しなかった場合は家庭裁判所へ調停を申し立て、第三者を介した話し合いである離婚調停を行います。ここでは、条件面(親権、慰謝料、財産分与、養育費など)についてのみの話し合いも可能ですが、夫婦間の協議で離婚の合意が得られなかった場合は、調停においてもまず、お互いの離婚の合意を得ることからはじめます。

ちなみに、相手の合意が得られていないにもかかわらず、相手の記入欄をあたかも本人が書いたかのように偽造して離婚届を提出する行為は違法です。偽造した離婚届を役所へ提出した場合、「有印私文書偽造罪」や「偽造有印私文書行使罪」という刑事上の罪に問われることがあります。

条件2:「法廷離婚事由」があること

離婚をするには原則として相手の合意を得ることが必要ですが、相手の合意がなくても離婚できるケースがあります。それは、離婚の理由が法律で認められた離婚事由(=法廷離婚事由)に該当するケースです。ただし、相手の合意なしに離婚するためには、法廷離婚事由に該当するという事実を裁判で認めてもらう必要があります。

有責配偶者からの離婚は原則として認められていない

離婚の原因を作った側のことを、法律上は「有責配偶者」といいます。相手の合意が得られなくても離婚ができるのは、原則として有責配偶者ではないほうから申し出があった場合のみです。有責配偶者からの離婚が認められるケースもありますが、その場合も有責配偶者にとっては非常にシビアな判断が下されることになります。

ワンポイントアドバイス
離婚の理由が法廷離婚事由に該当する場合でも、いきなり裁判をはじめることはできず、先に調停を行わなければなりません。これを「調停前置主義」といいます。

法廷離婚事由は全部で5つ!1~4号を解説

法廷離婚事由は、民法770条1項に定められた1~5号の5つです。まずは、1~4号の法廷離婚事由について解説します。

1号:不貞行為

不貞行為とは、配偶者以外の人と性的な関係を持つことをいいます。夫婦にはお互いに貞操を守る義務があり、これに反する場合は、相手の合意に関係なく離婚が可能です。

不貞行為とみなされる行為

不貞行為であるかどうかのわかりやすい判断基準は、「肉体関係があったかどうか」です。そのため、次のような事実があれば、明らかに不貞行為であるとみなされます。

  • 特定の異性と肉体的な関係を継続している(愛人がいるなど)
  • セックスフレンドとして付き合っている異性がいる(愛情の有無は関係ありません)
  • ある異性と一度だけ関係を持った(自由意思にもとづいて行為に及んだ場合)

不貞行為とまでは言い切れない行為

一方で、次のようなケースでは、法廷離婚事由に該当する不貞行為とまでは言い切れない可能性があります。

  • 判断力が著しく欠けた状態(泥酔していたなど)で行為に及んだ(自由意思にもとづいた行為とまではいえないため)
  • 性的関係を持っている相手が同性(法律で不貞行為と定めているのはあくまでも異性との肉体関係です)
  • 異性とキスをしたり抱き合ったりした(これらが日常的な行為であっても、肉体関係に及んでいなければ不貞行為とまではいえません)

また、「自分の意思に反して性的な暴行を受けた場合」「恋愛感情持っているが肉体関係はない場合」などは、不貞行為には該当しません。

不貞行為の証拠になるもの

  • 浮気現場を押さえた画像、動画、音源
  • 相手が浮気を認めたときの録音データ
  • 浮気相手とのやり取り(メール、SNS、通話記録など)
  • ラブホテルに宿泊したことがわかるカードの明細
  • 浮気相手とラブホテルに入っていくところを押さえた画像
  • ラブホテルに入ったことを示すGPSの記録

2号:悪意の遺棄

夫婦には、お互いに守るべき3つの義務があります。

  • 同居義務:一緒に住むこと(お互いが納得したうえで暮らしを別々にしている場合はOK)
  • 協力義務:お互いに力を合わせて暮らしを維持していくこと(家事・育児の分担など)
  • 扶助義務:生活費の多いほうが少ないほうを養い、お互いに同水準の生活が送れるようにすること

悪意の遺棄とは、故意にこれらの義務を怠ることを指しています。ここでいう“悪意”とは、「知っていてわざと」という意味。「夫婦の義務を怠ることにより、結婚生活が破綻してもかまわない」という姿勢があれば、悪意の遺棄とみなされます。

悪意の遺棄の証拠になるもの

同居義務違反
  • 住居を別にしていることがわかる住民票や賃貸契約書(単身赴任、病気療養などのための一時的な里帰り、DVやモラハラから逃れるための別居などを除く)
  • 別居の経緯がわかるもの(日記やメモ)
  • 同居を拒否されたこと、一方的に家を出て行ったことがわかるもの(録音データやメール・SNSのやり取りなど)
協力義務違反
  • 家事や育児放棄の状況を記録した画像や動画
  • 日々の生活状況を記録したもの(日記やメモ)
扶助義務違反
  • 収入の多いほうが、一定の収入があるにもかかわらず最低限の生活費を渡していないことがわかるもの(源泉徴収、給与明細、預金通帳など)
  • 生活費を払わず、趣味やギャンブルなどにお金をつぎ込んでいることがわかるもの(カードの明細や浪費を示す領収書、ギャンブルに興じている最中の画像など)

3号:3年以上の生死不明

相手と3年以上にわたって音信不通であり、その生死もわからないときは、相手の合意なく離婚することができます。ただし、裁判で離婚を認めてもらうためには、以下のようなものが必要です。

  • 相手と最後にやり取りをしたことがわかるもの(メールや通話履歴、消印付きの手紙など)
  • 相手を探す努力をしたことがわかるもの(捜索願の受理証明書など)
  • 第三者による陳述書(親戚や友人・知人、職場関係の人などに、相手から連絡がない、見かけてもいないと証明してもらう文書)

ポイントは、「生死が不明である」という点です。たとえ3年以上相手と連絡が取れなくても、第三者が相手から連絡を受けていたり、第三者から相手をどこかで見かけたという情報が得られたりした場合は、離婚理由としては認められません。

生死不明が3年以上7年未満のとき

離婚裁判を起こし、3年以上の生死不明が裁判で認められれば離婚が成立します。離婚成立後に相手の生存が判明しても、後から離婚がくつがえることはありません。

生死不明が7年以上のとき

生死不明が7年以上にわたると利用できるようになるのが「失踪宣告」という制度です。家庭裁判所に失踪宣告の申し立てを行い、これが認められると、相手は死亡したとみなされ、婚姻関係も解消に至ります。

失踪宣告のメリットは、相手の財産を遺産として相続することが可能になる点です。しかし、失踪宣告後に相手の生存が判明すると、婚姻関係は復活し、その時点で再婚していた場合は再婚が取り消されることもあります。そのため、離婚することが目的であれば、相手の生死不明が7年以上でも離婚裁判を起こす方法を取るのが一般的です。

4号:回復の見込みのない重い精神病を患っていること

配偶者のことが理解できないほどなど、相手が重い精神病を患っていて、医師の判断などから回復の見込みがないことが明らかな場合は、相手の合意を得ずに離婚することができます。ただし、離婚が認められるには、治療期間がすでに長期にわたっていることや、これまで配偶者として献身的に相手を支えてきたといった事実が重要です。

ただし、離婚を機に、精神病を患う相手の生活が危ぶまれるようなことがあってはなりません。そのため、相手の両親など代わりに面倒を見てくれる人を探す、施設に入所する予定があるなど、相手が離婚後も安定した生活を送れるように配慮する必要があります。

離婚理由として認められる可能性のある精神病の例
  • 認知症 ・統合失調症 ・双極性障害
  • アルツハイマー病 ・偏執病
  • 重度の身体障害にともなう精神病(脳障害など)
ワンポイントアドバイス
どの法廷離婚事由で離婚するにしても、裁判においてはそれらを立証するための証拠の提示が必要になります。

法廷離婚事由の5つ目「その他の婚姻を継続しがたい事由」とは?

離婚の理由が法廷離婚事由の1~4号までに該当しないときは、5つ目の法廷離婚事由である「その他の婚姻を継続しがたい事由」を適用することになります。1~4号には当てはまらなくても、これ以上婚姻生活を続けてはいけないといえるほど婚姻生活が破綻している場合は、裁判において離婚が認められるケースがあります。

“婚姻を継続しがたい”といえる離婚理由とは

離婚理由が1~4号に当てはまる場合は、客観的に見てもこれ以上夫婦としての生活を続けていけないことは明らかです。しかし、5号の法廷離婚事由である「婚姻を継続しがたい事由」は、1~4号に比べて抽象的です。そのため離婚裁判においては、各々の離婚理由が5号に該当するかどうかが争点となるケースがしばしばあります。

その中で、特に婚姻を継続しがたいといえる離婚理由としては以下のようなものが挙げられます。

長期間に及ぶ別居 別居期間だけでなく、別居に至った経緯など、さまざまな事情が考慮されます。
DVやモラハラ 相手が事実を認めないケースも多いため、現場を押さえた画像、映像、音源などの証拠、DVの場合は傷やけがの写真、モラハラの場合はうつ病の診断書といった、証拠集めがカギとなります。

“婚姻を継続しがたい”とまではいえない離婚理由とは

一方で、「婚姻を継続しがたい事由」といえるかどうかの判断が難しいといえるのが、次のような客観的に証明することが難しい離婚理由です。

  • 性格の不一致、価値観の違い
  • 性的不一致、セックスレス
  • 依存症(ギャンブル、アルコール、薬物など)や浪費癖
  • 相手親族との不仲
  • 家庭をかえりみないほど過度な宗教活動
  • 4号に該当しない重い病気を患っていること

これらの理由により「婚姻を継続しがたい」といえるかどうかは、その程度や結婚生活の状況などによって慎重に判断されます。

ワンポイントアドバイス
「夫婦関係の破綻」をもっとも端的に証明できるのが別居です。そのため、婚姻を継続しがたい事由で離婚したい場合は、長期戦にはなりますが、まずは別居という手段をとるのも選択肢のひとつです。

確実に離婚したいなら弁護士へ相談するのが最短ルート

法廷離婚事由があれば相手の合意がなくても離婚できるとはいえ、裁判までもつれ込むと、離婚成立まで年単位で時間がかかることも珍しくありません。そうなると、経済的にも精神的にも大きな負担になることは避けられないでしょう。そのため可能な限り、協議離婚・調停離婚での解決を目指すのがベストです。

なお、協議離婚・調停離婚の段階で弁護士に依頼することも可能です。むしろ、できるだけ早い段階で弁護士に依頼したほうが、決着するまでの期間が短くなり、離婚を自分の有利に進められる利点もあります。また、裁判になった段階で弁護士に依頼するよりも、弁護士費用も安く済むでしょう。

相談料無料としている法律事務所も多くあるので、離婚を考えたらまずは、離婚問題に詳しい弁護士へ相談することを検討してみてください。

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