2018/9/20 14view

相続登記申請書の書き方~自分で行う不動産の所有権移転登記

この記事で分かること
  1. 不動産の相続登記は義務ではないが、トラブルを避けるためにしておくべき
  2. 相続登記を自分で行う場合でも、実費の負担が必要になる
  3. 法定相続、遺言、遺産分割協議にいずれかによって、登記申請書の書き方が変わる
  4. 相続登記の手順 登記は自分でもできるが、相当な手間がかかる

被相続人が不動産を所有していた場合には、相続登記をします。不動産の相続登記は、登記の専門家に依頼せずとも自分で行うことができます。ただし手続きには大変な手間がかかり、専門知識を必要とするため、始めから弁護士や司法書士に頼んだ方がスムーズです。

不動産を相続したら相続登記が必要

人が一人亡くなるということは、大変なことです。故人の友人知人に連絡し、お通夜お葬式、場合によってはお墓や仏壇の手配が必要になることもあり、悲しみにくれている暇などないくらいに、さまざまな手続きに追われます。

そして葬儀が一段落したところで、ようやく「遺産はどうやって分けたらいいだろう」とか「相続税の申告は必要なの?」といったことを考え始めますが、不動産登記をし忘れるケースがあるようです。

不動産の相続登記とは?

不動産を相続した場合に、亡くなった方から相続した方へ、名義を変更する手続きが不動産の相続登記です。この名義変更は、自動でなされるわけではありません。父が先に亡くなっていて、次に同居していた母が亡くなり、相続人が自分一人であるケースでは「自宅として住んでいるこの家と土地は当然に私のものになるのだから、手続きなど必要ない」と思い込んでしまう方がいらっしゃいます。しかし登記の手続きを終えるまでは、法的に家や土地がその方の所有物とはならないのです。

相続登記をしないとどうなる?

不動産登記は、家や土地の所有者の権利関係を明確にするために行うものです。この手続きをしないでおくと、後々大きな問題につながることがあります。

不動産の売却ができない

相続した家や土地を自分のものとして売却したり、その不動産を担保に融資を受けたりする場合には、自分名義で登記していなければ手続きができません。いざ売却するというときに亡くなった方の名義になっていたら、まずは相続登記を完了させる必要があります。そうこうしているうちに、いい条件で売ることができなくなることも考えられます。

年数が経つほど登記手続きが煩雑になる

不動産の相続登記をせずに何十年も経過してしまうケースがあります。そうすると、次の代、また次の代の相続人へと、その不動産を相続する権利が繰り越されていきます。その結果、相続登記をしなければならない状況になったときには、相続人の数がはじめの相続の数倍にもなる可能性があり、交流のない遠縁の親類ばかりで、連絡も取れないということになりかねません。そうなると、相続登記に必要な書類を揃えるだけで一苦労です。登記は、時間をおくほど手続きが煩雑になります。

他の相続人のものにされてしまう可能性がある

遺産分割協議で、Aさんがある不動産を相続することが決定したとします。しかし、相続登記をせずにそのまま放っておくと、公的にはその不動産がAさんのものであると証明することができません。そのすきに、同じ相続人の立場のBさんが、法定相続分で共有しているものとして登記することが可能です。その後、Aさんの知らないところで相続した不動産が売られてしまった、という事態になることも考えられるのです。

ワンポイントアドバイス
被相続人が所有していた不動産を相続人の名義に書き換えるのが、相続登記です。手続きをしなくてもペナルティはありませんが、後々のトラブルを避けるためにも、だれが相続するかが確定した時点で、相続登記を済ませておくことをおすすめします。

相続登記に必要な実費

相続登記を自分で行ったとしても、必ずかかるのが実費相当額です。それでは、どんな費用がどれぐらいかかるのかを整理してみましょう。

登録免許税

不動産の相続登記には、登録免許税という税金を支払わなければなりません。登録免許税は登記手続きの手数料であり、権利を証明するための対価と言えます。

登録免許税は、該当の不動産の固定資産税評価額(個性資産評価証明書に記載の金額)に0.4%を掛けた金額です。正確には、固定資産税評価額の1,000円未満を切り捨てた金額に0.4%を掛け、算出した金額に100円未満の端数があれば切り捨てます。

登記する不動産が複数ある場合には、はじめに固定資産税評価額を合算し1,000円未満を切り捨て、算出した税額の100円未満を切り捨てて計算します。

例えば1,000万円の土地と500万円の建物を登記する場合、
1,500万円×0.4%=60,000円が登録免許税の金額です。

登記申請に必要な書類を揃えるための費用

相続登記を申請する際には、様々な書類を添付して提出する必要があります。そのほとんどを、市役所などの公的機関で取得することになります。

相続した不動産にかかる書類

名寄せ帳

個人が所有している不動産を一覧表記書類です。登記申請に必要というよりは、亡くなった方が所有していた不動産を漏れなく把握するために取得します。窓口は、対象の不動産が存在している市区町村の固定資産税を扱う係で、一通300円のところが多いようです。(役場によっては無料で発行してくれます。)

固定資産税評価証明書

市区町村の固定資産台帳に登録されている、不動産の評価額を証明する書類です。ここに記された固定資産税評価額をもとに、相続登記申請にかかる登録免許税が計算されます。取得申請の窓口は、該当する不動産が存在する市区町村役場で、手数料は一通350~400円程度です。

不動産の登記簿謄本(全部事項証明書)

不動産の所有者や抵当権など、過去に登記されたすべての履歴が記載された書類です。抵当権が付いていないか、故人の他に所有者がいないかなどを調べるために取得します。取得の申請窓口は、最寄りの法務局です。手数料は、窓口交付の場合は600円、オンライン請求で郵送受け取りの場合は500円、オンライン請求で窓口受け取りの場合は480円です。

被相続人に関する書類

出生時から死亡時までの戸籍謄本等
被相続人(亡くなった方)の身元確認と、相続が開始されたことを証明するため、不動産の相続登記申請の際に添付して提出します。戸籍謄本は、本籍地の市区町村役場にて取得できます。結婚などで本籍地が移転している場合には、前の本籍地の分も取得する必要があります。手数料は一通450円程度です。

住民票の除票

亡くなったことにより、住民登録が抹消された住民票です。不動産の登記簿謄本と一緒に提出することで、故人と対象不動産の持ち主が同一人物であることを確認します。取得窓口は故人の住所地の市区町村で、手数料は一通200~400円程度です。

相続人に関する書類

相続人全員の戸籍謄本

相続発生時に相続人が生存していることを証明するため、登記申請書に添付します。各相続人の住所地の市区町村役場で取得でき、手数料は一通450円程度です。

不動産を取得する相続人の住民票

不動産を相続する人の住所を証明し、正確に登記するために提出します。不動産を相続する人の住所地の市区町村役場にて、一通200~400円程度で取得できます。

相続人全員の印鑑証明書

遺産分割協議に基づいて不動産登記をする場合には、遺産分割協議書に押印された印鑑が、市区町村に登録された実印であることを証明するために提出します。印鑑証明書は、各相続人の住所がある市区町村役場で取得します。手数料は一通200~400円程度です。遺産分割協議書を自ら作成する場合には、それ自体に費用はかかりません。

このほかに役場までの交通費や通信費などがかかり、相続登記に必要な書類を揃えるためにかかる費用は、一般的に1~3万円かかると言われています。不動産や相続人の状況によって、かかる費用は大きく異なりますが、専門家に頼らず自分で相続登記をするにしても、最低でも十数万円はかかるとみた方がいいでしょう。

ワンポイントアドバイス
相続登記を自分で行う場合でも、登録免許税や、戸籍謄本などの必要書類を揃えるための実費がかかります。実費相当額は、およそ十数万円になることもあります。自分で手続をしたかからといって、無料でできるわけではありません。

相続登記の申請に必要な書類は、相続のパターンによって異なる

相続登記には、登記申請書の提出が必要です。その他に、基本的には「相続登記に必要な実費」で紹介した書類を揃えることになりますが、相続のパターンによって追加になる書類があります。ここでは3つの相続パターンにおいて、どんな書類が必要かを紹介します。

パターン1 法定相続分で相続登記をする場合

被相続人が所有していた不動産を法定相続分で登記する場合には、登記申請書に加えて下記の書類が必要です。

  • 被相続人の出生時から死亡時までの戸籍謄本等
  • 被相続人の住民票の除票
  • 相続人全員の現在の戸籍謄本
  • 不動産を相続する人の住民票
  • 対象不動産の固定資産税評価証明書
  • 対象不動産の登記簿謄本(全部事項証明書)
  • 相続関係説明図

被相続人と相続人の関係を記した家系図です。必ず提出しなければならない書類ではありませんが、これを提出しておくと、登記完了後に戸籍謄本類の添付書類を返却してもらうことができます。

パターン2 遺産分割協議に基づき相続登記をする場合

遺産分割協議で決定した通りに相続登記をする場合には、パターン1で紹介しました書類に追加して、下記の書類を添付する必要があります。

遺産分割協議書

相続人間で遺産をどのように分けるかを話し合い、合意の結果をまとめた書類です。この書類には、相続人全員の実印の押印が必要です。相続登記において、だれがどの不動産を相続したかを証明するために提出します。

相続人全員の印鑑証明書

パターン3 遺言書に基づき相続登記をする場合

遺言書通りに不動産を相続し、登記する場合には、パターン1に加えて下記の書類が必要になります。

遺言書

被相続人の意思を証明するために必要です。手書きの遺言書や、秘密証書遺言(遺言の内容は秘密とし、遺言書の存在のみを公証人に証明してもらったもの)の場合は、家庭裁判所で検認を済ませたものであることが条件です。公正証書遺言(公証役場にて遺言の内容を公証人に伝え、作成してもらった遺言書)の場合には、検認は不要です。

ワンポイントアドバイス
相続登記に必要になる書類は、登記申請書の他にいくつかあり、そのほとんどが役場から取り寄せるものです。相続相関図など、自分で作成しなければならない書類もあります。相続のパターンによって必要な書類が異なるので、わからない場合は法務局に確認しましょう。

登記申請書を書くだけでも大変な手間! 相続登記の手順

相続登記を経験するのは、人生で一度か二度でしょう。そのため、自分で相続登記をしようとする場合「何から手を付けていいのかわからない!」という方がほとんどではないでしょうか。そこで、相続登記の概要と手続きの流れをご説明します。

相続登記の5w1h

まずは、相続登記は誰が、いつ、何を、どこに、何のために、どうやってするのかを整理してみましょう。

誰が(who) 相続登記は相続で不動産を取得する本人が行います。司法書士などに代理を依頼する場合には、委任状が必要です。
いつ(when) 不動産の相続登記に期限は設けられていませんが、遺産分割協議などで、だれがどの不動産を相続するかが決定したら、速やかに手続きすることをおすすめします。
何を(what) 登記申請書とともに必要な書類を一式揃え、登記の申請をします。
どこに(where) 登記する不動産の所在地を管轄する法務局に申請します。管轄の法務局は、法務局のホームページからも探すことができます。
何のために(why) 不動産の相続登記は義務ではありませんが、相続した不動産の所有権を公的に主張するために行います。
どうやって(how) 管轄の法務局の窓口で申請する方法の他、郵送での申請や、自宅のパソコンからオンラインでの申請もできます。オンライン申請には、電子証明書の取得やソフトウェアのダウンロードが必要です。

相続登記手続きの流れ

不動産の相続登記は大変複雑ですが、概要をなんとなくおわかりいただけたでしょうか。では次に、具体的な手続きの流れをご紹介します。

Step1 相続する不動産の把握

名寄せ帳を取り、被相続人の所有していた不動産を漏れなく把握します。

Step2 遺産の分け方を話し合う

遺言書がない場合には、誰がどの遺産を相続するかを話し合いにより決定し、その結果を遺産分割協議書にまとめ、相続人全員が署名押印します。ただし、法定相続分で分ける場合や、遺言書通りで相続する場合には、この手続は不要です。

Step3 登記に必要な書類を取り寄せる

遺産分割協議と並行して、戸籍謄本や印鑑証明など、登記申請に必要な書類を取り寄せます。

Step4 登記申請書を作成する

法務局に提出する登記申請書を作成します。様式は法務局のホームページからもダウンロードできますが、先にご紹介しました「相続のパターン」によって使用する様式が異なるので、注意が必要です。

法定相続分で相続登記を行う場合の記載例
http://houmukyoku.moj.go.jp/homu/content/001207250.doc

遺産分割協議に基づき相続登記を行う場合の記載例
http://houmukyoku.moj.go.jp/homu/content/001207253.doc

遺言書に基づき相続登記をする場合の記載例
http://houmukyoku.moj.go.jp/homu/content/001207242.doc

登記申請書には登記の目的、原因、課税価格、不動産の表示など、多くの情報を記入しなければならず、記載例を見ても専門用語が多いため、登記に慣れていない方の登記申請書作成は大変苦労するようです。自分で登記申請書を作成する場合、不備や誤りが一切ないという例はまれなので、修正(補正と言います)することを前提に申請者全員の捨印をおしておくといいでしょう。

Step5 法務局へ申請する

登記する不動産が所在する、管轄の法務局へ登記申請書と添付書類を提出します。窓口持参や郵送の場合には、登録免許税相当額の収入印紙を登記申請書に貼付して納税します。オンラインでの申請の場合には、電子納付や税務署での現金納付、収入印紙を登記所に送付または持参する方法で納税できます。

またオンライン申請を利用する場合には、戸籍謄本などの添付資料を別途郵送(または持参)する必要があります。

Step6 補正の連絡

相続登記は、法務局に書類を提出すれば終わりではありません。登記申請書に何らかの不備がある場合には、1週間ほど後に申請した法務局から電話連絡が入り、内容の確認と訂正を要請されることがあります。この登記申請書の訂正が「登記申請の補正」です。

軽微な補正であれば、登記官によっては捨印を利用して補正をしてくれることもありますが、「補正に来てください」と言われるケースがほとんどです。初めての相続登記であればなおさら、すんなりと登記できないと思った方がいいでしょう。場合によっては、法務局に何回か足を運ぶこともあります。

Step7 登記の完了

法務局からは、補正があるときにしか連絡が来ません。予め通知された(または法務局に掲示されている)登記完了日までに連絡がなければ、登記が完了しているということです。戸籍謄本の原本など返却を受ける書類や、登記識別情報(昔の権利証)通知書、新たに相続人の名義となった登記簿謄本を、申請した法務局に取りにいきます。登記事項に誤りがないか、取得した登記簿謄本をしっかりと確認しておきましょう。

ワンポイントアドバイス
相続登記で大切なのは、手順をおさえることと、必要書類とともに不備のない登記申請書を提出することです。とは言え、初めての登記申請で一つの補正もなく完了することは稀でしょう。登記を自分で行う場合には、何度か法務局に足を運ぶ覚悟が必要です。

相続税の申告と相続登記は一括して専門家に依頼を

相続登記の重要性と手順について説明してきましたが、相続税の申告・納税が必要なケースでは、相続登記を行うタイミングも重要です。故人の財産のすべてを把握し、遺産分割を確定させたら相続税の申告・納税を済ませ、最後に相続登記を行います。「焦って先に登記を済ませてしまったばっかりに、できたはずの相続税対策を行うことができず、税金を余分に支払うことになってしまった」などということもあるので、注意が必要です。

こうしたトラブルを避けるためにも、相続が発生したら、まずは税理士に相談することをおすすめします。相続に詳しい税理士であれば、相続登記を安心して任せられる司法書士を紹介してもらうことも可能です。

相続税の申告だけは税理士に依頼し、相続登記は自分で行おうと考える方もいらっしゃるかもしれません。しかしご紹介しましたように、登記に必要な書類を揃えるだけでも大変な手間がかかりますし、登記の専門知識がなければ、法務局からの問い合わせがあった際に、登記官の言葉を理解するのも難しいでしょう。挑戦してみたものの、結局はうまくいかずに、司法書士に依頼したという話をよく耳にします。

たくさんの時間と労力を費やすことを考えれば、はじめから専門家を頼るのが得策です。相続の経験豊富な税理士に相談することで、必要な法的手続きをワンストップで済ませることができます。

遺産相続は弁護士に相談を
法律のプロがスムーズで正しい相続手続きをサポート
相続人のひとりが弁護士を連れてきた
遺産分割協議で話がまとまらない
遺産相続の話で親族と顔を合わせたくない
遺言書に自分の名前がない、相続分に不満がある
相続について、どうしていいのか分からない
上記に当てはまるなら弁護士に相談