2018/9/28 17view

後見人による遺産相続とは?〜未成年後見制度を知っておこう!〜

この記事で分かること
  1. 未成年者は社会的判断能力が未熟なため、単独で法律行為を行えない
  2. 未成年が相続人になる場合、指定代理人が必要
  3. 財産の管理は、親権があっても利益相反となる場合は行えない
  4. 親権者から保護を受けられないときに活用できるのが未成年後見人制度

未成年者が相続人になることはよくあることです。たとえ、胎児であったとしても無事に生まれてくれば相続人になります。未成年者が相続人になる場合、遺産分割協議についても法定代理人、特別代理人が必要です。未成年者が相続するにあたり、親権者がいない場合、未成年を養育し、財産を管理し、法律行為を行使する未成年後見人を申し立てることができます。

後見人に相続させる制限行為能力者制度と未成年後見制度

未成年は保護されるべき存在で、法的には特別な定めがあります。
制限行為能力者制度は、社会のルールの中で生きる場合、経験や判断能力で劣ってしまう人を保護するための制度です。

弱者を保護するための制度

民法の原則の一つに「契約自由の原則」があります。これは強行法規などを除き、当事者の自由な意思に、その選択を任せるというものです。しかし、当事者が結ぶ契約が自分にとって有利なのか不利なのか、的確に判断できない人がいます。それは経験不足であったり、判断能力が精神的な障害等で劣ったり、様々です。そうした人々にも一律に「契約自由の原則」を適用すると契約時に自分にとって不利であることが分からず、損をしてしまうことも考えられます。そのような人々を保護する制度が制限行為能力者制度です。

制限行為能力者とは

それではそうした制限行為能力者とはどのような人たちなのでしょうか。その中の一つが未成年者です。さらに成年には成年後見制度として、成年後見人(民法、以下条文番号のみの時は同法、7条以下)、保佐人(11条以下)、補助人(15条以下)の制度があります。

成年後見人は「精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者」(7条)、保佐人は「精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分である者」(11条)、補助人は「精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分である者」(15条1項)と定義されています。

未成年者の行為能力

未成年者の行為能力はどのように制限されているのでしょうか。

法定代理人の同意

未成年者が法律行為をするためには、その法定代理人の同意を得なければなりません(5条1項本文)。そしてそれに反する法律行為は、取り消すことができます(同2項)。
具体例としては16歳の高校生がバイクを5万円で売ってくれたのでお金を払って受け取った場合を考えてみましょう。翌日になってその高校生がやってきて「やっぱりバイクを売るのはやめました。お金を返すからバイクを返して」と言ってきたら、バイクの売買はなかったことになります。バイクの売買という法律行為が取り消されるためです。

未成年者の法律行為の例外

原則として未成年者は法律行為ができないのは、未成年者を保護するためです。そうであれば、ただ単に未成年者が権利を得る、もしくは義務を免れる結果をもたらす法律行為であれば、未成年者が損をすることはありませんから、保護の必要がありません。「単に権利を得、義務を免れる法律行為については、この限りではない」(5条1項但し書き)はそのことを規定したもので、そのような性質の法律行為は未成年者が法定代理人の同意を得なくてもすることができます。また、他の例外として、法定代理人が目的を定めて処分を許した財産は、その目的の範囲内で、目的を定めないで処分を許した財産は、自由に処分できます。

取り消しと追認

上記のバイクの契約の取り消しで、これも一種の意思表示で法定代理人の同意が必要となりそうですが、民法はそれを要求していません。なぜなら、契約の取り消しは元の状態に戻るだけなのでそれ以上に不利益が及びませんし、単独で取り消せないと十分な保護とはならないからです。そして、未成年が勝手に契約してしまった場合でも、後から法定代理人が認めた場合には有効となります(122条)。

未成年者の行為能力の例外

制限行為能力者である未成年者ですが、成年とみなされる場合があります。

婚姻による成年擬制

未成年の成年擬制の代表例は婚姻です。「未成年者が婚姻をしたときは、これによって成年に達したものとみなす」(753条)とされています。女子は16歳から婚姻できますから(731条)、16歳で成年とみなされる場合があるのです。

営業の許可に係る成年擬制

婚姻による成年擬制以外にも、営業の許可を与えられた者の成年擬制があります。「一種または数種の営業を許された未成年者は、その営業に関しては、成年者と同一の行為能力を有する」(6条1項)とされています。これは営業を許された未成年者が行為能力の制限を理由に法律行為を取り消せるのであれば、その営業に関しては著しく法的安定性を欠いてしまうことなどが考慮されたものです。

ワンポイントアドバイス
未成年など、契約行為をするのに十分な判断力がない人の利益を保護するために、制限行為能力者制度があります。法律行為を行う場合は基本的に、後見人の同意が必要になります。ただし、婚姻や営業許可などによる例外はあります。

未成年の相続で生じる問題

未成年者が相続人となる場合、行為能力の制限と、未成年者の保護という観点から様々な規定が存在します。

親権者と未成年の相続

たとえば、父親が死亡して未成年の子供が遺された場合、配偶者(母親)と子供が相続人となります。このような場合に、どのような問題が起きるでしょうか。

親権者と未成年者の間の問題点

親権者は未成年者の財産管理や財産に関する法律行為について、包括的かつ広範な権限を有しています(824条)。しかし、そのような親権の行使を認めた場合に未成年者の利益を侵害する可能性があります。たとえば冒頭で示したように、父親が死んで配偶者と未成年者の子が遺され、親権者が未成年者に相続の放棄(938条、939条)をした場合、全財産が自分の物になります。これだと未成年者の権利が侵害されかねません。このように親権者と未成年者の間で利益が相反する場合などをどうするかが大きな問題となります。

特別代理人の選任制度

上記のような場合は、まさに親権者と未成年の子の間の利益が相反しているわけです。そのような「利益相反行為」を行う場合には、親権者は家裁に未成年者のための特別代理人の選任を申し立てなければなりません(826条1項)。もっともこの制度は、申立人が特別代理人として挙げた候補者(大抵は親族)がそのまま選ばれていると言われており、あまり実効性があるとは言えないという指摘はなされることが多いようです。

内縁の妻と特別代理人

特別代理人には特に資格が必要とされていません。よくあるケースとしては、内縁の妻とその子供の例です。子供は相続人ですが、内縁の妻は相続人ではありません。そこで母親である内縁の妻が未成年である子供の特別代理人になるということが多いようです。もっとも子供が2人以上いれば子供同士も利害が対立しますから、その母親は2人以上の特別代理人にはなれません。

親権喪失、停止と利益相反

親権を、虐待や育児放棄などによって、適切に行使しない者については、親権の喪失、停止などの制度があります。

親権喪失と管理権喪失、親権停止

親権喪失は「父又は母による虐待又は悪意の遺棄があるときその他父又は母による親権の行使が著しく困難又は不適当であることにより子の利益を著しく害するとき」(834条)に家庭裁判所は親権喪失の審判をすることができます。

ただし、2年以内にその原因が消滅する見込みがあるときはできません。

親権停止(834条の2)は2年以内の範囲で親権を停止するもので、2011年の民法改正で新たに創設された制度です。以上は包括的に親権を喪失・停止させるものですが、管理権喪失(835条)は、財産管理権のみ喪失させる制度です。そのため、管理権者でなくなった親権者でも、引き続き身上監護権は行使できます。親権を行使する父母について破産手続きが開始された場合には、財産管理権は喪失します(破産法61条)。

親権者と利益相反(遺産分割の例)

2人の子の親権者が2人の子の代理をして行った遺産分割は、利益相反(一方が利益があり、一方は不利益になること)になります。

「民法862条2項所定の利益相反行為とは、行為の客観的性質上数人の子ら相互間に利害の対立を生ずるおそれのあるものを指称するのであって、その行為の結果現実にその子らの間に利害の対立を生ずるか否かは問わない」(最判昭和49年7月22日)という判例があります。

ワンポイントアドバイス
親権と財産管理権は分けて考えられます。未成年者が相続人になる場合は、利益を反しない関係の特別代理人を選任する必要があります。相続人に子どもが2人以上いた場合には、それぞれに特別代理人をつけなくてはなりません。

未成年の相続における未成年後見制度の基本

未成年には未成年後見制度があります。これは親権制度による保護を受けられない未成年のための制度です。

未成年後見制度

未成年後見制度の基本的な部分を見ていきましょう。

未成年後見は親権を行う者がない時、または親権を行うものが管理権を有しない時に始まります(838条1号)。具体的には親権者の死亡、親権・管理権の辞任(837条1項)のほか、前述の親権の喪失、停止、管理権の喪失の場合です。

未成年後見人の選任とその事務

未成年者に対して最後に親権を行う者は、遺言で未成年後見人を指定できます(839条1項)。ただし、このような例は非常に少ないと言われています。その多くは未成年者本人や、その親族等が家裁に未成年後見人の選任審判を申し立て、家裁が選任します(840条、841条)。未成年後見人の事務は身上監護(857条)と財産管理(859条)です。

親権との注意義務の違い

未成年後見人は、善良な管理者としての注意義務を負います(869条、644条)。親権者が自己の財産のためにするのと同一の注意義務しか負いませんから(827条)、注意義務が加重されています。

未成年後見人と利益相反行為

未成年後見人と利益相反行為は、親権者の場合と基本的には同じです。

利益相反の判断基準

利益相反とは、ひとつの行為が一方は利益になるのに、他方は不利益になる行為のことをいいます。

利益相反かどうかは、親権者の意図を問題とせず、行為の外形から判断されます(いわゆる外形説)。

親権者が子の養育費に充当するために金銭を借り入れ、子供名義の不動産に担保権を設定した行為は利益相反行為とされました(最判昭和37年10月2日)。その他の判例でも「親権者が子を代理してなした行為自体を外形的客観的に考察して判断すべきであって、当該代理行為をなすについての親権者の動機、意図をもって判定すべきではない」としています(最判42年4月18日)。未成年後見人であっても、状況は同じでしょう。

相続放棄と利益相反の最高裁判決

未成年後見人と相続放棄・利益相反について興味深い判決があります。事案は多少、複雑ですが、簡略化すれば、未成年後見人と未成年者3人ともに相続人でしたが、未成年後見人になった者がまず相続放棄をして、続いて未成年者3人の相続放棄をさせました。

未成年者3人は後に未成年後見人の行為は、未成年後見人と未成年者の関係においても、未成年者間においても利益相反行為であるとして、相続放棄は無効であると主張したものです。これについて最高裁は「後見人が被後見人を代理してする相続の放棄は、必ずしも常に利益相反行為にあたるとはいえず」とした上で、後見人が先に放棄した場合、同時に放棄した場合については「利益相反行為になるとはいえない」(最判昭和53年2月24日)としました。

未成年後見監督人

未成年後見人の事務を監督等させるために未成年後見監督人制度(848条以下)があります。親権者による指定(848条)、家裁による選任(849条)によって就職します。最近は未成年後見人の横領事件が多くなっており、その監督ということで未成年後見監督人が増加しています。

ワンポイントアドバイス
相続において、親権による保護を受けられない未成年には、未成年後見人が選任されます。後見人は財産の管理義務を負いますが、最近は未成年後見人による横領事件も増えており、その対策として未成年後見監督人制度の活用も増加しています。

相続の後見人で困ったことは弁護士に相談!

未成年者が遺産相続に関わるときには、親権者と利益相反になる場合があり、別に代理人や後見人をつける必要が出てきます。未成年後見人制度は、未成年者との関係性から後見人になれるかどうかが決まっていたり、財産分配後も実際に生活していく中でトラブルが生じたりと、個人で対応するには難しい問題も含んでいます。相続や後見人制度に強い弁護士に相談して、未成年者の利益を確実に保護していくようにしましょう。

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