セクハラされて退職したけれど納得できない!責任追及するには?

この記事で分かること
  1. 会社は、社員が安全で快適に働く環境を整備する義務があり、セクハラを未然に防ぐ対策を講じなければいけない。それを怠った場合、被害者は法的責任を追及できる。
  2. セクハラをした本人に対する法的責任は、民事上の損害賠償請求がほとんどだが、悪質なセクハラ行為は刑事罰を問うことができる。
  3. 加害者や本人に責任追及するにはセクハラの証拠が必要。退職前に可能な範囲で記録しておくこと。

会社はセクハラを未然に防ぐ対策を講じる必要があります。それを怠った場合、被害者はセクハラをした本人だけでなく、会社に対しても法的責任を追及できます。在職中、可能な範囲でセクハラされた証拠を記録しましょう。たとえ退職した後でも、あきらめずに弁護士等の専門家に相談し、責任追及をする方法を相談することをおすすめします。

セクハラとは何か。納得できないセクハラの具体的事例を見る

セクハラは職場での性差別的な一切の言動であり、「セクハラ」=「性的いやがらせ」であることも一般的に認知されるようになってきました。しかし職場でのセクハラ被害がなくなることはなく、被害者が退職を余儀なくされるケースもあります。

男女雇用機会均等法での定義

男女雇用機会均等法は女性労働者の地位向上のための法律なので、女性労働者を被害者と想定していますが、セクハラは男女いずれにも起こり得ます。しかし加害者は男性の上司、同僚、部下、顧客や取引先、被害者は女性従業員というケースが圧倒的に多くなっています。

男女雇用機会均等法(平成18年改正)

第11条 事業主は、職場において行われる性的な言動に対するその雇用する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受け、又は当該性的な言動により当該労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対処するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。

2 厚生労働大臣は、前項の規定に基づき事業主が講ずべき措置に関して、その適切かつ有効な実施を図るために必要な指針を定めるものとする。

職場におけるセクハラの事例

また厚生労働省は、セクハラを防止するための指針として「事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理を講ずべき措置についての指針」を定め、上記(1),(2)についてその具体例を示しています。

(1)「労働者が労働条件につき受ける不利益」の具体例

  • 上司または同僚が労働者に対して性的な関係を要求したが拒否されたため、当該労働者を解雇した。
  • 出張中の車内で上司が労働者の身体に触わり抵抗されたため、当該労働者に不利益な配置転換をした。
  • 性的な事柄について職場内で公然と発言していたことに抗議されたため、上司または事業主が当該労働者を降格した

(2) 「労働者の就業環境が害される」具体例

  • 上司により身体をたびたび触られた為、当該労働者が苦痛に感じ、就業意欲が低下した。
  • 同僚が取引先で労働者に関する性的な内容の情報を意図的かつ継続的に流したため、苦痛に感じて仕事が手につかない。
  • 労働者が嫌がっているにもかかわらず、事務所内にヌードポスター等を掲示しているため、苦痛に感じて業務に専念できない。
ワンポイントアドバイス
男女雇用機会均等法では、セクハラとは性的言動により当該社員が不利益を受けること、就業環境が害されること、と定義しています。また厚生労働省は、セクハラを防止するための指針を定めています。

納得できないセクハラは会社にも責任がある

前述したとおり、会社はセクハラを未然に防止するための対策を立て、セクハラが発生した場合は適切に対処する必要があります。その義務を怠った場合、セクハラの被害者は会社に対し責任を追及することができます。

セクハラに対する会社の義務や法的責任

職場環境配慮義務(安全配慮義務)

会社は社員が安全で快適に働くことができるよう、職場環境を整えておく義務があります。危険作業などへの対策だけでなく、社員の健康やメンタル的な対策も会社の安全配慮義務に含まれています。

使用者責任

民法715条 使用者責任では、「ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う」と規定しています。
セクハラの被害者は、加害者だけでなくその社員を雇用している会社に対しても使用者としての責任を問い、損害賠償を請求することができます。

債務不履行責任

会社は雇用契約上、労働者の生命や身体を危険に晒さないよう配慮する安全配慮義務があり、セクハラが起きないように職場環境を整備する義務があります。この義務違反がある場合、セクハラの被害者は会社に債務不履行責任を追及することが可能です。

会社はセクハラに対し対策を取らなければいけない

厚生労働省の指針では、職場内でセクハラを未然に防ぐために以下のような対策を取るよう定めています。

  • 会社としてセクハラ防止の方針を明確にする。
  • 就業規則でセクハラに対する処分を明確にする。
  • セミナーや講習会を開催し、社内でセクハラの知識を周知し啓蒙に努める。
  • 社内にセクハラ相談窓口を設置する。
  • セクハラが発生した場合、事実関係を迅速・正確に確認し、適切に対処する。
ワンポイントアドバイス
職場内のセクハラ被害は、その加害者、被害者を雇用している会社にも使用者としての責任があります。会社は、社員が快適で安全に働けるよう職場環境に配慮し、セクハラを未然に防ぐための対策講じる必要があるのです。

納得できるセクハラをした加害者に対する法的責任について

前項で記載したようなセクハラ行為が職場内で発生し、被害者が強い精神的苦痛を受けた場合は以下のような不法行為が成立します。セクハラをした加害者を民事責任として慰謝料を請求できるほか、悪質なセクハラの場合は刑事責任を問うこともあります。

人権侵害

人権とは憲法で保障された権利の一つであり、他人に無断で荒らされることのない権利です。人権侵害は人種や年齢等を理由にした差別や嫌がらせ行為全てに関わりますが、セクハラは性的に人権を侵害する行為と言えます。

民事上の不法行為責任

不法行為責任とは、故意または過失によって他人の権利を侵害し、他人に損害を与えたことにより生じる損害賠償責任です。セクハラは、被害者の人格権や名誉、プライバシーを侵害する行為です。不法行為であるかどうかは、違法性があるかないかで判断されます。
多くのセクハラの裁判例で慰謝料請求がなされているものは、この不法行為に基づく損害賠償責任を根拠としています。

刑事上の責任

セクハラ行為が刑法上の犯罪となることは少ないですが、行為の程度によっては刑法犯が成立することがあります。 刑法上の犯罪までが成立しなくても、軽犯罪法違反や条例違反となる場合があります。

身体的接触を伴う場合

身体を無理やり触る、乱暴するなど身体的接触を伴うセクハラ行為の場合、意に反する性的な言動として以下のような罪に問われることがあります。

  • 強姦罪
  • 強制わいせつ罪
  • 傷害罪
  • 暴行罪

身体的接触を伴わない場合

身体の接触がない場合でも、以下のような刑事上の責任が成立することもあります。また迷惑防止条例や軽犯罪に該当する場合もあります。

  • 名誉毀損罪
  • 侮辱罪
  • ストーカー法の適用
ワンポイントアドバイス
セクハラは人権侵害です。セクハラをした本人に対する責任は、違法性が認められれば民事上の不法行為責任として損害賠償を請求することができます。さらにセクハラ行為に身体的接触が伴う場合など悪質な場合、その程度により刑事責任を問うことができます。

セクハラで退職したけれど納得できない!責任追及はどうすればいい?

セクハラの被害者であるにも関わらず、会社から退職を勧められたり、精神的苦痛により出社できなくなり最終的に退職を余儀なくされた事例は多くあります。できれば在職中にセクハラの証拠を残し、早期に解決するための手段を講じましょう。

セクハラの事実を整理し証拠を残す

セクハラが実際に行われたかどうかを示すためにも証拠は重要です。できる限りの証拠を集め、整理しておきましょう。

事実の整理

セクハラの責任を裁判で追及するには、セクハラの事実を証明しなければなりません。
自分が受けた行為がセクハラかもしれないと思ったら、「いつ」「どこで」「どのように」被害を受けたかを整理し記録しておきます。

セクハラの証拠を残す

ボイスレコーダーや写真でセクハラの証拠を残すことができれば、裁判でセクハラを証明する判断材料になります。困難な場合は、相手からのメールや携帯電話の着信履歴を残しておく、日記にセクハラ被害の日時と内容を詳細に記録するなど、できるだけ証拠となるものを残します。

職場内の同僚や先輩に相談し証言を得る

上司からセクハラを受けている場面を職場内の同僚や先輩が目撃していた場合、思い切って相談してみましょう。第三者からセクハラの証言を得ることは重要な証拠になります。また相談した相手や内容、日時を記録しておくことも大事です。

会社のセクハラに関する規定を確認し相談する

会社のセクハラの方針や規定類、相談窓口を確認する
先に記載したように、会社はセクハラを未然に防止するための対策を講じ、社内に周知し規定等を定める必要があります。もし方針や規定等がない場合はそれだけでセクハラへの対策に問題があるといえます。

相談窓口に相談する

会社の相談窓口がある場合は勇気を出して相談してみましょう。相談窓口がない場合は、雇用、労働に関わる人事部や総務部に相談します。できるだけ客観的に説明するために、あらかじめ書面でまとめ相談の際に提出するとよいでしょう。相談した後も問題を放置されたり適切に対処してくれなかった場合は、その事実を会社の不適切な対応として会社に責任を追及することができます。

専門家に相談する

一般的にセクハラ被害者が加害者を訴えることは、個人対個人の民事事件に該当しその証明が難しく、もし相手が事実を認めたとしても支払いに応じるかはわかりません。
セクハラの多く事例では、加害者だけでなく、個人よりも支払い能力が高い会社に対して労使紛争として損害賠償請求を行います。早い金銭的解決を目指すのであれば、弁護士などの専門家に相談した方がよいでしょう。退職を余儀なくされた場合でもセクハラが原因であると認められれば、支払われたはずの賃金も含めて請求が可能です。

ワンポイントアドバイス
セクハラ加害者及び会社に責任追及、損害賠償請求をするには、セクハラの事実を整理しできるだけ証拠を残しましょう。
すでに退職した後でも、諦めずに弁護士に相談し早い解決をめざしましょう。

セクハラ問題は近年メディアで多く取り上げられ、世間に広く認知されるようになってきました。しかしセクハラ自体を明確に判断するための法律がまだなく、個々の内容が様々で、解決が難しい場合が多いです。違法行為に該当するセクハラかどうか、責任追及や慰謝料請求の方法など個人で解決することが困難な場合は、弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。

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