土地の境界問題で困ったら?誰でも使える筆界特定制度を利用しよう!

この記事で分かること
  1. 「筆界特定制度」とは、登記された際の筆界を、調査によって明らかにする制度
  2. 筆界特定は、土地の所有者として登記されている人やその相続人などが申請できる
  3. 筆界特定制度のメリットは裁判よりも費用が少なく、短期間に判断が示されること
  4. 隣人と摩擦が起きる前に制度を利用しよう
  5. 所有権界については土地家屋調査士会ADRの利用がオススメ

「筆界特定制度」は裁判で争うことなく、土地の境界問題を解決する手段として、2006年より施工された比較的新しい制度です。「筆界特定制度」をうまく活用すれば、土地所有者同士の争いが深刻化する前、早期に問題解決することができます。

土地の境界問題を解決する方法-筆界特定制度とは

「筆界特定制度」の「筆界」って何?だれが筆界を特定するの?などの、制度の基本的な内容について見ていきます。

筆界の位置について判断を示す制度

筆界特定制度とは、平成18年に開始された制度で、土地の所有者として登記されている人などの申請に基づいて、筆界特定登記官が外部専門家である筆界調査委員の意見を踏まえ、土地の筆界の位置を特定する制度です。ここで注意しなければならないのは、筆界特定制度は新たに筆界を決めるものではなく、調査の上、登記された際に定められたもともとの筆界を筆界特定登記官が明らかにする制度であるということです。

「筆界」とは?

「筆界」とは、土地が登記された際にその土地の範囲を区画するものとして定められた線のことです。土地の所有者同士の合意によって変更することはできません。それに対し「所有権界」といって、土地の所有者の権利が及ぶ範囲を画する境界があります。所有権界は土地の所有者間で自由に移動させることができます。この2つが一致しない場合、筆界をめぐってトラブルに発展することがあり、この解決に有効なのが筆界特定制度です。

筆界は筆界特定登記官が特定

筆界調査委員という専門家(土地家屋調査士や弁護士など)が、これを補助する法務局職員とともに、土地の実地調査や測量などさまざまな調査を行った上、筆界に関する意見を筆界特定登記官に提出し、筆界特定登記官が、その意見を踏まえて筆界を特定します。なお、申請人や関係人は、筆界特定が行われる前に筆界特定登記官に対して、筆界に関する意見を述べたり、資料を提出したりすることができます。

裁判でも筆界を特定できる

土地の筆界をめぐって、トラブルになってしまった場合、裁判(筆界確定訴訟)という方法もあります。しかし、その際、筆界を明らかにするための資料の収集は、所有者自身が行わなければなりません。また、費用も高額になる、長期化することがあるなどのデメリットがあり、心理的な負担も増えると言えます。

ワンポイントアドバイス
筆界特定制度とは、筆界調査委員という専門家(土地家屋調査士や弁護士など)が法務局職員とともに、土地の筆界の位置を特定する制度です。裁判に比べ早期に解決ができ、経済的、心理的な負担が少なくて済みます。

筆界特定までの流れ 土地の境界問題を解決しよう

筆界特定制度はどのように利用したらいいのでしょうか。申請の方法から、筆界の特定まで、具体的な流れを見ていきたいと思います。

  1. 筆界特定の申請
  2. 筆界特定登記官による審査
  3. 筆界調査委員による調査
  4. 筆界調査委員による意見の提出
  5. 筆界特定登記官による筆界特定

①筆界特定の申請

土地の所有者として登記されている人やその相続人などが、対象となる土地の所在地を管轄する法務局または地方法務局の筆界特定登記官に対して、筆界特定の申請をすることになります。

②筆界特定登記官による審査

筆界特定登記官はその申請書を審査し、適当であれば受理されます。対象土地の所在地が当該申請を受けた法務局または、地方法務局の管轄に属さない場合や、申請権限を有しない者からの申請があった場合には申請が却下されます。

③筆界調査委員による調査

筆界調査委員は対象土地・関係土地・その他の土地を測量し、関係者に聴き取りを行うと同時に、資料の提出を求めます。また、測量や実地調査を行う際はあらかじめ、日時・場所が通知され、申請者や関係人には立ち会う機会が与えられます。

④筆界調査委員による意見の提出

筆界調査委員は、必要な調査を終了したとき、遅滞なく筆界特定登記官に筆界特定についての意見を提出します。意見書では、図面や測量の結果により、筆界点と認められる各点の位置を明らかにします。

⑤筆界特定登記官による筆界特定

筆界特定登記官は、筆界調査委員の意見を踏まえ、対象土地の筆界特定をし、その結論及び理由の要旨を記載した筆界特定書を作成します。

ワンポイントアドバイス
筆界特定を利用するには、土地の所有者が法務局に申請を行います。筆界特定登記官が申請を受理すれば、筆界調査委員が測量や聴き取りをして筆界特定登記官に意見を提出し、筆界が特定されます。

土地の境界問題を解決できる筆界特定制度のメリット・デメリット

筆界特定制度の内容と流れについて、見てきたできたところで、その活用方法を考えていきたいと思います。メリットとデメリットを理解して、有効に利用しましょう。

筆界特定制度のメリット

筆界特定制度のメリットは、まず費用が安く済むということです。一般的な宅地の測量には数十万円かかるのに対し、例えば、境界を挟む2筆の土地の価格(固定資産課税台帳に登録された価格)の合計が4,000万円であれば、8,000円の申請手数料と測量費用で利用することができます。さらに、早期解決を可能とすることもこの制度の大きなメリットです。裁判になれば、約2年かかると言われていますが、筆界特定制度では多くの事案で半年から1年で判断が示されます。また、この判断は公的機関が専門家の意見を踏まえて得られたものであり、裁判においても高い証拠価値を有することから、筆界特定制度を利用するメリットは大いにあるでしょう。

筆界特定制度のデメリット

筆界特定制度はあくまでも「境界線を決めるための制度」であり、境界紛争を解決する手段ではありません。そのため、上記で解説した土地の「所有権界」について、裁判で争われることもあります。ただし、メリットでも書いたように、筆界特定制度の判断は裁判にて尊重されますので、判決でくつがえされることはほとんどありません。そのほかのデメリットとしては、自分の思っていた場所とは全く異なる筆界になってしまう、まれに長期化すること、などが挙げられます。

ワンポイントアドバイス
筆界特定制度のメリットは費用が少なく、早期に解決を図ることが可能である点です。しかしながら、筆界を特定することはできても、境界紛争に発展している場合には争いを解決することができない点についてはデメリットと言えるでしょう。

筆界特定制度を活用するポイント-土地の境界問題を解決

筆界特定制度を有効に利用するためには、いくつかのポイントがあります。どのような場合にこの制度を利用するのが良いのでしょうか。また、土地家屋調査士会ADRという相談先についても解説していきます。

隣人と紛争状態になる前に

筆界特定制度は、裁判と違って法的な拘束力がありません。したがって、筆界が特定されても隣人と紛争状態である場合には、その解決は難しいと言えます。お互いに感情的な摩擦が少なく、手続きを経て平和的に解決できそうな場合に筆界特定制度は向いていると言えます。その点では、境界の位置が全く検討つかない時や、関係者が法務局の判断に従うことに合意している場合なども、筆界特定制度が有用です。

弁護士を活用しよう

土地の売買のために境界線をはっきりしたいという場合には、自分に有利な判断が示されるように弁護士に依頼をすることもあります。弁護士は公図の内容を踏まえ、申立書を作成し、現地調査に同行したり、法務局での意見聴取手続きへ出席したりします。こちらの主張を分かりやすく説得力のある方法で、伝えることができれば、有利な結論を得ることができるかもしれません。

土地家屋調査士会ADRとは何か

土地家屋調査士会ADR(境界問題相談センター)は、各地の土地家屋調査士会が運営する制度です。土地家屋調査士と弁護士が調停人として当事者間の話し合いを取り持って、所有権界に関する問題の早期解決を図るものです。裁判の判決のような強制力はありませんが、和解契約書を履行しなければならないという法的効力が付与されます。「筆界」とは?の項目で解説した、「所有権界」についての紛争問題を解決したい場合には土地家屋調査会ADRの利用をおすすめします。

ワンポイントアドバイス
法的な拘束力のない筆界特定制度では、隣人と筆界についての合意が得られる場合において有効と言えます。もし境界問題が、所有権界に関するものであれば、土地家屋調査士会ADRの利用をおすすめします。また、土地の売買に関わる場合は、弁護士への依頼も可能です。

土地の境界問題で困ったことがあれば、弁護士に相談

土地の境界問題は誰でも遭遇しうるトラブルです。筆界特定制度ができる以前は裁判で争うしかありませんでしたが、今では費用をかけずに短期間に解決できるようになりました。問題が大きくなってしまう前に、筆界特定制度をうまく利用しましょう。また、土地の境界問題で分からないことがあれば、自力で理解しようとせずに、弁護士に相談する方が得策です。弁護士にも得意不得意分野がありますが、不動産に強い弁護士に相談することをおすすめします。

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