示談の難しい交通事故を解決する「ADR機関」とは?仕組みと利用法を解説

この記事で分かること
  1. 示談交渉の難しい交通事故を解決する「ADR機関」とは、裁判外紛争処理手続きを行う機関である
  2. 交通事故の「ADR機関」は、主なものとして、交通事故紛争処理センターと日弁連交通事故相談センターの二つがある
  3. 交通事故紛争処理センターと日弁連交通事故相談センターの大きな違いは、協定先の保険会社・共済組合の範囲である
  4. 交通事故紛争処理センターと日弁連交通事故相談センターは、手数料無料で迅速に問題を解決できるなどメリットが多い
  5. 交通事故の「ADR機関」利用をお考えの場合は、まずは弁護士に相談を!

交通事故の示談交渉が難航した場合、保険会社(共済組合)との間を仲裁してくれる「ADR機関」を利用する方法があります。交通事故の「ADR機関」である交通事故紛争処理センターと日弁連交通事故相談センターは、手数料無料で迅速に問題を解決可能ですが、ご自分の事案がADRに馴染むかどうかは、弁護士に相談するのがオススメです。

示談の難しい交通事故を解決する「ADR機関」について知ろう!

交通事故の被害に遭った場合、通常は加害者の任意保険会社(共済組合)が示談交渉の窓口となります。しかし、保険会社(共済組合)の示談交渉担当者の対応が悪く、被害の実情に見合った損害賠償を受けられそうにないとき、あるいは示談交渉が難航したときは、一体どうしたら良いでしょうか?

その一つの解決策として、「ADR機関」を利用するという方法があります。
本記事では、「ADR機関」の仕組みと利用法についてわかりやすく解説していきます。

交通事故を解決できる「ADR機関」とは一体なに?

「ADR機関」とは裁判外紛争解決手続きを行う機関

ADRとは、一定の仲裁者を置いた上で、当事者が裁判外で交渉し紛争を解決する手続きのことを言います。ADRは、交通事故だけではなく、労働紛争や土地の境界線に関する紛争、商品の欠陥に関する紛争など様々など分野で取り入れられており、このADRを扱う機関のことを「ADR機関」と呼びます。

交通事故を解決できる「ADR機関」は主に二つ

交通事故を取り扱う「ADR機関」は、主なものとして

  • 交通事故紛争処理センター
  • 日弁連交通事故相談センター

の二つがあります(その他、日本損害保険協会のそんぽADR、外国損害保険協会の保険オンブズマンなどもあります)。

交通事故紛争処理センターとは

交通事故紛争処理センターとは、弁護士による交通事故の法律相談、和解あっせんおよび審査を行っている機関です。組織は学識経験者や弁護士などによって運営されており、その運営費は国内外の保険会社等が拠出しています。

本部は東京で、その他、支部と相談室を含め下記の全国11箇所に拠点を構えています。

日弁連交通事故相談センターとは

日弁連交通事故相談センターとは、弁護士による交通事故の法律相談、示談あっせんおよび審査を行っている機関です。組織は弁護士によって運営されており、その運営費は、国(国土交通省)からの補助金、日弁連・弁護士会・弁護士・関係団体が拠出しています。

本部は東京で、その他、全国39支部を擁しています。

交通事故紛争処理センターと日弁連交通事故相談センターの大きな違いはなに?

詳細は後述しますが、どちらのセンターも、加害者の保険会社(共済組合)はADR手続きによる審査の結果に拘束されます。ただし、全ての保険会社(共済組合)が拘束されるわけではなく、各センターと協定を結んでいる保険会社(共済組合)のみがその対象となります。

交通事故紛争処理センターと協定を結んでいる保険会社(共済組合)一覧

  • 日本損害保険協会に加盟する保険会社
  • 外国損害保険協会に加盟する保険会社
  • 全国共済農業協同組合連合会(JA共済連)
  • 全国労働者共済生活協同組合連合会(全労済)
  • 全国トラック交通共済協同組合連合会(交協連)
  • 全国自動車共済協同組合連合会(全自共)
  • 全日本火災共済協同組合連合会(日火連)

日弁連交通事故相談センターと協定を結んでいる共済組合一覧

  • 全国共済農業協同組合連合会(JA共済連)
  • 全国労働者共済生活協同組合連合会(全労済)
  • 全国トラック交通共済協同組合連合会(交協連)
  • 全国自動車共済協同組合連合会(全自共)
  • 教職員共済生協(教職員共済生活協同組合)
  • 自治協会(全国自治協会)、町村生協(全国町村職員生活協同組合)
  • 都市生協(生活協同組合全国都市職員災害共済会)
  • 市有物件共済会(全国市有物件災害共済会)
  • 自治労共済生協(全日本自治体労働者共済生活協同組合)

ワンポイントアドバイス

交通事故紛争処理センターと日弁連交通事故相談センターでは、協定を結んでいる保険会社・共済組合の範囲が違います。ご自分の加害者の保険会社(共済組合)がどこなのかしっかり把握した上で、ADRを申し立てましょう。

交通事故を解決できる「ADR機関」のメリット・デメリット

交通事故紛争処理センターの場合

メリット①:裁判よりも早く解決できる

交通事故紛争処理センターは、裁判に比べ迅速に、交通事故の損害賠償問題を解決することができます。裁判の場合は、解決まで早くても半年から1年ほどの時間がかかりますが、交通事故紛争処理センターにおける解決までの標準的な期間は、申立てから約4ヶ月程度です。

交通事故の当事者が出向いて話し合いをする相談期日は、約1ヶ月間隔で指定されており、人身事故(怪我を伴う事故)は通常、3回の相談期日で70%以上、5回までの相談期日で90%以上の和解が成立しています。また、物損事故(怪我の伴わない物の損害だけの事故)の多くは、2回程度の相談期日で取扱いが終了しています。

メリット②:手数料無料で、手続きを申し立てることができる

裁判では、加害者への請求金額に応じた収入印紙を、裁判所に手数料として納めねばなりません。また、一定額の郵便切手も納める必要があります。しかし、交通事故紛争処理センターへの申立ては、手数料が無料です。

メリット③:裁判所基準に近い金額で賠償金を受け取ることができる

ADRを利用せず、個人で示談交渉をした場合は、加害者の任意保険会社(共済組合)の提示する低額な賠償金しか受けられませんが、交通事故紛争処理センターのADRを利用すると、任意保険会社(共済組合)の基準より高額な、裁判所基準に近い金額で、賠償金を受け取ることができます。

メリット④:非公開で解決することができる

裁判になった場合は、公開の法廷で争わねばなりませんが、交通事故紛争処理センターのADRを利用した場合は全て非公開です。また裁判では、訴訟記録が第三者に閲覧されることもありますが、交通事故紛争処理センターのADRを利用した場合、記録は全て非公開です。

メリット⑤:保険会社は裁定に拘束されるが、被害者は拘束されない

上述のとおり、和解あっせん後に審査会の審査に付した場合、加害者の保険会社(共済組合)はその裁定結果に拘束されます。一方で、申立人(被害者)は裁定結果に拘束されませんので、和解をするか否かは、申立人(被害者)の意思で決められます。

デメリット①:遅延損害金が加算されない

裁判になった場合は、遅延損害金を含めた賠償金を支払ってもらうことができますが、交通事故紛争処理センターの和解案や裁定案では、遅延損害金を含めた賠償金を支払ってもらうことはできません。遅延損害金とは一種の利息のようなもので、賠償金の支払いが遅れていることに対する損害金です。

デメリット②:怪我の治療中などの段階では、交通事故紛争処理センターを利用できない

事故直後や怪我の治療中、後遺障害等級認定の手続き中の場合は、原則的に交通事故紛争処理センターを利用することはできません。

日弁連交通事故相談センターの場合

基本的には、交通事故紛争処理センターのメリット・デメリットと一緒です。違う点としては、日弁連交通事故相談センターの場合、交通事故紛争処理センターよりも更に早く解決することが可能であるということ、怪我の治療中などの段階でもADR手続きを利用できるということが挙げられます。

ワンポイントアドバイス

交通事故紛争処理センターも日弁連交通事故相談センターも、個人での示談交渉が難航しているようでしたら、利用するメリットは多いと言えます。ただしデメリットもありますので、しっかり検討した上でADRを申し立てましょう。

交通事故被害に遭ったあとの「ADR機関」利用法

交通事故紛争処理センターの場合

電話予約をする

交通事故紛争処理センターの法律相談および和解あっせんの利用申込みをするときは、申立人(被害者)が事前予約の電話をします。交通事故紛争処理センターは、前述のとおり全国11箇所に拠点を構えていますが、基本的には申立人(被害者)の住所地または事故地を管轄する拠点での利用申込みとなります。この電話予約時に、初回に出向く相談期日が決まります。

法律相談をする

法律相談では、相談担当の弁護士が申立人(被害者)の主張を面接にて聴取し、問題点の整理や助言を行います。通常は、初回相談期日には、加害者の保険会社(共済組合)は出席せず、次回期日から出席し、和解あっせんへと進みます。

和解あっせんが行われる

和解あっせんは、申立人(被害者)が仲裁担当の弁護士に依頼し、仲裁担当の弁護士が和解あっせんを必要とした場合に、交通事故紛争処理センターから加害者の保険会社(共済組合)に来所を促し、当事者双方の出席の上で行われます。ただし、物損事故などの場合には、早期解決のため、基本的に初回相談期日から和解あっせんに入る取扱いとなっています。

和解あっせんによって当事者双方が合意した場合には、仲裁担当の弁護士の立会いのもと、示談書などを作成し和解成立となり、和解あっせんが終了します。

和解あっせんが不調の場合、審査会による審査が行われる

仲裁担当の弁護士が、和解成立の見込みなしと判断した場合には、和解あっせんが不調となった旨を、申立人(被害者)および加害者の保険会社(共済組合)に通知します。当事者双方は、通知を受けた後14日以内であれば、当該交通事故事案を審査に付することの申立てができます。ただし、加害者の保険会社(共済組合)が申し立てる場合には、申立人(被害者)の同意が必要です。

審査会によって行われる審査は、和解あっせんのように当事者双方の話し合いの場ではなく、審査会に各々の主張を伝える場です。審査会は、双方の主張を聞いた上で、当該交通事故事案を解決する裁定を下します。申立人(被害者)は裁定の結果に拘束されませんが、加害者の保険会社(共済組合)は、審査会による裁定に拘束されます。和解が成立することとなれば、その内容に基づいた示談書を作成の上で、加害者の保険会社(共済組合)が賠償金を支払います。

日弁連交通事故相談センターの場合

日弁連交通事故相談センターの利用法は、前記の交通事故紛争処理センターと類似していますので、概要だけご説明します。

まず被害者は、日弁連交通事故相談センターの最寄りの相談所に電話のうえ、弁護士による法律相談を行います。次に、示談あっせんの申込みをし、仲裁担当の弁護士のもと、申立人(被害者)と加害者の共済組合の双方が話し合いにより歩み寄り、示談あっせんとなります(平成28年度の示談あっせん成立率は83.99%です)。

示談が成立すれば示談書を作成しますが、示談が不成立の場合には、被害者が審査の申し出をし、あるいは加害者の共済組合が被害者の同意のもとで審査の申し出をして審査に付します。

審査は、専門家によって構成される審査委員会によって行われ、評決という審査結果を出します。加害者の共済組合はこの評決の結果に拘束されますが、被害者は拘束されず、評決を受け入れるのか否か自由に選ぶことができます。

ワンポイントアドバイス

審査会(審査委員会)による審査結果を受け入れるか否かは被害者の自由ですので、時間的余裕があるのであれば、和解あっせん(示談あっせん)不調後に審査を申し立てことは有効だと言えます。

交通事故で「ADR機関」を利用する場合は、弁護士に相談を!

交通事故のADRは、問題解決の有効な手段の一つ

以上見てきたとおり、ADRとは裁判外で紛争を解決する手続きのことを指し、交通事故におけるADRが可能な機関としては、交通事故紛争処理センターと日弁連交通事故相談センターの二つが主要なものとしてありました。

各センターでは、和解あっせん(示談あっせん)を行い、和解あっせん(示談あっせん)が不調に終わった場合でも、各センター内の上位機関で審査が行われ、各センターと協定を結んでいる保険会社(共済組合)はその結果を尊重せねばならず、保険会社(共済組合)は審査の結果に拘束されるということがおわかりいただけたと思います。

交通事故紛争処理センターと日弁連紛争処理センターの利用は、裁判と違って遅延損害金の支払いを認めてもらえないというデメリットもありますが、迅速な解決ができる点や、手数料無料でADRを利用できる点などメリットが多いため、問題解決の有効な手段の一つと言えます。

交通事故で「ADR機関」を利用する前に、弁護士に相談するのがオススメ!

交通事故でADR機関(交通事故紛争処理センターや日弁連交通事故相談センター)の利用を検討している場合、事前に弁護士に相談するという方法があります。なぜならば、交通事故紛争処理センターも日弁連交通事故紛争処理センターも、仲裁担当者はあくまで中立な立場で仲裁をするに過ぎず、必ずしも被害者に有利な結果になるとは限らないからです。

その点、事前に弁護士に相談していれば、交通事故のADRに臨むに当たり、何をどう主張すればよいのか、事実関係などの整理をした上で的確なアドバイスをくれます。素人では、何をどう伝えれば有利な結果に結びつくかわからないものですが、交通事故に詳しい弁護士に相談すれば、主張すべき重要なポイントを丁寧に教えてくれるのです。

また、ご自分の事案がそもそもADRに本当に馴染むのかどうかも、弁護士は一緒に検討してくれます。ADR以外に裁判という手立てもありますが、弁護士は個別の事案の背景を考慮した上で、ADRと裁判のメリット・デメリットを説明してくれます。

まずは弁護士に相談してみましょう!

交通事故に遭った場合、被害者は精神的にも肉体的にも大きなショックを受けており、百戦錬磨の保険会社(共済組合)と対峙するのは非常に辛いものです。

そこで弁護士の出番です。弁護士は、けっして敷居の高い存在ではありません。親身になって、相談者の話を聞いてくれます。被害者としての正当な権利を守るため、まずは専門家である弁護士に相談してみましょう!

交通事故に巻き込まれたら弁護士に相談を
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上記に当てはまるなら弁護士に相談