閉じる

14,348view

駐車場内での交通事故の対処法~公道ではない駐車場事故の注意ポイント

この記事で分かること

  • 駐車場内での交通事故の対処法~公道ではない駐車場事故の注意ポイント
  • 駐車場内でひき逃げをすると過失致死傷罪、危険運転致死傷罪に問われる可能があります。
  • 駐車場内の事故における過失割合の判断は難しく、不当に判断されるケースもあります。
  • 正当な過失割合の算定には証拠を集めること、弁護士に依頼することが重要です。

不特定多数の人の出入りがある駐車場での事故は、道路交通法が適用され、一般道での事故と同じ扱いになります。駐車場内で多い事故の内当て逃げは事故報告義務等違反や現場に留まる義務違反などに当たり、免停となります。駐車場内の事故における過失割合の判断は難しく、過失割合が不当に算定されることも珍しくありません。正当な過失割合の算定には証拠を集めること、弁護士に依頼することが重要です。

駐車場での事故と公道での事故の違い

ここ最近、交通事故トラブルが毎日のように各メディアで報道されています。あおり運転による悲劇は記憶に新しいでしょう。高齢者による追突事故なども頻繁に起きています。

これらの多くは一般道路上で発生した事故ですが、何も交通事故が起こるのは公道だけとは限りません。駐車場内で起きることもあるのです。駐車場内での事故は全体の3割にまで上ります。

そして駐車場での事故の場合、気を付けなければならないポイントがいくつか存在します。まずは、駐車場での事故と公道での事故の違いから見ていきましょう。

駐車場での事故と公道での事故の違いは

一般に“駐車場での事故は交通事故ではない”と言われることがありますが、駐車場での事故は公道での事故とどう違うのでしょうか。交通事故の定義を踏まえた上で見ていきましょう。

道路交通法ではその67条で「交通事故」について”車両等の交通による人の死傷若しくは物の損壊”と定義しています。

そして、この法律は“道路における危険を防止し、その他交通の安全と円滑を図り、及び道路の交通に起因する障害の防止に資すること”を目的としたものです。

つまり道交法で規定される交通事故は“道路上”で起こった事故を指すわけです。

道路交通法が適用されない場合も

ここで問題となるのが駐車場も道路に含まれるのかですが、道路の定義は「道路および隣接する土地で不特定多数の人の出入りがある場所」とされています。

従って不特定多数の人の出入りがない、月極駐車場や完全私有地の駐車場での事故は道路交通法が適用されません。

“駐車場での事故は交通事故ではない”と言われることがあるのはこうした所以からなのです。

不特定多数の人の出入りがある駐車場

逆に言えばたとえ駐車場であっても、その場所が道路の要件を満たしている場合は、基本的には道路交通法が適用されることとなります。

不特定多数の人の出入りがあるか否か

駐車場にもいろいろありますが、内、道路の要件「道路および隣接する土地で不特定多数の人の出入りがある場所」を満たしていれば、道路交通法が適用されます。

つまりポイントは“不特定多数の人の出入り“があるか否かです。従って例えばフェンスで囲まれた完全私有地の駐車場や月極駐車場では道路交通法は適用されませんが、スーパーやコンビニといった商業施設の駐車場や娯楽施設の駐車場では適用されるのです。

交通事故を起こした際に負う責任とは

では事故を起こした際に負う責任はどんなものがあるのでしょうか。基本的に事故加害者が負う責任は以下の3つです。

刑事責任

交通事故における刑事責任は「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」に基づき発生する責任です。具体的には罰金や懲役、禁錮刑などに処せられます。

行政責任

交通事故における行政処分とは、行政機関である都道府県公安委員会によって下される処分です。具体的には免許に関するもので、免停や免取があります。

民事責任

交通事故における民事責任とはすなわち損害賠償責任です。

次章から詳しく解説していきます。

ワンポイントアドバイス
不特定多数の人の出入りがある駐車場での事故は道路交通法が適用され、一般道での事故と同じ扱いになります。

駐車場内での交通事故のポイント~法的責任

つまり駐車場内での事故でも法的責任が発生するので注意が必要です。では、駐車場内での事故の罰則はどうなっているのでしょうか。駐車場で発生しがちな事故とその罰則を解説していきます。

救護義務と報告義務

事故を起こしたら、交通事故をした車両などの運転者や乗務員は、運転を停止して、負傷者を救護し、道路における危険を防止する等必要な措置を講じなければなりません。これを「救護義務」と呼びます。また救護が済んだら警察に連絡する義務「報告義務」も発生します。これらに違反した場合、重い責任を負うことになります。

当て逃げ

駐車場事故で多いのが自動車との接触事故を起こしたものの、警察にも車の所有者にも報告することなくそのまま去る、いわゆる“当て逃げ”です。当て逃げの責任は軽く見られがちですがれっきとした物損事故です。

駐車場でなぜ当て逃げは起きやすい?

駐車場での当て逃げが多い理由に、損傷の程度が小さいことが挙げられます。駐車場は到着地点あるいは出発地点です。

そのため踏み間違えの場合を除けば、接触時にスピードはさほど出ておらず、損傷も小さいことがほとんどです。

そしてそれゆえに、加害者側は接触を自覚していても、“黙っていれば被害者は気付かないのでは”との考えに至り、あわよくばなかったことにしようとその場を去る人が一定数いるわけです。

刑事責任や行政責任を負う

しかし損傷が小さくても、当て逃げはれっきとした事故です。

負傷者がいない場合単なる物損事故に分類され、正直に届け出れば加点されることもなければ罪に問われることもありません。しかし逃げたとなると話は違ってきます。当て逃げの加害者は、刑事責任や行政責任を負うことになります。具体的には次の通りです。

行政責任
  • 安全運転義務違反の2点
  • 危険防止措置義務違反の5点

が加点され一発免停となります。

刑事責任
事故報告の義務等違反  3ヶ月以下の懲役又は5万円以下の罰金
現場に留まる義務違反 5万円以下の罰金

などが科され1年以下の懲役または10万円以下の罰金刑が科される可能性があります。

ひき逃げ

駐車場内であっても事故後救護措置をせずそのまま現場から立ち去れば、ひき逃げになり、非常に重い罪に処せられます。

行政責任

ひき逃げをすると救護義務違反になり35点加点され一発免停となります。

刑事責任

負傷者が出なかった場合は

事故報告の義務等違反  3ヶ月以下の懲役又は5万円以下の罰金
現場に留まる義務違反 5万円以下の罰金

の刑罰が科されます。

そして被害者が怪我をしている場合重い罪に問われます。もちろん死亡事故ともなればより一層重罪です。

負傷者が出た場合

負傷者の救護と危険防止の措置違反  5年以下の懲役又は50万円以下の罰金
(事故が運転者によって引き起こされたものの場合10年以下の懲役または100万円以下の罰金)
過失致傷罪 30万円以下の罰金

死亡者が出た場合

危険運転致死罪 1年以上20年以下の懲役
過失致死罪 7年以下の懲役もしくは禁錮 又は100万円以下の罰金

に問われる可能性があります。

ワンポイントアドバイス
当て逃げでは事故報告義務等違反や現場に留まる義務違反などに当たり、免停となります。ひき逃げでは加えて過失致死傷罪、危険運転致死傷罪に問われる可能があります。

駐車場内での交通事故のポイント~民事責任~

次は民事責任、つまり損害賠償についてです。損害賠償に大きく関与するのが過失割合です。しかし過失割合は駐車場での事故で特に揉めがちなポイントです。

過失割合の算定要素の一つに道路標識や信号などの道路状況が挙げられますが、駐車場ではそうしたものはないためです。

駐車場での事故の過失割合は難しい

一般に交通事故では一方の過失が100%であるケースはほぼないため事故特有のさまざまな事情を勘案し、過失割合を増減する必要があります。過失割合に影響を及ぼす事情を「修正要素」と言いますが、駐車場内の事故では修正要素を証明するのが困難な場合があるのです。

修正要素の立証が難しい

過失割合はスピードや、ウィンカーの有無、携帯電話の使用といった「運転状況」信号、道路標識、車線と言った「道路状況」など複数の事情を考慮して算定されます。

けれども駐車場内には道路標識もなければ信号もありません。ですからどちらの過失が大きいのかを判断する要素が少ないのです。

駐車場内での事故は証言も集まりにくい

そして駐車場は車が入れ代わり立ち代わりする場所です。駐車することが目的なので長時間車内に滞在することもありません。事故発生時に車内に居て、更に運よく事故を目撃した人物を見つけ出し証言を得るのは、困難を極めると言う他ないわけです。

過去の判例に基づいて算定されることも多い

こうした理由から、駐車場内での事故の過失割合の算定は難しいと言えます。ただ、基準はあります。駐車場内でありがちな事故の基本の過失割合を見ていきましょう。

駐車中の車に接触した場合

この場合基本的には、接触させた側の過失が100となります。

駐車禁止の場所に停めていた車に接触した場合

この場合、停車していた側にも落ち度があるので過失相殺され、
停車していた側:接触させた側=10:90となります。

通路を進行していた車と、駐車区間から通路へ出てきた車が出会い頭で衝突した場合

通路を進行していた側:通路へ出てきた側=30:70となります。

駐車場内を逆走していた車と、正面衝突した場合

逆走車の過失割合が100となります。

2車が互いに駐車区間に入るところで接触した場合

過失割合は50:50となります。

不当に賠償金が減らされることも多い

駐車場内での事故は状況が明らかになりにくく、過失割合は実際にはそうでないのに50:50に近い値で算定されがちです。つまり不当に賠償金が減らされることも少なくないのです。

保険会社は被害者側の過失を大きく算定しようとする

そもそも保険会社は保険金を支払う側です。そのため駐車場事故に限らずほとんどの場合被害者側の過失を大きく算定しようとします。

ワンポイントアドバイス
駐車場内の事故における過失割合の判断は難しく、過失割合が不当に算定されることも珍しくありません。駐車場内での事故は状況が明らかになりにくく、示談交渉にも時間がかかります。ですからどうしても保険会社は両者の過失割合を、事実に関係なく半々に近い値で算定してしまいがちになってしまいます。つまり不当に賠償金が減らされることも少なくないのです。

駐車場での交通事故のポイント

以上のように駐車場事故では状況が明らかになりにくく、過失割合が不当に算定されることが多いのが実情です。しかしそうは言っても事故状況はすべてのケースで異なります。当然過失割合に納得いかないこともあるでしょう。

最後に駐車場事故で正当な過失割合を出してもらうための方法や、被害に遭わないためのポイントを解説します。

証拠集めが大切

前述の通り過失割合はいくつかの修正要素によって決定されます。従って正当な過失割合の算定には如何に相手方の加算要素を証明できるかがキーになります。

駐車場内のカメラ映像を確認する

近年では敷地内にカメラが設置されている駐車場も増えています。カメラが設置されていれば、管理会社に事情を説明し映像を確認させてもらいましょう。カメラの角度にもよりますが、事故の瞬間をとらえていれば有力な証拠になり得ます。

ドライブレコーダーも役に立つ

また、ドライブレコーダーも役立つケースがあります。事故の映像記録があれば有力な証拠となり得るので、ドライブレコーダーを装着し、事故に備えることが大切です。

弁護士に依頼するのが得策

こうした手段をもってしても望む賠償金を得られそうにない場合、弁護士に依頼するのが得策です。

被害者にならないための自衛策も講じるべし

もっとも、言うまでもなくそもそも事故に遭わないのが一番です。そこで最後に駐車場事故に遭わないためのポイントを紹介します。

焦らない

駐車場内で後続の車があるときなど、どうしても焦ってハンドル操作をしてしまいがちです。そして焦ると注意散漫になり、事故に繋がるわけです。駐車場内での事故も多いことを思い出し落ち着いて運転しましょう。

駐車場所に気を付ける

当て逃げに関しては、駐車場所次第で被害に遭う可能性をグンと下げられます。

壁の横、もしくは一番端に停める

まず、駐車場内の一番端や壁の横に停めることです。つまり車と車の間に停めないようにするわけです。こうすれば少なくとも片側は100%安全です。

高級車の横に停める

一般に高級車を運転している人は運転経験も豊富で、注意深い運転をします。そして何より車体に傷がつくことを恐れます。そのため駐車区画から出るときも慎重になるので、擦られる可能性が低いわけです。

ワンポイントアドバイス
正当な過失割合の算定には証拠を集めること、弁護士に依頼することが重要です。そもそも事故に遭わないように駐車位置などに気を付けることも大切です。

駐車場内での交通事故でも弁護士に依頼

駐車場内の事故で多い当て逃げは損傷も小さいことがほとんどです。そのため、つい警察への報告を怠るケースも多くまた、自力での解決を試みる人も少なくありません。しかし、駐車場内での事故状況の立証は素人だけでは困難なので弁護士に依頼するのが得策です。駐車場での物損事故で大したことがないと思っても、弁護士に依頼した方がよいケースもあるので、覚えておきましょう。

交通事故に巻き込まれたら弁護士に相談を
無料相談を活用し、十分な慰謝料獲得を
  • 保険会社が提示した慰謝料・過失割合に納得が行かない
  • 保険会社が治療打ち切りを通告してきた
  • 適正な後遺障害認定を受けたい
  • 交通事故の加害者が許せない
上記に当てはまるなら弁護士に相談