求人採用時に出した条件と実際の給料と異なっていても大丈夫?

この記事で分かること
  1. 求人広告の条件はあくまでも見込みで、最終的な労働条件は労働契約が優先される
  2. 求人採用時に出した条件と実際の給料とが異なっても労使間の合意があれば問題ない
  3. 個別の雇用契約書を交わし、証拠として保管しておくのが得策

求人採用時に出した条件はあくまでも見込みであるため、労使間の合意があれば実際の給料と異なっても問題ありません。後に揉めないように、雇用契約書を作成し労使が保管するようにするのが得策です。

求人採用時に出した給料と異なる場合

賃金未払いに違法残業、不当解雇にハラスメント。労使間のトラブルにも様々なものがありますが、入社前に提示した条件と実際の給料が異なることで揉めるケースもその一つです。では求人採用時に出した条件と実際の給料とが異なっていても問題はないのでしょうか?

求人採用時に出した条件は見込みに過ぎない

結論から言うと、求人採用時に出した条件と実際の給与が違っていても厳密には違法ではなく、労使間で合意があれば募集の内容異なる条件で労働契約を結ぶことができます。

求人広告の条件が即労働条件になるわけではない

企業がハローワークに求人票を出したり、インターネットやタウン誌等に求人を出すことは法的には「労働契約の申込みの誘引」になります。そこに掲げられた労働条件はあくまでも「見込み」に過ぎない為、求人の条件がそのまま労働条件になるわけではありません。

労使間で求人の条件を変更することの合意があれば違法ではない

採用前の面接や話し合いにおいて労使間で求人の条件を変更することについての合意が成立した場合、求人採用時に出した条件と異なる給料で労働契約を結ぶことができます。

求人詐欺にならないように注意しよう

ただし、これは結果として求人と異なる条件で合意しただけであって、端からより悪条件での雇い入れを意図して求人広告を出すのは問題があります。これは近年問題視されている「求人詐欺」にあたり、罰則も設けられているので注意が必要です。

求人詐欺にあたるケースは

実際の労働条件より好条件で募集をかけ、賃金関係・就業時間・職種や仕事の内容等において実際と違う条件を示し、騙して入社させる行為を俗に「求人詐欺」と言います。例えば求人に「給料21万円賞与あり」としておいて、実際にはこの21万円に深夜労働や休日労働等、時間外労働手当分が含んでいる場合等は求人詐欺にあたる可能性があります。

求人詐欺には罰則もある

また、職業安定法第65条8号では、虚偽の広告をする、又は虚偽の条件を提示して、職業紹介、労働者の募集もしくは労働者の供給を行った者、又はこれらに従事した者は6か月以下の懲役又は30万円以下の罰金に処すると定めています。虚偽求人を掲載した場合には罰則を科される可能性があるので注意が必要です。

ワンポイントアドバイス
求人広告の条件はあくまでも「見込み」であるため、労使間の合意があれば実際の給与と異なっても違法ではありません。しかし、初めから条件の変更ありきで募集をかけるのは求人詐欺にあたる可能性があり、罰則もあるので注意が必要です。

求人採用広告はあくまでも「基準」。給料や労働条件は労働契約で決まる

実際に、中小企業や零細企業では求人の内容と支払う給料の額が異なるケースはよくあります。しかし求人広告の条件はあくまでも「基準」であり、実際の給料やその他の勤務内容は労働契約の内容で決定されるのです。

実際の給料は労働契約の内容が優先される

求人広告はあくまでも従業員を募集するためのものです。そこに掲載した条件が実際の労働条件になるわけではなく、入社後の給料や業務内容福利厚生等は労働契約の内容が最優先されます。

労使間の契約内容が最優先される

そもそも給料や業務内容は採用プロセスの中で面接や職務経歴書等を通して候補者のスキルやキャリア等を査定し総合し、最終的に労使間での合意に基づき労働契約を締結し決定するものです。そしてその契約内容が求人の条件と異なることは十分考えられ、その場合、労働契約が優先されます。

判例でも求人の金額を優先

昭和53年に起きた「八洲測量事件」の判例でも求人広告の条件より労使間の労働契約が優先されるとの判決を示しています。事件は求人票の給与条件と、入社時の決定賃金額が異なったケースで、東京高裁は「求人広告に記載された基本給額は見込額であり、最低額の支給を保障したわけではなく、将来入社時までに確定されることが予定された目標としての金額である。」とし、入社時の賃金額が有効であり、採用内定時の賃金額求人票記載の賃金額に法的拘束を認めないとする判決を下しました。

ワンポイントアドバイス
求人広告の条件はあくまでも基準であり、実際の給料やその他の労働条件は採用プロセスの中で面接や職務経歴書等を通して候補者のスキルやキャリア等を査定し、最終的に労使の合意の下締結した労働契約によって決定します。

採用時の条件と実際の給料が異なることで起こるトラブルを回避

そうは言っても候補者は求人広告に掲載された条件をみてそのつもりで応募してきています。実際、募集条件と労働条件が違いトラブルになるケースは非常に多くありまう。そこで労働者に訴訟を起こされ敗訴したケースとトラブルを回避するために企業が押さえておきたいポイントを紹介します。

労働契約を個別に締結していなければ、求人広告の条件が雇用条件になることも

過去に求人広告の条件が雇用条件になると認定されたケースもあります。同様の状況に陥らないように、企業は何に気をつけるべきなのでしょうか。

求人広告の内容を雇用契約とする判決

平成10年に起きた「丸一商店事件」は求人票に退職金があると記載されていたのにもかかわらず、社員が退職しようとしたとき、退職金は支払えないと告げられ、会社を訴えたものです。判決は「求人票は、求人者が労働条件を明示したうえで求職者の雇用契約締結の申込みを誘引するもので、求職者は、当然に求人票記載の労働条件が雇用契約の内容になることを前提に雇用契約締結の申込みをするのであるから、求人票記載の労働条件は、特段の事情がない限り、雇用契約の内容になるものと解すべきである」とし、求人広告の内容通り、退職金を支払うよう命じました。

労使間で雇用契約の内容について個別の合意が重要

このケースでのポイントは「特段の事情」即ち労使間において、雇用契約締結に際し、求人広告の内容とは異なることについての合意があったか否かです。つまり、求人広告は確かに誘引に過ぎないものの、そこに掲載した条件と異なる雇用条件になるならば、労働者の合意を得る必要があるのです。

労働条件に関するトラブルを回避する

企業側にとって、多くの候補者を集めるために少しでも魅力的な条件で募集するのは無理もないことです。また候補者の適正性や能力次第で業務内容が変わりそれに伴い給料条件を変更せざる得ないケースもあるでしょう。しかし同時に労働者側の事情も考えなければならないのも事実です。では労働条件の変更によるトラブルを回避するために、企業側はどの様なことに気を付ければよいのでしょうか。

労働条件通知書を交付するだけでなく雇用契約書で「合意」を交わす

そもそも使用者は賃金や業務内容、福利厚生や休憩休日に関する事項と言った所定の労働条件を記載した「労働条件通知書」を候補者に対して書面やメール等で交付することが法的に義務付けられています(職業安定法第5条の3、同法施行規則第4条の2)。しかしこの内容が曖昧・不明確なため後々の労使間トラブルの発生原因になることが多々あります。それを防ぐためにも使用者からの一方的な労働条件通知書だけでなく、「労使間の合意」の証明となる「雇用契約書」も交わしておくべきと言えます。契約内容の合意は口頭でも有効ですが、書面にしておくことを強く勧めます。

面倒でも雇用契約書を2つ作成する

労働条件通知書と違い、雇用契約書の作成は義務付けられておらず、交わさなくても罰則はありません。従って法律上では所定の労働条件を記載した書面を労働者に渡すことで事足ります。しかし後で労働者に「見ていない」、「知らなかった」と主張されないように、面倒でも同じ内容の書面を雇用契約書として2通作成し、労働者本人にも署名捺印させて労使双方で各々1通ずつ保管するやり方で進めると、トラブルを回避することができます。

ワンポイントアドバイス
求人広告に出した条件と実際の給料と異なる場合は、その旨を雇用契約において合意し、労使が共に所有しておくことが大切です。

採用時に提示した給料をめぐってトラブルになったら、弁護士に相談

求人広告に給料の額や労働時間が記載されていても、それが直ちに契約後の労働条件となるものではなく、採用時に交わす労働契約の内容がその後の労働条件となります。労働条件が求人採用時に出した条件と異なる場合は特に慎重に、労使間で雇用契約書を交わし合意をとることが重要です。

お金の問題はシビアなので、給料の問題で揉めると、訴訟を起こされる可能性は高くなります。自社のやっていることが法に触れないかどうか判断が難しい場合は、労働問題に強い弁護士に相談しましょう。

企業の法的対応は弁護士に相談を
法的リスクを低減し、安定したビジネス運用を実現
ライバル企業や顧客から訴訟を起こされた
取引の中で法令違反が発覚した
契約書作成時の法務チェック
ネット上での風評被害・誹謗中傷
M&A・事業展開・リストラ時の法的リスクの確認
上記に当てはまるなら弁護士に相談