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企業活動と著作権~著作権侵害・防衛のための基礎知識

この記事で分かること

  • 著作権は、創作者の権利を保護する知的財産権のひとつ
  • 著作権は、著作物の作成とともに自動的に発生する
  • 日本での著作物でも、申請することなく海外で著作権を主張できる

著作権という言葉自体はよく聞きますが、知的財産権との違いや、その性質、著作権が適応されない例外的な状況などは知らないかもしれません。海外の状況も踏まえ、著作権についての基礎的な知識について見ていきましょう。

著作権の基礎知識

インターネットで誰でも情報を発信できる社会になったことで、「著作権」という言葉がより身近なものになりました。著作権とは、一口に言えば知的財産権の一つということになります。そこでまずは、知的財産権とは何かというところから見ていきましょう。

知的財産権とは?

もし、自分が長時間の苦労の末に発明したものを、何もしていなかった他人が勝手に使用して商品化したらどうなるでしょうか。結局のところ自分で苦労するよりも、盗んだ方がよいということになるかもしれません。そうなってしまっては、誰も創造的な仕事をする人がいなくなってしまいます。知的財産権とは、発明者や創作者を保護する役割をもっています。

知的財産権の種類

発明や創作等の、知的創造活動によって生み出されたものを、知的財産と言います。知的財産権が重要視されるのは、この知的財産こそが国家の繁栄や企業・個人の成長を下支えするものだと考えられているからです。この知的財産権の基礎的な考えは上で述べた通りですが、目的や性質などによって、大きく二つに分類することができます。

創作意欲を保護するもの

産業の発展に関するもの

例 特許権、意匠権、実用新案権

文化の発展に関するもの

例 著作権

信用を保護するもの

例 商標権、商品等表示

著作権について

著作権とは、いわば文化の発展に関する知的創作物(著作物)を保護するものということになります。著作物と判断されるためには、創造性があるかということが条件となりますので、メールの文章や鼻歌、子供の落書きまでも著作物となる可能性があります。日本では著作物が生み出されると同時に著作権が発生しますが、ただ事実を羅列した文章などは、創造性があるとは認められず、著作物に含まれません。

著作権にはどのような意味があるか?

著作権は原則として創作者に帰属しますが、契約等によっては管理会社や組織が有する場合があります。著作権をもつということは、対象となる著作物を自由に使用する権利をもっているということになりますが、反対に著作権をもたない人の使用を制限することにもなります。著作物は「物」ではないため、不特定多数の人が同時に使用することができますが、著作権法によって守られていることで、その使用を制限することができるのです。

著作権の内容

著作権によって保護される権利には、主として著作者人格権にかかわるものと財産権にかかわるものの二つの種類があります。著作人格権とは、公表の有無を決定する「公表権」や、氏名の記載の有無を決める「氏名表示権」、内容を勝手に変更されないことが保証される「同一性保持権」のことを意味しています。これに対し財産権は、複製や翻訳、二次利用など、主として金銭的な利害に関係する権利のことです。これらの使用を制限することで、著作権は法的に創作者を保護していると言うことができます。また、著作権と類似したものに著作隣接権があります。

著作隣接権

世の中には、創作者ではなくても、その伝達に重要な役割を果たしている方がいます。たとえば、クラシック音楽の演奏者やレコード製作者、著作物や創作者に関してまとめられたドキュメンタリーの放送事業者などがこれに当たります。通常著作隣接権の対象は、演奏家や俳優などの「実演家」、「レコード製作者」、「放送事業者」、「有線放送事業者」にまとめられます。保護される権利の種類は、上記とまったく同じではありませんが、損害からの保護を目的としていることは共通しています。

ワンポイントアドバイス
上記の著作者人格権も、財産権も、著作物を作成すると同時に著作者が有するものになります。ネット社会では、情報の発信も簡単ですが、著作権の侵害も簡単に起きてしまいます。もし自分の創作物が侵害されている可能性がある場合は、認知度が高まる前に、早めに弁護士に相談することをおすすめします。

著作権侵害について

インターネットの普及によって、著作権侵害がされやすくなったと同時に、発見もまた容易になりました。著作権が侵害されたと判断されるのは、基本的に上記の権利を侵害した場合になります。たとえば、勝手に公表したり、複製したり、改変した場合に著作権侵害に当たります。しかし、いくつか例外があります。

著作物を自由に使用できる場合

基本的にすべての著作物には著作権が発生しています。しかし、著作権法では、一定の条件を満たす場合は、著作物を自由に使用することを認めています。ここではその主要な条件を見ていきましょう。

著作権の保護期間切れ

著作権の保護期間は、原則著作者の死後50年になります。無名の場合や団体名義の著作物の場合は公表後50年となっていますが、映画は公表後70年となっております。ただし、これは世界共通ではありません。たとえばアメリカやEU加盟国では原則死後70年が保護期間となっており、メキシコだと100年となっています。海外のものを使用するときは、該当国の保護期間を調べる必要があります。所謂著作権切れの場合は、すでに公共物となっており、誰でも使用することができます。

私的利用の場合

基本的に、個人や家族の範囲内で利用する場合には、自由に複製することができます。ただしこれには例外もあり、プロテクションがかかったDVD等を複製する場合は、著作権者の承諾が必要になります。またインターネットで公開する場合は、個人的なものだとは言えない場合が多いので注意が必要です。

教育の現場で利用する場合

学校等の教育の現場においては、利害関係が生じない限り、自由に複製することができます。文章の引用も、引用のルールに従って行えば問題がありません。しかし、学校の場合は、著作権者に補償金を支払う場合も多いです。利益を上げることを目的とした教育・教室の現場では、著作権料の支払いが必要となることがあります。著作権は、創作者の利益の保護を目的としているためです。

ネット上の「公開可能化された著作物」の収集

インターネットで情報を収集する行為は、ある意味複製に当たります。データとして保存することが、複製になるからです。しかし、この行為が制限されると、インターネットの発展自体が妨げられてしまいます。そのため、「公開可能化された著作物」に限り、これらの行為は許されています。

ワンポイントアドバイス
インターネット上では、フリー素材の画像など、比較的自由に使用できるものが増えています。しかし、これらの場合でも、利益の生じる場合などは、利用規約によって使用が制限されていることが多いです。ネット上の著作物に関しては、利用規約等をよみ、細心の注意が必要です。もし自分の作成したフリー素材が、利用規約に設けた制限を超えて使用されている場合は、すみやかに弁護士に相談することをおすすめします。

国家間の著作権~外国での著作権は?~

日本では、著作権に関して特別な申請が必要ありません。著作物が作成されれば、そこに自動的に著作権が付与されます。しかし現在は、インターネットの発達によって、日本での著作物が外国でもすぐ手に入る時代になっています。日本で作成された著作物の著作権は、海外ではどのような扱いになるのでしょうか。

無方式主義と方式主義

日本のような、著作物が作成されたと同時に著作権が発する制度のあり方を「無方式主義」と言います。しかし、世界中でこの方式がとられているわけではありません。なかには登録しないと著作権が認められない「方式主義」をとっているところがあります。かつてアメリカが方式主義をとっていたことを知っている方もいるでしょう。著作権に関しては、原則的にその国の法律に従わなければなりません。方式主義をとっている国で、日本の著作物の著作権が保護されるためにはどうすればよいでしょうか。

©マークについて

「©」というマークを目にしたことがあるかもしれません。©マークは、無方式主義をとっている日本国内ではほとんど意味をもちませんが、万国著作権条約で定められたマークで、方式主義の国でも著作権を主張するために表示するマークです。方式主義の国家でも著作権を主張するためには、この©マークを取得する必要があります。とはいえ、現在では多くの国が何らかの条約に加わっていますので、この©マークが必要になる国も少なくなっています。

海外での著作権

©マークが大きな意味をもっていたのは、アメリカが無方式主義をとる「ベルヌ条約」に加盟する1989年までのことだと考えられています。現在、この「ベルヌ条約」、「万国著作権条約」、「著作隣接権条約」などが多くの国家同士で結ばれており、ほとんどの国において©マークは必要ありません。そういった国では、日本での著作権の状態と同様に、作成したら自動的に著作権が主張できることになっています。海外の著作物を使用する場合も、同様です。一部エチオピアやイランなどとは条約関係がないため、原則的にこれらの国の著作物を保護する必要はありませんが、海外で申請していたりすると保護の対象になりますので、扱いに注意が必要です。

ワンポイントアドバイス
著作権侵害を防衛するためには、基礎的な知識をおさえ、権利者が誰かを考える必要があります。たとえば、自分の著作物・創作物でも、著作権が法人に譲渡されている場合は、無断で使用することができません。侵害を防ぐ積極的な方策をとることは難しいですが、利用規約や契約書等に著作権者を明記し、侵害した場合に訴える用意があることを記すことは有効です。必要であれば、外国語で記載する必要があるでしょう。著作権に関する項目を利用規約や契約書に記載する際には、弁護士に相談すると後のトラブルを予防することができます。

著作権上のトラブルは弁護士に相談

現代では、IT技術の発達とともに、知的財産こそが企業活動の利益の源であり、その活用が経営のカギとなっています。著作権侵害をしないようにすることにも、侵害を防衛することにも、著作権のポイントを知識としておさえておくことが重要になります。もしそれでも問題が起こってしまった場合は、弁護士に相談するとよいでしょう。インターネットの世界では、国家をまたぐために解決が難しい案件も多いですが、様々な条約によって著作権が保護されているため、専門の弁護士が解決してくれることも多いようです。

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