恐喝で逮捕されるケースとは?~知らないだけで犯罪かも?⑫

この記事で分かること
  1. 恐喝とは、相手を脅迫して畏怖させて財物を交付させることです。
  2. 脅迫して物を奪った場合は、強盗罪が成立することがあります。
  3. 脅迫罪と恐喝罪は非親告罪です。

恐喝罪とは、人を脅して財物や財産上の利益を交付させる罪です。また、脅すでも、社会通念上一般に被害者の反抗を抑圧するに「至らない程度」であり、「至る程度」になると強盗罪になります。恐喝したものの、財物を得られなかった場合は恐喝未遂になります。

恐喝罪とはどのような犯罪か

恐喝罪とは、人を脅して財物もしくは財産上の利益を交付させる罪です。つまり、人を脅して財産を奪う「カツアゲ」と呼ばれるもので、わたしたちの身近で起きやすい犯罪の一つです。その程度は「社会通念上一般に被害者の反抗を抑圧するに至らない程度」(最判昭和24年2月8日)とされています。

恐喝罪は暴行・脅迫を用いる点で強盗に近く、財物を交付させる点で詐欺と似たような部分があります。

恐喝罪の構成要件と法定刑

恐喝罪が成立するのは、①人を恐喝して、②財物を交付させた、もしくは②財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させたという実行行為が必要になります。
さらに、恐喝罪の結果があり、恐喝罪の実行行為と結果との間に因果関係が認められ、恐喝罪の故意が認められるかも、恐喝罪が成立する上で重要になってきます。

法定刑は詐欺罪と同じ10年以下の懲役です。交付とは、財産を被害者から奪い取ったのではなく、脅したり、だましたり被害者自らが、財産をいわば差し出したようなかたちになることをいいます。

恐喝罪が成立するには

恐喝罪が成立するためにはどの程度の恐喝の程度が必要なのでしょうか、あるいは交付行為が必要なのでしょうか。

恐喝罪で財物を得るには段階があります。

  1. 被害者を畏怖させる、つまり怖がらせるような強迫や暴行を加えて財物を交付させようとする。
  2. 恐喝行為によって、被害者が畏怖する。
  3. 被害者が自ら財物を交付する。つまり、処分する。
  4. 被害者の財物が加害者に移転する。
  5. 財物が移転して被害者に損害が発生する。

恐喝行為の程度

前述した通り、恐喝罪の暴行の程度は「社会通念上一般に被害者の反抗を抑圧するに至らない程度」とされています。「人の反抗を抑圧するか、著しく困難にするに足りる程度」の暴行は強盗罪で要求されるものです。脅迫も同様で、「相手方を畏怖させるような害悪の告知」があれば成立します。相手の反抗を抑圧する程度の脅迫は強盗罪の手段となります。

恐喝と強盗の境界線

反抗を抑圧するかしないか、つまり恐喝と強盗の境界は、暴行・脅迫の態様だけではなく、総合的な判断によります。場所や時刻、周囲の状況、相手方の性別、年齢、体格等を含めての判断です。夜間にブリキ製のピストルを突きつけて脅迫した事案では強盗罪の成立を認めています(最判昭和23年6月22日)。つまり、その行為が被害者の反抗を抑圧するに足りるという判断がされているわけです。このブリキのピストルに殺傷能力があるのか分かりませんが、夜間にピストル(に見える物)を突きつけられ脅迫された当該事案では、客観的に見れば「殺されると考えると逆らえない」と言えるような行為と判断したということでしょう。

恐喝が既遂に達する時

恐喝は、財物を交付させようという意思をもって恐喝行為を開始した時点からはじまります。 恐喝罪が既遂になるのは、恐喝行為によって相手がおそれて、財物を行為者(あるいは第三者)に渡した時点です。相手が「畏怖すること」も大事な条件です。これが畏怖せずに憐れみの気持ちで財物を手渡したとしたら、それは「恐喝未遂罪」になります。

動産であれば、相手方の占有を排除して、財物を自分の支配内に置くことが必要です。例えば相手から手渡された財布を、自分のポケットに入れたといった状況であれば、通常はその時点で自分の支配内に入れたと判断されることになります。

不動産の場合

恐喝罪の財物には不動産も含まれます。不動産を喝取の場合は、登記又は引き渡しの手続きの完了をもって既遂となるとされています。不動産の所有権において登記は対抗要件でしかありませんが、登記の移転によって恐喝者による不動産に対する法律的支配が及び、占有が移転したと考えるわけです。通常の場合、所有権移転の意思表示をさせただけでは、既遂とはならないと考えられています。

ワンポイントアドバイス
恐喝罪における「交付」は詐欺罪の「交付」よりはゆるく解釈されています。恐喝の結果、被害者が自ら交付した場合はもちろん、黙示の交付行為でも恐喝罪が成立するとされています。

どんな時に恐喝は成立するのか

なかなか借金を返さない相手を怒鳴りつけて返済させるということは、よくある話ではあります。そのような場合、恐喝罪は成立するのでしょうか。恐喝罪成立における論点を紹介します。

権利行使と恐喝

権利行使とは、冒頭に掲げたような債権者が債務者に弁済を求める行為等を指します。

たとえば、駅の駐輪場から盗まれた自転車を、他人が利用しているのを見つけ、返還のために恐喝的手段を用いた場合に恐喝罪が成立するかという問題があります。恐喝罪は通常、財産の占有を保護するものと考えられます。そのため、その時点で自転車を占有している者の占有は保護されますから、恐喝罪が成立すると考えるのが普通です。ただし、この場合、恐喝罪の構成要件に該当するとしても、自分の自転車を取り戻そうとした自救行為になり、犯罪にはならない可能性があります。

正当な債権の弁済

債権の取り立ての場合、債務者は弁済しても損害は発生しないように思えます。しかし恐喝罪は個別の財産に対する犯罪ですから、恐喝がなかったら交付しなかったと言える以上、交付そのものが被害者(債務者)にとっては損害と言えます。
そして債権を取り立てる方法が社会通念上、一般に忍容できる程度以上であった場合は、恐喝罪が成立するとされています。

債権取り立てに関する判例の変遷

債権の取り立てに関する判例には、揺れがあります。戦前は債権の取り立てにおいて恐喝罪は成立しないとしていました。しかし、現在は、次の判例がベースになっています。

「他人に対して権利を有する者が、その権利を実行することは、その権利の範囲内であり且つその方法が社会通念上一般に忍容すべきものと認められる程度を超えない限り、何ら違法の問題を生じないけれども、右の範囲程度を逸脱するときは違法となり、恐喝罪の成立することがある」(最判昭和30年10月14日)。

不法原因給付と恐喝

不法原因給付(民法708条)と恐喝という問題もあります。

不法原因給付は「不法な原因のために給付した者は、その給付したものの返還を請求することができない」と規定されています。

難しいので、分かりやすく説明しましょう。たとえば、XがYに「悪徳会社の社長のAを殺してくれ」と頼み、代金前払いで500万円を渡したとします。しかし、Xの気が変わり「やっぱり殺人は悪いことだから、やめた。殺人契約は公序良俗に反して無効(民法90条)だから500万円返してくれ」と言ったとしても、その請求は認められません。つまり、500万円の給付が不法な原因(殺人の依頼)のため、民法708条で給付物の返還が求められないというものです。

相手が畏怖しなかったら

恐喝罪の成立には恐喝行為により、相手が畏怖し、財物を交付させるという行為が要求されます。
また、暴行の程度については、客観的に見て相手の反抗を抑圧するに至らない程度であることが求められています。では、もし、客観的に見て反抗を抑圧するに至らない程度の暴行・脅迫でも、「被害者が極度に臆病であったために」反抗を抑圧された場合はどうなるのでしょうか。

通常は客観的に行為を判断すべきですから、恐喝罪にとどまるとするべきでしょう。臆病であることを知り、それを知って客観的に反抗を抑圧するに至らない程度の暴行・脅迫に留めて反抗を抑圧させたという事情があれば、そうした行為は「反抗を抑圧するに足りる暴行・脅迫」になるかもしれません。

憐れみの心で交付なら恐喝未遂

相手が豪胆な人物で全く畏怖しない状況でしたが、憐れみの心から財物を交付した場合は、恐喝未遂となります。これは恐喝によって財物を交付したのではない、つまり因果関係がそこで切れているわけです。恐喝行為をしたが、それによる交付は得られなかったということで未遂罪にとどまります。

ワンポイントアドバイス
恐喝したものの、結果財物が奪えず未遂で終わることがあります。しかし、たとえ未遂でってあっても、刑法では未遂罪として罰することを規定しています。(刑法250条)

恐喝罪と他罪との関係

恐喝罪は他罪との関係が比較的生じやすい犯罪と言えます。その場合の処理を見ていきましょう。

恐喝罪と詐欺罪

恐喝と詐欺は同じ交付罪ということで、接点は多いと言えます。欺罔と恐喝の双方の手段を使い、相手が錯誤し、かつ、畏怖して財物を交付した場合は観念的競合(54条1項前段)です(大判昭和5年5月17日)。観念的競合とは1つの行為が2つ以上の罪名に触れることで、最も重い刑で処断されます。詐欺罪と恐喝罪の法定刑はともに懲役10年以下ですから、懲役10年以下の処断となります。また、脅迫のために欺く行為がされ、財物を交付する時は畏怖に基づくものであった場合には恐喝罪のみが成立するというのが判例(最判昭和24年2月8日)です。

恐喝と傷害は観念的競合

恐喝罪の手段である暴行・脅迫は恐喝罪に吸収されます。暴行によって傷害が生じた場合は傷害罪(204条)が成立し、恐喝罪との観念的競合となります。傷害罪は懲役15年以下ですから、最高で懲役15年の可能性があります。

恐喝と監禁は併合罪

恐喝の目的で監禁した場合は併合罪(45条)となります。この場合はもっとも重い罪について定めた刑の長期に、その2分の1を加えたものを長期とします(47条)。監禁罪は7年以下の懲役ですから、恐喝罪の長期10年にその半分の5年を加えた15年の懲役が上限となります。

恐喝と賄賂収受

贈収賄と恐喝も競合する場合があります。

贈収賄と恐喝の観念的競合

恐喝を手段として賄賂を収受した場合は、恐喝罪と収賄罪の観念的競合で、贈賄罪も成立しうるとした判例(大判昭和10年12月21日)があります。下級審でも海上保安官が漁業規則違反操業をしていた者に賄賂を持ってくるように要求し、実際に収受した事例で恐喝罪と収賄罪の観念的競合としています(福岡高判昭和44年12月18日)。

ワンポイントアドバイス
公務員が職務執行の意思がなく、単に職務執行に名を借りて恐喝した場合には恐喝罪のみが成立します(最判昭和25年4月6日)。事案は警察官によるもので、戦後の混乱期に闇取引をしている嫌疑のある人物に検挙するかのような態度を示して相手を畏怖させて、現金を交付させたというものでした。

恐喝罪で逮捕されたら弁護士に相談

恐喝罪で逮捕されたら、まずはきちんと反省し、被害者に謝罪し示談をすることが大切です。示談に被害者がすぐに応じてくれるのは難しいものですが、弁護士が交渉をすることで、示談成立の可能性があります。示談金を支払うことと、再び被害者に接触しない約束をすることで示談がまとまることが多くなります。早めに対応するためにも刑事事件に強い弁護士に相談することをおすすめします。

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