知らないだけでも犯罪かも?②〜盗撮やのぞきで逮捕されるケースとは?〜

この記事で分かること
  1. のぞきや盗撮は、各都道府県の迷惑防止条例に違反する。
  2. のぞきや盗撮が行われた場所が公共の場でない場合、軽犯罪法で罰せられる。
  3. 個人宅に立ち入れば、住居侵入罪にあたることもある。

のぞきや盗撮は各都道府県の迷惑防止条例違反になります。比較的軽い犯罪なので、すぐに釈放される微罪処分になることも多いのですが、再犯や反省の様子がうかがえなければ勾留が続くこともあります。示談も可能なので、できるだけ早めに弁護士に相談することがすすめられます。

盗撮とのぞきを取り締まる法律

女子更衣室や女風呂をのぞいた、電車の中でスカートの中をカメラで盗撮した…などして逮捕された人の話はときどきニュースでも目にします。のぞきや盗撮は言うまでもなく犯罪です。これらは、どのような法律で取り締まられているのでしょうか。

盗撮やのぞきで罰せられる迷惑防止条例

盗撮・のぞきとも、各都道府県の迷惑防止条例に違反します。東京都であれば「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例」(以下、東京都迷惑防止条例)がそれに該当します。

「公衆便所、公衆浴場、公衆が使用することができる更衣室その他公衆が通常衣服の全部若しくは一部を着けない状態でいる場所又は公共の場所若しくは公共の乗物において、人の通常衣服で隠されている下着又は身体を、写真機その他の機器を用いて撮影し、又は撮影する目的で写真機その他の機器を差し向け、若しくは設置すること」(同条例5条1項2号)が禁じられ、違反者は1年以下の懲役、100万円以下の罰金が科されます(同条例8条2項)。なお、常習者は2年以下の懲役又は100万円以下の罰金になります(同7項)。

東京都迷惑防止条例にはのぞきについての規定は見当たりません。仮に公共の場で、たとえば公衆便所の女子トイレの個室をのぞいた場合、「人に対し、公共の場所又は公共の乗物において、卑わいな言動をすること」(同条例5条1項3号)に違反するでしょう。罰則は6月以下の懲役又は50万円以下の罰金です(同8条1項2号)。

盗撮に関する軽犯罪法の規定

東京都迷惑防止条例は、公共の場での盗撮を罰する規定です。個人宅は公共の場ではありませんから、個人宅での盗撮は適用されません。個人宅での盗撮の場合は軽犯罪法が適用されるのが普通です。

軽犯罪法には盗撮そのものを処罰する規定はありません。しかし「正当な理由がなくて人の住居、浴場、更衣場、便所その他人が通常衣服をつけないでいるような場所をひそかにのぞき見た者」(1条23号)は拘留又は科料に処するとしています(同1条柱書き)。個人宅の中を盗撮ということであれば、軽犯罪法の、のぞき見で処罰されることになるでしょう。

軽犯罪法の刑事罰は拘留と科料です。
拘留とは1日以上30日未満の身柄の拘束、科料は千円以上1万円未満です。

住居侵入等罪・法定刑

個人宅をのぞいた場合、通常、住居侵入罪(刑法130条)も成立し、3年以下の懲役又は10万円以下の罰金になります。例えば、盗撮目的で他人の住居に立ち入り、入浴しているところを盗撮すれば、住居侵入罪と軽犯罪法違反の牽連犯(けんれんはん)(犯罪の手段や行為が別の罪名に触れること)となり、重い方の住居侵入罪の懲役3年以下又は10万円以下の罰金に処せられます。

ワンポイントアドバイス
のぞきに関する軽犯罪法は、盗撮に関するものと同様です。
東京都迷惑防止条例は、公共の場でののぞきを罰する規定なので、個人宅でののぞきの場合は、通常軽犯罪法が適用されます。

盗撮とのぞきは迷惑防止条例か軽犯罪法か

では、盗撮やのぞきを行なった場合、どちらの法令が適用されるのでしょうか。

仮に盗撮で逮捕された場合、東京都迷惑防止条例と軽犯罪法の適用については、どこで盗撮やのぞきを行なったかによって区別されることになります。

条文にあるように、以下の場所であれば、東京都迷惑防止条例が適用されるでしょう。逆にそのような場ではない時は、場所について限定がない軽犯罪法が適用されることになるでしょう。

  • 公衆便所、公衆浴場、公衆が使用することができる更衣室
  • その他公衆が通常衣服の全部若しくは一部を着けない状態でいる場所
  • 公共の場所若しくは公共の乗物

児童ポルノ製造だと一気に罪は重く

盗撮の場合、児童(18歳未満)の場合には「児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律」(以下、児ポ法)に抵触する可能性があります。児童ポルノ製造罪で3年以下の懲役又は300万円以下の罰金に処せられます。

ワンポイントアドバイス
個人宅や公共の場でののぞきの多くは現行犯逮捕です。逮捕されてもすぐに釈放される微罪処分になることがありますが、その場合でも身元引受人が必要なるので、少なくとも1人にはのぞきや盗撮した事実が知られることになります。

これものぞき、盗撮にあたる

盗撮被害が大きな社会問題になる中、その基準も厳しくなる傾向があります。「このような場合でも検挙されるの?」という事態も起きています。

服の上から撮影しても盗撮

洋服の上から撮影しても盗撮として処罰を受けた事例があります。

平成18年7月、北海道旭川市で起きた事件です。ショッピングセンターで27歳の女性を見かけた被告人が、およそ5分間、40mにわたり、背後1〜3mの位置でデジタルカメラ機能付きの携帯電話で細身のズボンを着用した女性の腰部付近を11回撮影したというものです。盗撮とはいえ、周囲から見ることができるズボンの上からの撮影ですから、果たして犯罪と言えるのかということが問題となりました。一審で無罪判決が出ましたが二審で逆転有罪となり、最高裁は上告を棄却しました。

「被害者の着用したズボンの上からされたものであったとしても、社会通念上、性的道義観念に反する下品でみだらな動作であることは明らかであり、これを知ったときに被害者を著しく羞恥させ、被害者に不安を覚えさせるものといえるから」(最決平成20年11月10日)と判決の理由を説明しています。

以後、服の上からでも盗撮で逮捕相次ぐ

上記の判決があったせいか、その後も洋服の上からの盗撮でも有罪とされる例が出ています。メディアで報じられたところでは2014年10月26日、静岡県御殿場市のショッピングモールで細身のズボンをはいた女性の腰のあたりを数十秒にわたって動画撮影した男が、静岡県迷惑防止条例違反で現行犯逮捕されました。2015年8月には電車内で隣に座った女子大生の全身を撮影したとして川崎市の職員が逮捕されています。

靴に小型カメラなどを仕込んだ盗撮

盗撮では手の込んだ手口で撮影するものもあります。

靴の中に小型カメラを仕込み、女性の背後から迫ってスカート内を盗撮する手口では数多くの摘発例があります。また、バッグにカメラを仕込み、書店などで床に置いて短いスカートの中を撮影するなどの方法での盗撮も摘発もされています。

盗撮専門シューズ販売の社長らを摘発

このようなハイテク技術の盗撮の場合、なかなか見抜くことができないのが現状です。このような盗撮を幇助するものとして、小型カメラが仕込まれたシューズを販売した会社社長らが2014年に京都府迷惑防止条例違反のほう助罪で逮捕されました。「盗撮禁止!」と宣伝文句にはありましたが、サンプル動画では女性のスカートの中が撮影されており、盗撮目的で使われることを認識して販売していたと思われます。報道では2500足ほど売れたとされています。犯罪の助長につながり、売り手もそれを認識していたのですから、検挙も当然と言っていいでしょう。

ワンポイントアドバイス
防犯カメラでの撮影は盗撮にあたりません。また、モラハラや浮気の証拠をとるための隠しカメラはやむを得ない事情があるかもしれませんが、場合によっては、盗撮にあたる可能性もあるので注意が必要です。スカートの中や更衣室の中など、隠しているものを許可なく撮影すると犯罪になります。

盗撮やのぞきで逮捕された後の流れ

盗撮やのぞきは比較的軽微な犯罪です。ほんの出来心でやってしまったことであれば、真摯に反省して、前科をつけないためにも不起訴や微罪処分などで済ませたいと考えるのが普通でしょう。

盗撮やのぞきは略式手続きが多い

盗撮やのぞきの場合、軽微な犯罪のため略式手続きがとられることが多くなっています。

略式手続きとは、簡易裁判所が非公開で罰金などを科す手続きです。
検察官は控訴提起と同時に被疑者の同意を得た上で簡裁に略式手続きの請求をします。それによって、簡易裁判所は公判手続によらずに書面審理だけで刑罰を言い渡します(461条以下)。100万円以下の罰金又は科料を科すことができます。検察官が「懲役刑が適当」と思えば地裁へ起訴することになるでしょう。

略式手続きの流れ

検察官による略式命令の請求は公訴の提起と同時に書面でしなければなりません(462条1項)。被疑者に対して略式手続によることに異議がないか確認が必要で(461条の2第1項)、被疑者は異議がない時は書面でその旨を明らかにしなければなりません(同2項)。略式命令は請求があった日から14日以内にしなければならないとされており(刑事訴訟規則290条1項)、迅速な処理が期待できます。

通常審判への移行、不服の申立て

略式命令の請求があっても、すべて認められるとは限りません。請求を受けた簡裁は、不適法、不相当である場合には通常の審判を行わなければなりません(463条1項)。また略式命令を受けた場合でも、命令を受けた者又は検察官は14日以内に正式裁判の請求ができます(465条1項)。前述の北海道旭川市のズボンの上からの盗撮事件では、簡裁は略式命令を不相当として、公判手続きに移行させた上で、無罪判決を出しています(旭川簡判平成19年3月9日)。

被害者との示談が大事

盗撮やのぞきで不起訴になるためには、被害者との示談が重要です。起訴するか否かは検察官の裁量によりますが、被害者感情はその判断に大きな影響を与えます。

示談は被害者に謝罪し、その損害を賠償し、宥恕を得るものです。刑事裁判は国家刑罰権を実現させるものですから、当事者間でそれを消滅させることはできません。ただし、特に盗撮やのぞき等の軽微な犯罪であれば、示談が成立していれば検察官が起訴しないことが多くなります。起訴するか否かは検察官の裁量によりますから(刑事訴訟法248条=起訴便宜主義)、被害者が宥恕するのであれば、起訴しない方向へと働くのは当然でしょう。

起訴までに示談成立を

盗撮などで逮捕された場合には早い段階で弁護士に依頼し、被害者との交渉にあたってもらった方が、前科をつけないことにつながると言っていいでしょう。逮捕直後から被害者の宥恕が得られたら、微罪処分(刑事訴訟法246条但し書き参照)となり、検察官に送致されずに事件が終わる可能性もあります。検察官送致を受けても、示談の成立により起訴猶予となる可能性も初犯であれば十分あるでしょう。

被害の相手が分からなくても贖罪寄付

盗撮で捕まった時に他の被害者の映像が出てくることなどもあり、被害者が特定できないことがあります。そのような場合には示談交渉はできません。しかし、日弁連や弁護士会の制度である贖罪寄付という形で反省を表すことができれば起訴猶予になる可能性は否定できませんし、実際、過去にはそういう事例が数多く見られています。

贖罪寄付とは罪を償う意味で弁護士会にお金を寄付(贖罪寄付)することで、弁護士会が証明を出してくれるものです。

ワンポイントアドバイス
盗撮やのぞきで逮捕されたら、まずは十分に反省することが大切ですが、特にのぞきの場合は、軽犯罪の場合が多いため、不当に勾留が長いと思った場合は、弁護士に異議申し立てをしてもらうこともできます。

盗撮やのぞきで逮捕されたら弁護士に相談!

盗撮やのぞきで逮捕されても、初犯や軽微な犯罪の場合はすぐに釈放されることもあります。しかし、中には勾留されてしまう人もいるでしょう。そのような場合は、できるだけ早く弁護士を呼んでもらい、適切な行動をアドバイスしてもらうようにしましょう。特に、のぞきなどで冤罪の場合は、大至急、弁護士を呼んでどうしたらよいか相談することが大切です。

刑事事件はスピードが重要!
刑事事件に巻き込まれたら弁護士へすぐに相談を
逮捕後72時間、自由に面会できるのは弁護士だけ。
23日間以内の迅速な対応が必要
不起訴の可能性を上げることが大事
刑事事件で起訴された場合、日本の有罪率は99.9%
起訴された場合、弁護士なしだと有罪はほぼ確実
上記に当てはまるなら弁護士に相談