2018/11/30 22view

強制執行の1種「不動産執行」とは?手続き内容と流れを解説

この記事で分かること
  1. 不動産執行ができるのは強制執行が認められた時と担保権を実行する時
  2. 不動産執行を申し立てると競売が行われ、売却益が配当される
  3. 競売や不動産の引き渡しについては、ほとんど債権者が関わらない

不動産は金額の高い財産なので不動産執行ができるとある程度の債権回収が期待できます。不動産執行は債権者の手で申し立てられますが、不動産が差し押さえられ、競売されて立ち退きが行われるというプロセスにはほとんど関わりません。ただ、競売といっても1年ほどかかりますから早めの準備が推奨されます。

不動産執行の内容と行える場合について

不動産執行を一言で説明すれば不動産の差し押さえです。比較的価値の高い不動産を差し押さえることができれば債権回収の実現度が高まります。もちろん、他の財産についても差し押さえができますがやはり大きな財産といえば不動産です。

不動産執行はどのように行われるのか

不動産執行は債権者が裁判所に申し立てることで始まり、競売によって不動産が売却されます。競売にかけられた財産の売却先が決まって売却許可が出されれば債権者に配当が与えられます。

この時、債務者が「競売にかけられるくらいなら」と不動産を身内に贈与あるいは著しく低い価格で売買することがあります。このような行為を制限するためには詐害行為取消権を行使しましょう。

また、不動産を債務者が故意に傷つけないよう裁判所に保全処分を申し立てることも時には必要です。

不動産執行手続きができるのはこのような場合です。

抵当権を設定していた場合

あらかじめ不動産を担保に契約をしていた場合は、とくに法的紛争をせずに差し押さえられます。抵当権とは不動産を売却したお金から弁済してもらう権利です。よく似たものに担保不動産収益執行手続きがありますが、こちらは不動産から収益を得るだけで不動産そのものを換金しません。

抵当権を行使する場合は担保権の実行手続きと言います。

抵当権を設定していても不動産執行手続きができない場合がある

抵当権はそれを根拠に不動産執行手続きができる権利なのですが、他の債権者に不利益を及ぼす場合は抵当権の設定自体が詐害行為とみなされます。契約をするときはその人の財産と債務についてしっかり調べましょう。

債務名義を手に入れた場合

担保権がなくても債務名義(強制執行ができるという証明)を取得すれば不動産執行ができます。債務名義をもとに行われる民事執行は強制執行と言います。

債務名義にはこのような種類があります。

判決およびそれと同等の効力を持つ文書

裁判に勝ったというのはれっきとした根拠になります。上訴された場合でも仮執行宣言付きの判決があれば強制執行が可能です。

判決と同じ効力を持つ書類には和解調書や調停調書があります。

支払督促

支払督促がうまくいけば裁判によらず強制執行できます。ただし、異議申し立てをされた場合は相手の管轄裁判所で争うことになります。

公正証書

公正証書で契約書を作った場合も強制執行についての合意があれば債務名義として使えます。ただし公正証書は金銭債権の弁済に限られ物上代位には用いることができません。

準不動産執行について

不動産とはその名の通り動かないものです。ところが動くものであっても容易に移動できないほど大きなものは不動産執行と同様に手続きが行われます。例えば船舶、航空機、機材といったものがこれに当たります。

ワンポイントアドバイス
不動産執行はまとまった財産を得られるメリットがあります。抵当権をつけていない場合は自らが執行しても他の債権者と平等に債権を分け合うことになるので注意してください。また、公正証書による強制執行は金銭または有価証券のみが対象となるため不動産執行に使えません。こちらも要注意です。

不動産執行を申し立ててから債権を回収できるまで

不動産執行はこのような流れで行われます。

  1. 申し立て
  2. 開始決定及び売却準備
  3. 競売
  4. 所有権移転
  5. 配当金の計算及び配当

1.申し立て

まず、不動産執行の申し立てをします。担保権を実行する場合は履行の遅滞があったことが条件となるし、強制執行の場合は判決が出たからとすぐに強制執行してくれるわけではありません。

申し立ての根拠となる書類を裁判所に提出しましょう。

申し立てに必要な書類はこちらです。

  • 不動産執行申し立て書
  • 送達証明書
  • 意見書
  • 住所証明書及び資格証明書(法人のみ)
  • 評価証明書・公課証明書
  • 不動産の図面
  • 返信用ハガキと封筒
  • 債務名義(強制執行の場合)
  • 抵当権のついた登記簿(担保権実行の場合)

そして各裁判所に決められた申し立て手数料と予納金、債権額の1000分の4にあたる登録免許税を支払います。予納金は不動産調査のために必要で競売が終わるとその売却額でできる範囲の償還がされます。

2.開始決定及び売却の準備

申し立てが受け入れられると競売の開始決定がされます。その後は対象となる不動産が差し押さえられます。差し押さえの手続きは裁判所が行います。差し押さえられた財産は調査され評価額が割り出されます。

競売の事実は公示されます。インターネットでも物件を確認できます。物件の情報として現況調査報告書、評価書、物件明細書が公開されます。この間、申立人は特にすることがありません。

申立人以外の債権者に関しては配当を受け取るための配当要求が必要です。担保権の実行である場合は債権届出も必要となります。

3.競売

競売はオークションの形式で行われます。入札者は競売にかかった物件から良さそうなものを見つけて、入札します。入札には期限がありその中で最も高値であった人が落札者となります。

競売は任意売却に比べて安く買われる傾向にあります。債権が多い場合は差し押さえだけでなく任意売却の交渉もできないか考えてみると良いです。

4.所有権移転

落札したら所有権が移転されます。登記は裁判所が行いますが不動産の引渡しがスムーズにできないときは落札者が強制的に立ち退かせるための手続きをしなくてはいけません。

また、落札者は期限までに買取額を入金します。

5.配当

競売が終わったら債権者は配当を受け取ることができます。抵当権を設定している場合は抵当順位に応じて、抵当権を設定していない場合は平等に分け合います。債権者は平等に扱われるので申立人だからと言って優遇されることはありません。

だからこそ「いざという時は強制執行」と考えているなら自分がどのくらい配当をもらえるか考える必要があります。

ここまでで大体1年ほどかかります。

ワンポイントアドバイス
不動産執行は裁判に勝ったからといって自動的に行われず債権者自ら申し立てる必要があります。その後の手続きについては裁判所が行います。ちなみに競売がうまくいかなかった時は提出した意見書の内容に従います。

不動産執行で債権者がすべきことは意外と少ない

不動産執行において債権者がすべきことは申し立てと配当の受け取りぐらいで思ったほどの負担ではないかもしれません。しかし、申し立てのための書類作成はそれなりに労力がかかり、予納金を払う必要もあります。

また、強制執行の場合は事前に訴訟なり調停なりをしなければいけないわけですから決して負担が軽いとは言えません。債権者が頑張るのは不動産執行までです。

不動産執行の手続きはほとんど裁判所と入札者によって行われます。よく考えたら競売は債権者と購入者が直接交渉するわけではないし、そもそも差し押さえた物件が債権者のものになるわけでもありませんね。

不動産執行をしても債権回収が不十分な時は

不動産執行をしても債権回収が不十分な時は動産や債権に対して差し押さえを行います。これらの手続きは不動産執行ほど難しくはありませんが不動産執行ほどのリターンはなかなか得られないでしょう。

ワンポイントアドバイス
債権回収において債権者がすべきことはその権利を確定させ強制執行を申し立てるところまでです。そこからは裁判所と申立人のやりとりが主になるためひと段落となります。

逆に言えばそこまでの道のりが長いので債務名義の取得を考えているならすぐに弁護士へ相談すると良いです。

不動産執行を考えているなら弁護士へ相談を

抵当権を設定している場合なら裁判なしで不動産執行できるものの申し立て書類の複雑さに迷われるかもしれません。抵当権を設定していない場合は訴訟から始めなくてはいけないのでかなりの時間がかかるでしょう。

不動産執行による債権回収を考えているなら早めに弁護士へご相談ください。

債権回収を弁護士に相談するメリット
状況にあわせた適切な回収方法を実行できる
債務者に<回収する意思>がハッキリ伝わる
スピーディーな債権回収が期待できる
当事者交渉に比べ、精神的負担を低減できる
法的見地から冷静な交渉が可能
あきらめていた債権が回収できる可能性も
上記に当てはまるなら弁護士に相談