2018/5/14 309view

仮差押えとは?その手続きや費用が知りたい!

この記事で分かること
  1. 仮差押えとは債務者の差し押さえ逃れを封じる保全手続きで、仮差押えした財産を凍結することができます。
  2. 手続きの流れは申し立て→審理→担保決定→保全決定となります。手続きには保証金や疎明資料も必ず用意しなければなりません。
  3. 仮差押え手続きには申し立て手数料2000円と保証金がかかります。弁護士に依頼した場合は着手金や成功報酬の他、抵当権設定費用等もかかります。
  4. 仮差押えで債権回収を実現するには手続き後の裁判で勝訴する必要があり、敗訴すれば損害賠償を支払うことになる点に注意が必要です。

仮差押えとは債務者の差し押さえ逃れを封じる保全手続きで、仮差押えした財産を凍結することができますが債権回収を実現するには手続き後の裁判で勝訴する必要があります。敗訴すれば損害賠償を支払うことになります。費用としては申し立て手数料2000円と保証金がかかります。弁護士に依頼した場合は着手金や成功報酬の他、抵当権設定費用等も費用です。

仮差押え手続きは財産隠しを封じる保全手続き

債権を回収できない場合、相手の出方に応じて任意の交渉、支払い督促、調停等段階的に手続きを踏む必要があります。そして最終手段となるのが裁判です。しかし勝訴しても必ず解決するわけではありません。訴訟の提起から判決までには時間がかかり、その間に債務者に“財産隠し”をされればせっかく苦労して勝訴判決を得ても一円たりとも回収できなくなってしまいます。こうした事態を防ぐための手段に「仮差押え・仮処分」があります。

仮差押えとは

仮差押えの言葉自体の認知度は高いですが、詳細な内容は知らない人が多いでしょう。そこでまずは仮差押えについて基本的な事柄を解説します。

強制執行までには時間がかかる

請求に応じない債務者に対しては最終的に裁判を起こすしかありません。勝訴判決を得てから債務者の財産に強制執行をかけ、差押さえることで債権を回収できます。しかし一般に訴訟の提起から判決までにかなりの時間を要しますし、判決が出てから強制執行に移るまでにも時間がかかります。

財産隠しを封じる民事保全手続き

その間に起こり得るのが、債務者が差押えから逃れるために不動産を他人名義にしたり、動産を隠す“財産隠し”です。場合によっては訴訟を提起する前から財産隠しに着手しているケースもあります。この場合、勝訴しても無駄になってしまいます。“ない者からは取れない”のです。そこでこのような事態を防ぐために債務者の財産隠しを封じる手続きが民事保全手続きです。民事保全手続きの内、金銭債権のためのものが「仮差押え」、それ以外が「仮処分」となります。ただし“仮”なので、後に訴訟をして正式に強制執行で差押える必要があります。この訴訟を本案訴訟と言います。

仮差押えをするとどうなる

では仮差押えは具体的にどう効果を発揮するのでしょうか。仮差押えが特に有効なケースを例に挙げて具体的に見ていきましょう。

緊急性の高いケースに威力を発揮する

例えばA社の取引先に、何度請求しても売掛金を払ってくれないB社があったと仮定します。支払わないのはお金がないからですが、B社は大手取引先Z社から月末にまとまった額のお金を受け取ることが分かりました。B社はその中から支払いをすると主張していますが、これまでの経緯から信用できません。B社にお金が渡ってしまえば回収の見込みは限りなくゼロに近いものとなります。本来ならば訴訟を起こし支払わせればよいのですが、それには時間がかかり、月末までにはとても間に合いません。このような状況のとき有用なのがこの、仮差押え手続きです。Z社からB社に渡る予定の売掛金を仮差押さえするとZ社はB社に対して売掛金を支払うことができなくなるのです。仮差押えしている間は売掛金の支払いは止まったままになるのでその間にA社は、ゆっくりと判決を得て正式な差押えをすることができるわけです。

仮差押えた債務の支払いが禁じられ、支払っても無効になる

差押え手続きは裁判所の許可を得て行われ、差押えが認められればZ社(第三債務者)に以下のような書類が届きます。「債権者の債務者に対する上記請求債権の執行を保全するため、債務者の第三債務者に対する別紙仮差押債権目録記載の債権は、仮に差し押さえる。第三債務者は、債務者に対し、仮差押えに係る債務の支払をしてはならない」ポイントは“仮差押えに係る債務の支払をしてはならない”の部分で、もしZ社がこの命令に背いてB社に売掛金の支払いをしても、それは無効になります。

ワンポイントアドバイス
仮差押えとは債務者の差し押さえ逃れを封じる保全手続きで、仮差押えした財産を凍結することができます。

仮差押えの手続きの流れ

このように仮差押えをすると、債務者の財産を凍結できます。手続きの流れは「申し立て→審理→担保決定→保全決定」となります。順を追って詳しく見ていきましょう。

申し立て

まずは書面による申し立てです。仮差押命令申立書を作成し、裁判所へ申し立てます。申し立ての用紙は裁判所にあります。申立書には被保全債権、つまり保全したい債権の内容とその保全の必要性を明らかにする資料、目的物の目録・謄本等を添付します。申立先の裁判所は原則として債務者の住所地を管轄する地方裁判所です。また申し立ての際は被保全債権が実際に存在することを疎明しなければなりません。疎明とは裁判官に一応確からしいと推測させられる程度の説明のことで、訴訟の際求められる「証拠」よりは弱いものを言います。被保全債権に関する契約書等を疎明資料として提出する必要があります。

書類や面談による審理

次に審理に移ります。仮差押えの申し立てについての裁判所の判断は、疎明資料と申立書の書類審理のみによって行われるのが通常です。これは保全手続きの迅速性を確保するためです。しかし現実には債権者と裁判官との面談(審尋)によって審理が行われることもあります。この場合疎明資料の原本を裁判官に確認してもらい、保全手続きの必要性を疎明します。面談の際はパスポート等の本人確認書類や申立書作成時に使用した印鑑も持参する必要があります。

担保の決定

審理に通れば担保の決定手続きに進みます。債権者が仮差押え命令の申し立てをするには、保証金の供託、即ち担保の提供をする必要があります。民事保全手続きは債権者だけの言い分に基づく、仮の決定ですから、本案訴訟で債権者が敗訴する場合もあります。そうなれば不当な仮差押えであったことになり債務者に損失が生じる可能性があるのです。そこで債務者を保護する目的であらかじめ金銭等を担保として預けておくわけです。仮差押えの申し立てが認められれば裁判官が担保決定を下してその後債権者に知らされます。供託先は法務局やその支局、出張所等が一般的です。そして供託先から受け取った「供託証明書」を裁判所に提出します。

保全決定で手続き完了

担保金を供託したら、仮差押えが執行されます。執行は、“仮差押え決定正本”の第三債務者への通達をもって効力を発揮します。尚、仮差押えの執行をするのは強制執行の場合と異なり、仮差押え手続きをした裁判所になります。

債務者が仮差押えを解いてもらうための「仮差押え解放金」とは

ところで、仮差押えの制度は債権者の一方的な申し立てにより発令され、債務者に不利と言えます。そのため債務者と債権者の利益の均衡を保つ制度が設けられているのです。それが「仮差押え解放金」です。

債権者有利の仮差押えの利益の均衡をとる制度

仮差押え解放金とは債務者が仮差押えを解いてもらうために供託する金銭を言い、手続きの際は必ず裁判所が仮差押え解放金額を定めなければならないことになっています。債務者にとっては被保全債権に相当する金銭を供託してもらえれば都合がよいですし、債務者にとっても所有財産への不要な執行から逃れることができます。

ワンポイントアドバイス
手続きの流れは申し立て→審理→担保決定→保全決定となります。手続きには保証金や疎明資料が必要です。

仮差押え手続きにかかる費用は

次に仮差押え手続きにかかる費用について見ていきましょう。ここでは仮差押え手続き自体のコストと弁護士に依頼した場合にかかる費用について解説します。

仮差押えの手続きそのものにかかるコストは

まずは、仮差押えの手続き自体にかかる費用を見ていきましょう。手続きに必要な経費は申し立て手数料や担保金です。

申し立てにかかる費用

仮差押え命令申立書を裁判所へ提出する際、手数料として1個の申し立てにつき貼用印紙2000円を納める必要があります。ここで問題となるのが何をもって“1個”とするのかです。この基準は申し立て行ための数や申立事項の数により異なります。例えばAがBに対する債権を保全するためにBの持ち家と別荘に仮差押えを申し立てた場合は1個の申し立てと考えられます。しかしAがBに対する債権を保全するためにBの持ち家に仮差押を申し立てると共に、Cに対する債権を保全するためにCの持ち家にも同日に申し立てた場合は2個の申し立てがあるものと考えられ、4000円を納める必要があります。

保証金にかかる費用

手続きの中で最も多額の費用がかかるのがこれです。前述した通り、仮差押え手続きでは保証金も用意しなければなりません。その額は差押えで凍結する額や請求債権額、疎明の程度によって決定されます。ただし、あくまでも“担保”なので後から取り戻すことができます。

弁護士に依頼した場合にかかる費用は

仮差押えの手続きは非常に複雑です。これは仮差押えでは正式な判決を得てもいないにもかかわらず債務者の財産を凍結することになるために、当然厳格な手続きを踏まなければならないからです。手続きに不備があれば、申し立てが取り消されることになり得ます。よって法的知識が乏しい素人だけで行うには難儀するので、弁護士に依頼するのが賢明です。では弁護士コストを見ていきましょう。

手続きにかかるコスト

仮差押え手続きを弁護士に依頼した場合、5万円~10万円の着手金や回収額の15%前後が相場の成功報酬の支払いが必要です。その他書類作成費や裁判所へ納める収入印紙代、抵当権設定費用等もかかります。

その他コスト

加えて、弁護士に仕事を依頼すること自体で発生する料金も当然発生します。例えば30分当たり5000円程度の相談料です。また日当も支払わなければなりません。日当とは弁護士が事案の解決のために事務所から出た場合の時間的拘束への対価です。1時間当たりの相場が1万円なので、半日かかった場合は4万~5万円、丸一日かかった場合10万円程度になります。尚日当には交通費も含まれるので注意しましょう。

ワンポイントアドバイス
仮差押え手続きには申し立てに手数料2000円と保証金がかかります。弁護士に依頼した場合は着手金や成功報酬の他、抵当権設定費用等もかかります。

仮差押え手続きで知っておくべき点

仮差押えが相手方に与える心理的プレッシャーはすさまじいものがあり、仮差押えの手続きを開始する旨を伝えただけで、返済を渋っていた債務者の態度が一変し、支払いに応じるケースもあります。最後に仮差押えについて知っておきたいポイントを解説します。

仮差押え手続きの注意点

仮差押え手続きには交渉を有利に進められる等のメリットもあります。しかし、仮差押えはあくまでも暫定的に債権を保護するものであり、幾つかの点で注意が必要です。

仮差押えの手続きで債権回収はできない

仮差押えはその後の民事裁判で争っていく権利を一時的に保全しておくものです。そのため手続きの後に訴訟を起こさなければ仮差押えの申し立てそのものが裁判所によって取り消されることになるのです。さらに、債権の回収が実現する前に債務者が破産や民事再生等の債務整理をすれば仮差押えの手続きが無効になってしまう点にも注意が必要です。仮差押えの手続きそのもので債権回収ができるのではないことを覚えておきましょう。

仮差押え命令の申し立てができないケースもある

また、仮差押え手続きの申請が認められないケースもあります。債務者が破産手続き開始決定を受けていると保全命令の申し立てはできません。

仮差押え禁止債権がある

加えて仮差押えができない財産もあります。民事保全法では給料や賃金等については債務者の生活保護の観点から仮差押えできる範囲が、手取りの4分の1までに限定されています。ただし手取りが44万円以上の場合は十分に生活していけるので手取り給料から33万円を控除した額の差し押さえが可能です。

手続きによって債権者が損する羽目になるリスクも

また仮差押え手続きを検討する場合、事前に必ず知っておかなければならないことがあります。それは仮差押えの手続きをしたことで結果的に損することになるリスクがある点です。

裁判で負ければ損害賠償を支払う

仮差押え後に本案訴訟で敗訴するケースがあります。この場合、債務者に損害賠償金をしなければなりません。そもそも仮差押えは債権者側が債権の回収をし損ねそうになったときの、応急処置的な性格をもつ手続きと言えます。そのため仮差押えの判断が誤りで、本案訴訟で債権者に債権がないとして敗訴判決が下ることもあり得るのです。このようなケースに備えて保証金を供託するのですが、損害がその金額を上回る場合、不足分を賠償しなければなりません。

ワンポイントアドバイス
仮差押えで債権回収を実現するには手続き後の裁判で勝訴する必要があり、敗訴すれば損害賠償を支払うことになる点に注意が必要です。

仮差押え手続きの特性を知ったうえで利用しよう

仮差押えは急場をしのぐ手続きとしては有効ですが、本案訴訟で敗訴すればかえって損失を出すことにもなりかねません。手続きの際はそうしたデメリットも頭に入れておきましょう。仮差押え手続きで分からないことは、債権回収に強い弁護士に相談する方がスムーズです。

債権回収を弁護士に相談するメリット
状況にあわせた適切な回収方法を実行できる
債務者に<回収する意思>がハッキリ伝わる
スピーディーな債権回収が期待できる
当事者交渉に比べ、精神的負担を低減できる
法的見地から冷静な交渉が可能
あきらめていた債権が回収できる可能性も
上記に当てはまるなら弁護士に相談