2018/7/25 83view

兄弟での遺産相続。トラブルになりやすい遺留分とは?

この記事で分かること
  1. 遺留分制度とは一定の範囲の相続人には最低限の財産の取り分が保証されるものです。
  2. 遺留分制度の対象者に兄弟姉妹は含まれません。この記事でいう兄弟は子のことを意味します。
  3. 遺留分を主張するには減殺請求が必要です。

遺言によって相続分を侵害されても、相続人は遺産のうち一定の割合を相続できることが法律で保障されています。これを遺留分といい、相続人が共同相続人に対し「遺留分減殺請求」を行うことによって請求できます。今回は、相続人が最低限得られる相続分を保障する遺留分の請求方法やその際の注意点についてみていきましょう。

兄弟間のトラブルを防ぐ、遺留分制度とは

もし、被相続人が「全財産を世話になったヘルパーさんに渡す」という遺言を残っていたとしたら、配偶者や子供は心境おだやかではいられないでしょう。このような不利益から相続人を守るのが遺留分制度です。遺留分は配偶者、第二順位までの法定相続人(子、両親)に保証された財産の取り分のことです。これは、被相続人の遺言が残っていたとしても侵害することができません。

遺留分の対象になるもの

遺留分の対象になるのは、被相続人が死亡したときの相続財産だけではありません。相続開始前1年以内の贈与財産や相続人に対して特別に贈与した財産、遺留分を侵害することをお互い承知の上で贈与した財産も含まれます。また、被相続人が死亡した日から1年前までの間の贈与は、誰に対して贈与したものであっても遺留分の対象になります。もし、双方が遺留分を侵害することを承知した上で贈与された財産であれば、たとえ被相続人の死亡日より1年以上前であっても、遺留分の対象になります。

遺留分は相続人によって異なる

遺留分は被相続人の財産の割合に相当する額で、相続人によってその割合が異なります。直系尊属のみが相続人である場合は、被相続人の財産の3分の1が遺留分になります。それ以外の場合は、被相続人の財産の2分の1です。

配偶者と子2人が相続人の場合、遺留分は被相続財産の2分の1で、それに法定相続分率(配偶者が2分の1、子が1人につき4分の1)を乗じたものが遺留分額になります。たとえば、財産が1200万円の不動産だった場合、遺留分は2分の1の600万円、配偶者の遺留分額はそれに2分の1を乗じた300万円です。

遺留分減殺請求で遺留分を守る

相続人は自らの遺留分を侵害された時に遺留分減殺請求をして、自らの遺留分を取り戻すことができます。被相続人の遺贈や贈与によって、遺留分より少ない財産しかもらえなかった場合、遺留分権利者は、遺贈や贈与の減殺を請求できます。また、遺留分権利者以外にその承継人も減殺請求できます。この「承継人」とは遺留分権利者の包括相続人(相続人、包括受遺者、相続分の譲受人)だけでなく、特定承継人(個々の減殺請求権を譲り受けた者)も含みます。

誰に対して減殺請求するのか

遺留分減殺請求は遺留分を侵害する遺贈や贈与を受けた者と、その相続人など包括承継人に対して行います。また、相続分の指定で指定を受けた相続人とその包括承継人も遺留分減殺請求の対象となります。

ワンポイントアドバイス
遺留分減殺請求は相手に対して意思表示をすれば効力を発生します。裁判上の請求による必要はありません。そして遺留分減殺請求権が行使されると贈与や遺贈の効果が失われ、行使者に目的物の権利が帰属します。

兄弟のトラブルを防ぐために遺留分の計算はしっかりと

遺留分は被相続人の相続財産の割合で決められますが、具体的な遺留分額の決め方を見ていきましょう。遺留分を算定する上で基礎となる財産は、以下の通りになります。

相続開始時の財産+(1030条に該当する)生前贈与+相続人に対する特別受益たる贈与−債務

1030条に該当する生前贈与とは、相続開始前の1年間にしたものと、1年以上前にしたものでも当事者双方が遺留分権利者を害することにつき悪意(知っていた)で行ったものです。相続人に対する特別受益たる贈与とは、遺贈及び婚姻や養子縁組のため、もしくは生計の資本として贈与された財産です。つまり、本来であれば被相続人の財産になっていたであろう財産から流出したものを、相続開始時の財産に加え、そこから債務を差し引いたものが遺留分算定の基礎となる財産になります。

有償でも贈与とみなされる場合も

また、前述しましたが、贈与ではなく有償で取引された場合でも、対価が不相当な場合で、かつ、当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知ってしたものに対しては贈与とみなします。たとえば被相続人が生前3000万円相当の土地を1000万円で売却し、そのことが遺留分権利者を侵害することを当事者双方が知っていれば、本来の土地価格と売却価格の差額の2000万円が遺留分算定の基礎に算入されます。

ワンポイントアドバイス
相続人以外の第三者に被相続人の死亡保険の受取人になった場合に、遺贈もしくは贈与にならないかが問題になります。判例では、死亡保険金は遺贈や贈与にあたらないとしています(最判平成14年11月5日)。

兄弟間のトラブルになりがちな遺留分減殺請求方法

では、実際に遺留分減殺請求はどのようにして行ったらよいのでしょうか。遺留分の侵害額の計算や減殺の方法を確認していきましょう。

遺留分侵害額の計算

遺留分減殺請求をするためには、自らの遺留分がどれだけ侵害されているかを確定させる必要があります。遺留分の侵害額は、遺留分権利者が被相続人から現実に得た利益である純取り分額が、遺留分額に満たない場合、その差額となります。

純取り分額の計算方法

純取り分額をもう少し細かく見てみましょう。
純取り分額を式に当てはめると次のようになります。
 
純取り分額=具体的相続分額+特別受益額−相続債務負担額
つまり、遺留分額を算定する際に相続債務が減りますから、純取り分額においてもその負担分を減らさなくてはなりません。

相続債務負担額で、相続の指定があった場合

相続債務負担額については、これを法定相続分の割合で負担することになりますが、相続分の指定があった場合にも、それは適用されるのかという問題が発生します。この点、判例は、指定相続分の割合で算定するとしています。

遺留分減殺の方法

遺留分減殺の方法は法律で定められています。まず、減殺すべき遺贈、贈与が複数の場合は遺贈から先に減殺します。遺贈を全額減殺しても遺留分額に足りない時には、贈与を減殺します。

複数の遺贈、複数の贈与の場合

減殺すべき遺贈が複数ある場合は、その遺贈の目的物の価額の割合に応じて減殺します。遺言者が別段の意思を表示した時は、その意思に従います。遺贈がない場合もしくは遺贈への減殺では足りない場合で、複数の贈与がある場合は、後の贈与から順次前の贈与へ減殺していきます。死因贈与がある場合の規定はありませんが、裁判例では遺贈の次、生前贈与より先に減殺するとしています。

減殺請求者が複数の場合

減殺請求者が複数いる場合もあるでしょう。その時も減殺する順番は遺贈が先です。そして、各自の侵害額の割合に応じて減殺します。侵害額が、Xが400万円、Yが100万円(X:Y=4:1)の場合を考えてみましょう。遺贈の目的物の価額が300万円、贈与の目的物の価額が600万円の場合、まず遺贈をXが240万円、Yが60万円減殺します。続いて贈与の減殺はXが160万円、Yが40万円になります。

遺留分減殺請求の効果

遺留分権者が遺留分減殺請求をした場合、どのような法的効果があるのでしょうか。
遺留分減殺請求は形成権ですから、相手に対して意思表示をすれば効力を発生します。

もっとも受贈者又は受遺者にすれば、いったん、手にした財産について請求を受けただけでその分だけ取られてしまうのは酷です。たとえば遺贈もしくは贈与された1000万円相当の土地について遺留分額500万円の遺留分減殺請求を受けたら、土地の半分は遺留分権者の所有となります。しかし、その場合、受遺者、受贈者は価額による弁償をして返還義務を免れることができます。

減殺請求と第三者との関係

減殺する目的物に第三者が絡んできた場合はどうでしょうか。遺留分減殺請求をする前に受贈者が第三者に目的物を譲渡し、その後、受贈者に遺留分減殺請求がされた場合は弁償をしなければなりません。ただし、第三者が遺留分を侵害することを知っていた場合は、当該の第三者に遺留分減殺請求することができます。遺留分減殺請求の後に第三者に目的物が譲渡された場合は、判例は対抗問題として扱っています。つまり、対抗要件(不動産なら登記)を先に備えた方が所有権を得るということになります。

ワンポイントアドバイス
遺留分の請求は電話などで、口頭で伝えることもできますし、内容証明郵便を送ることもできます。その後、調停や訴訟に発展することを考えると、証拠として残る内容証明郵便などで、まずは意思を知らせることをおすすめします。

兄弟でトラブルになりやすい遺留分減殺請求権の問題

遺留分減殺請求には様々な問題があります。期間制限や信義則との関係など、これまでに問題となった内容を見ていきましょう。

遺留分減殺請求の期限

遺留分減殺請求には期限があります。
まず、遺留分権利者が相続の開始及び減殺すべき贈与又は遺贈があったことを知った時から1年間以内に行使しないときは時効によって消滅します。もし、相続があったことを知らなかった場合でも、相続の開始から10年たつと時効になるので注意しましょう。
特に、兄弟姉妹の仲が悪く、疎遠になっているケースがあります。親が亡くなって相続が発生した事実を知らなかったということもあるでしょう。時効になってしまえば相続人であるにもかかわらず、遺産をもらえいなくなることもあり得るため、遺留分減殺請求が必要なってきます。

減殺すべき贈与等を「知った時」とは

ここで問題になるのは、減殺すべき贈与又は遺贈があったことを「知った時」の解釈です。そのような贈与、遺贈があったということを知った時なのか、それらが減殺すべきものであることまで知ったことを要するのかという点です。判例は「減殺すべきものであることを知った時」としています。

遺留分減殺請求の意思表示

遺留分減殺請求は裁判上の訴えによることなく、相手方への意思表示だけで成立します。では、どのような場合に意思表示があったと言えるのでしょうか。

過去の裁判例を見ると、減殺の意味を持つ意思表示を積極的にしている場合に、意思表示があったと認められています。意思表示をせずに目的不動産の取得登記を経由したにすぎない場合には減殺請求権の行使とはみられないとされています。

また、遺産分割協議の申し入れが遺留分減殺請求とみなされる場合もあります。全財産が一部の相続人に遺贈されて、減殺請求権を行使する者が遺贈の効果を争わない場合などです。こうした場合、遺産の分配を求めるには遺留分減殺請求しかありませんから、特段の事情がない限り、遺産分割協議の申し入れに減殺の意思表示が含まれているとしています。

権利濫用の禁止の適用

法律では遺留分請求の権利を乱用してはならないとしています。遺留分減殺請求の乱用として認められた事件と認められなかった事件がありますので、参考に紹介します。

濫用として認められなかった事例

被相続人と21年間同居した長女に不動産を単独相続させることに他の子らも同意をしていたのに、実際に相続されたら減殺請求がされた事例があります。これについては、権利の濫用として請求が認められませんでした(東京高判平成4年2月24日)。これは他の子たちは生前、権利の主張をしないという念書に署名をしていたために、事前に家庭裁判所に遺留分の放棄を申し立てていれば許可されたことが予想されるという事情が理由として示されています。

濫用ではないとされた事例

被相続人は妻と4人の子がありましたが、相続財産をそのうち2人の子に相続させたため、妻と別の子1人が遺留分減殺請求をしたという事例です。被相続人は44年間、妻と別居し夫婦関係は形骸化していたから減殺請求は権利の濫用であると被告が反論しました。この点について、裁判所は夫が愛人と同居を始めたのが別居の原因であることや妻への生活費の送金があり、夫婦関係は形骸化していないとして権利の濫用はないとし、請求を認めました(東京地判平成4年5月27日)。

減殺請求が権利の濫用とされた事例

減殺請求者Xは被相続人の養子でしたが、感情的な対立があり養子縁組から1年ほどで家を出て、被相続人に対して25年間、子らしいことは何もしませんでした。一方、別の養子Yは老齢の被相続人と同居して面倒をみて、全財産を遺贈されました。そのYに対してXが減殺請求した事例です。裁判所は「・・(Xは)養子らしいことは何一つとしてしたことはなく、ほとんど音信杜(途)絶の状態で、事実上全くの離縁状態にあり、実質上の養親子関係は消滅していたと言うべきである。」と請求を退けました。

ワンポイントアドバイス
遺言書がなく、遺産分割協議を行うときも兄弟でトラブルになることがあります。特に、兄弟で上下関係がある場合です。たとえば強い兄に一方的に不利な条件を押し付けられた弟が何も言えないうちに、遺産分割協議が終了してしまうことがあります。この場合、弟は兄に自分に遺留分があることをしっかりと主張し、それでもうまくいきそうにない場合は、弁護士に間に入ってもらうのも有効な手段です。

兄弟での遺留分をめぐる遺産相続トラブルは弁護士に相談

兄弟間での遺産をめぐるトラブルは、気が知れている間柄だけに、逆に泥沼化しがちです。法律の知識を有していないと、お互いが間違った認識のまま言い争うことになり、とても建設的とはいえません。そういった場合は、法律の知識がある弁護士を介入させることをおすすめします。

また、遺留分を請求するときは、あらかじめどれくらいの遺産があり、どれだけ遺留分の侵害があったのか、またどれだけ受け取る権利があるのかを知る把握しておく必要があります。こういったことを調査するのは、非常に時間と労力がかかってしまいます。その点、弁護士に依頼すれば、弁護士の職務証の権限で様々な調査をしてもらうことができ、調査の負担を大幅に軽減できます。また、遺留分減殺請求が訴訟に発展しまった場合も、弁護士がいると非常にメリットがあるのは言うまでもありません。遺留分に関するトラブルがあった際は、できるだけ早く、遺産相続に強い弁護士に相談するようにしましょう。

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