売上金の滞納があった場合に支払督促をするには?

この記事で分かること
  1. 金銭の支払又は有価証券若しくは代替物の引渡しを求める場合に限ります。
  2. 支払督促は裁判所を介して債務者に支払いを督促する手続きです。
  3. 相手方の住所の管轄の簡易裁判所書記官に申立てます。
  4. 支払督促の発付から30日以内に仮執行宣言をしないと手続きが無効になる点や、訴訟に移行した場合費用倒れになるリスクもある点に注意が必要です。

支払督促は裁判所を介して債務者に支払いを督促する手続きで、「申立て→支払督促の発付→仮執行宣言→強制執行」の流れになります。簡単・迅速・低コストで行える債権回収方法ですが、督促内容に争いがある事案や、異議申立てされる可能性が高い事案には向きません。

売上金の滞納があった場合に支払督促をするには

債権の回収できないでいると企業の存続をも脅かすため未収債権の回収は、企業にとって最もプライオリティの高い事項です。通常、債権回収には少なくない手間や費用、時間がかかりますが、支払督促制度を利用すれば迅速かつ低コストで回収可能なのです。まずは支払督促について解説します。

支払督促とは

支払督促とは、裁判所を通して債務者に支払いを督促する手続きで、金銭の支払いや有価証券、代替物の引渡しを求める場合にこの制度がつかえます。
申立てを受理した裁判所は申立てに不備がないかチェックし、問題がなければ支払督促を出してくれます。

スピーディかつ低コストでの解決が可能

支払督促制度の大きな特徴は証拠調べや証人調べが行われないため、スピーディな解決が可能である点です。訴訟なら判決確定までには数年の月日を要するのが通常ですが、支払督促なら早ければ強制執行まで1ヶ月半程度しかからないのです。また手続き費用もと安く済みます。

支払督促特有のルールもある

支払督促手続きには、特有のルールがあります。

金銭債権に限られる

支払督促は大前提として、対象となる事案が金銭債権に限られる点に留意しなければなりません。

異議申立てがあれば通常訴訟に移行する

支払督促では申立ての内容を審査することはありません。出廷の必要はなく、書類だけで確認することになります。ただし、もし債務者が督促内容に納得がいかなければ異議申立てができることになっています。異議申立てがあれば通常訴訟に移行します。

相手の住所が分からない場合手続きを利用できない

また支払督促は相手の住所地に支払督促正本が通達されることで効力を発揮します。従って相手の住所が不明な場合手続きできません。

ワンポイントアドバイス
支払督促は裁判所を介して債務者に支払いを督促する手続きです。出廷はせず、書類のみで手続きが進みます。もし、督促異議申立書が提出されれば通常、民事訴訟に移行します。

滞納金の支払督促をするには

迅速な解決を見込める支払督促。手続きの流れは「申立て→支払督促の発付→仮執行宣言→強制執行」となりますが、実際に支払督促をするにはどうすればいいのでしょうか。ここでは支払督促のやり方を具体的に解説していきます。

支払督促の申立て

民事訴訟法271条でも規定されている通り、支払督促の申立ては口頭でも可能です。しかし現実には簡易裁判所の窓口は非常に忙しく、口頭による申立ての受付をしている余裕はありません。従って通常支払督促申立書は自分で作成することになります。

申立書は3部構成で作成する

支払督促の申立書は『表題部』『当事者目録』『請求の趣旨及び原因』の3部に分けて書くのが通常です。

  • 表題部 “支払督促申立書”と記入、事件の概要を書きます。
  • 当事者目録 改行し“当事者の表示”と書き“別紙当事者目録記載の通り”とし、当事者の氏名や住所は別紙に書きます。
  • 請求の趣旨及び原因 同様に“請求の趣旨及び原因”と書き“別紙請求の趣旨及び原因の記載の通り”とし請求の趣旨と原因は別紙に記入します。

別紙作成時のポイント

別紙作成時には注意すべき点があります。まず当事者目録には当事者の郵便番号、住所、氏名、電話番号を記載しますが、その際必ず確認してから記入するようにしましょう。間違った情報だと送達できません。債務者が法人の場合は代表者名も必要です。
次に請求の趣旨では、相手方に請求するものを書きます。遅延損害金の利率を記入する場合が、利息制限法で定められた利率を超えないよう、注意が必要です。
請求の原因については請求の法的根拠を簡潔に書きましょう。
尚支払督促の申立書には決められたフォーマットはなく、これらの記載があれば大丈夫です。

支払督促の発付

申立て書に不備がなければ裁判所が「支払督促」を出してくれます。支払督促正本の送達をもって支払督促は効力を発揮します。

2週間以内に異議申立てがなければ仮執行宣言

裁判所は、相手方が支払督促正本を受領した日から2週間以内に督促異議を申立てない場合、仮執行宣言をします。仮執行宣言をすることで支払督促は判決と同等の効力を持つことになります。2週間以内に督促異議が申立てられた場合は通常訴訟へ移行します。

仮執行宣言

支払督促は裁判所から督促することで債務者に心理的プレッシャーをかけ自発的な債務の履行を促すものです。しかし債務者が素直に支払うとは限りません。そこで用意されているのが「仮執行宣言」です。仮執行宣言とはいわば裁判所のお墨付きです。仮執行宣言後は、直ちに強制執行ができるようになります。

強制執行

差押え等、強制執行することで債権を回収します。

ワンポイントアドバイス
裁判所は相手方が支払督促申立書を受領した日から2週間以内に督促異議申立書を提出しない場合、仮執行宣言をし、その後は、強制執行が可能になります。

売掛金の滞納で支払督促手続きを選択する判断基準

支払督促手続きには裁判所が関与するので、その分債権者の覚悟も債務者に伝わると言えます。しかし債務者が支払督促に異議を申立て督促に応じない場合には通常訴訟に移行することになります。それゆえ、支払督促に向くケースとそうでないケースがあるわけです。

手続きに適したケース

前述の通り申立ての審査は形式的なものにとどまり、間違った内容が通ることも少なくありません。内容に対して債務者が異議申立てをすれば通常訴訟に移行します。従って手続きに向く事案は例えば訴訟になっても債権者に勝算がある等、「異議の申立てされる可能性が低い」ケースや「債務者との間で債務の存在や金額に争いがない」ケースとなります。

手続きに向かないケース

逆に督促内容に争いがある場合や、異議申立てされそうな場合には支払督促は不向きです。端から通常訴訟を選ぶのが得策でしょう。また請求額が60万円以下の事案では、原則一回の期日で決着がつく「少額訴訟」も利用可能なので選択肢に入れるべきと言えます。

ワンポイントアドバイス
支払督促は低コストで行える支払督促ですが、督促内容に争いがある事案や、異議申立てされる可能性が高い事案には向きません。

滞納して支払督促を受けたらどうしたらいいか

ここまでは、支払督促をする側の話をしてきましたが、逆に滞納してしまい、支払督促を受けてしまった場合はどうしたらよいのでしょうか。

速やかに督促異議申立書を提出する

ある日、突然、支払督促申立書が届いた場合、まずは支払督促に同意しないことを伝える、督促異議申立書を裁判所に提出する必要があります。支払異議申立書は、裁判所から届く支払督促申立書に同封されていることが多いので確認しましょう。もし、同封されていなければ、裁判所の窓口でもらえます。支払督促申立書の受取り後2週間以内に裁判所に到着する必要があり、それを過ぎると無効になるので早めに提出しましょう。

異議義申立書には次の内容を記載します。

  • 債権者の名前
  • 債務者の名前
  • 住所、電話番号
  • 異議申立て言い分

答弁書を送る

督促異議申立書の提出後、裁判所から訴状や答弁書、裁判所へ出廷する期日が記載された呼び出し状が届きます。
答弁書には支払督促に対して、いつ払えるかなど自分の希望を記載し、1部を裁判所へ、もう1部を債権者に送ります。答弁書は口頭弁論期日の1週間前までに送りましょう。
かりに、答弁書が用意できなくても、出廷した際にきちんと自分の希望が伝えられれば問題ありません。
出廷もせず答弁書も提出しなければ、支払督促申立書の内容で判決がでるので注意しましょう。

支払督促の注意点

支払督促は手続きも簡単で、費用も裁判の半額程度と安く済み、なおかつスピーディな解決が見込めます。しかし利用にあたっては必ず覚えておかなければならない点があるのです。

手続き上の注意点

ここまで解説してきた通り、支払督促の手続きそのものは簡単です。とは言え、気を付けないと申立てが却下されたり支払督促の効力がなくなってしまったりすることがあるので注意が必要です。

不備があれば手続きが無効になる

支払督促手続きにはいくつかの決まりがあり、これを守らないと申立ては却下されてしまうので覚えておきましょう。例えば前述したように、対象となる事案は金銭債権の請求に限られることです。それ以外の事案では申立てても却下されます。また申立て先の裁判所を間違えた場合も同様です。支払督促の申立て先は相手方の住所・主たる事業所・営業所の所在地を管轄する簡易裁判所の書記官です。間違えないようにしましょう。さらに、請求の趣旨が違法であった場合も当然却下されます。借金の取り立ての場合には利息制限法の規制に気を付けなくてはなりません。

仮執行宣言は迅速に申立てる必要がある

加えて、仮執行宣言の申立てはスピーディに行わなければならない点にも注意が必要です。と言うのも、支払督促が出されてから仮執行宣言の申立てをしないまま30日を経過すると、支払督促の効力がなくなってしまうのです。ですから支払督促の送達日時を問い合わせ、その日から2週間が経過したら間髪入れずに仮執行宣言の申立てをすることが大切です。

売掛金滞納には時効があるが、支払督促で時効の中断が可能

売掛金には発生してから消滅する時効があります。債務の内容によって異なりますが、例えば、小売業の売掛金は2年、工事代は3年たつと、売掛金が消滅時効となってしまうのです。ただし、支払督促をすることで、時効を中断することが可能になります。

費用倒れになるリスクもある

異議申立てがなされれば通常訴訟に移行することは既に説明した通りです。しかし問題はこの支払督促後の訴訟が行われるのが、相手方の住居地を管轄する裁判所であることです。

訴訟に移行した場合相手の住所を管轄する裁判所まで出向く

もし債務者が遠隔地に居住している場合だとわざわざ出向かなければならず、手間や費用がかかることになります。そして場合によっては赤字、つまり費用倒れになってしまうのです。

債務者がそれを見越して異議申立てしてくる可能性

とすれば、相手方もそれを分かった上で、“負け戦”になりそうな事案でも異議申立てをして訴訟に持ち込んでくる可能性があるのです。

ワンポイントアドバイス
支払督促の発付から30日以内に仮執行宣言をしないと手続きが無効になる点や、訴訟に移行した場合費用倒れになるリスクもある点に注意が必要です。

売掛金の滞納で支払督促を選ぶべきか迷ったら弁護士に相談

支払督促は、裁判所を通じた督促によって債務者の支払い意思を喚起する債権回収方法です。簡単・迅速・低コストでの解決が可能で異議申立てされる可能性が低いケース等には適していますが、督促内容に争いがある事案では他の回収方法を検討した方が良いと言えます。どの回収方法が適してるかについては、債権回収に強い弁護士に相談すると的確なアドバイスがもらえます。まずは、法律事務所の初回無料相談などを利用してみることをおすすめします。

債権回収を弁護士に相談するメリット
状況にあわせた適切な回収方法を実行できる
債務者に<回収する意思>がハッキリ伝わる
スピーディーな債権回収が期待できる
当事者交渉に比べ、精神的負担を低減できる
法的見地から冷静な交渉が可能
あきらめていた債権が回収できる可能性も
上記に当てはまるなら弁護士に相談