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認諾離婚とは?和解離婚との違いと認諾離婚になるケース

この記事で分かること

  • 認諾離婚も和解離婚も、離婚裁判の中で行われる。
  • 離婚裁判を起こした人の要求をそのまま受け容れるのが認諾離婚である。
  • 認諾離婚ができない場合がある。
  • 認諾離婚はレアなケースである。
  • 離婚裁判になった段階で、まず弁護士に相談することが大切である。

離婚裁判の中で行われる離婚として認諾離婚と和解離婚があります。それぞれメリットと デメリットがあります。軽率に認諾離婚や和解離婚をすることは、大変危険です。離婚裁 判になった段階で、まず弁護士に相談することが肝心です。

認諾離婚とは

離婚といえば、協議離婚、調停離婚、裁判離婚が思い浮かぶかと思います。それらの他に、認諾離婚というものがあります。あまり聞き慣れない言葉かもしれません。そこで、認諾離婚とはどのようなものかについて解説します。

認諾離婚は離婚裁判の中で行われる

認諾離婚は、家庭裁判所での離婚裁判の手続の中で行われる離婚です。認諾離婚によって、離婚という裁判の目的は達成されます。従って、認諾離婚によって離婚裁判は終了します。

離婚要求をそのまま受け容れるのが認諾離婚の特徴

民事裁判を起こした人(原告)の要求について、相手方(被告)は、裁判の席で、これを少しも変えることなく、そのまま受け容れることができます。これを認諾といいます。
 
離婚裁判でいえば、原告の「離婚したい」という要求について、裁判の席で、被告が「原告の要求を認める」と述べることが認諾に当たります。「A子との再婚が決まれば、原告の要求を認める」などと条件を付けることは、認諾に当たりません。

認諾が調書に記載されたときに認諾離婚の効力が生ずる

離婚裁判において、被告が、原告の離婚要求を認諾することを述べると、裁判所書記官が、これを調書という書面に記録します(認諾調書)。この時点で、原告と被告の離婚が成立し、両者は夫婦でなくなります。認諾調書の作成によって成立する離婚という意味で「認諾離婚」と呼ばれます。

他の離婚方法との比較

 
認諾離婚を、他の離婚方法と比べると、次のようになります。

協議離婚 調停離婚 裁判離婚 認諾離婚
成立する場所  裁判所外  裁判所内 裁判所内 裁判所内
手続 協議 調停 裁判 裁判
成立する時 いつでも 調停の最後 裁判の最後 裁判の途中
成立の書式 離婚届 調停調書 判決 認諾調書
ワンポイントアドバイス
認諾調書の作成だけでは、戸籍に離婚の記載はされません。戸籍に記載してもらうには、認諾離婚成立から10日以内に、原告が、家庭裁判所から認諾調書謄本をもらって市区町村役場に行き、離婚届を提出しなければなりません。離婚届が受理されると、双方の戸籍に、認諾離婚をしたことが記載されます。

認諾離婚ができないケース

離婚裁判の流れによっては、認諾が認められない、つまり認諾離婚ができない場合があります。それはどのような場合なのでしょうか。

離婚に関連する問題(親権・養育費・財産分与など)が審理されているとき

離婚裁判での原告の要求は「離婚する」ということです。従って、被告が認諾できるのは、離婚そのものについてです。

離婚に際して、親権者・養育費・財産分与などを決めなくてはならないケースが多くあります。離婚裁判において、夫婦間に未成年の子供がいる場合、裁判所は、申立てがなくても、親権者を指定しなければなりません。また、原告の申立てがあれば、裁判所は、養育費や財産分与など(離婚に附いて回る事柄という意味で「附帯処分」と呼ばれます。)についても審理の対象として取り上げ、離婚と併せて判断することができます。

離婚裁判において親権者指定や附帯処分が審理の対象になっているときは、被告は認諾をすることができず、認諾離婚はできません。

親権者指定などの審理があると認諾離婚ができない理由は?

こうした場合に認諾を認めると、離婚裁判が終了してしまい、離婚そのものについては決着がつくものの、親権者指定や附帯処分については決着がつかずに取り残されてしまいます。原告は改めて、親権者指定などの審判・調停を家庭裁判所に申し立てなくてはならず、手間ひまや費用の負担が増えてしまいます。

親権者指定や附帯処分も離婚と一緒に解決することが当事者にとっては好都合と考え、認諾離婚は認められないとされたわけです。

ワンポイントアドバイス
最高裁判所の統計によれば、附帯処分として申立てがされるのは、養育費と財産分与が圧倒的に多く、面会交流、子の引渡し、監護者の指定はわずかです。親権者の指定は本来、申立てを必要としないのですが、実務では、原告の意思を裁判所に対して示す意味で、申立てがされています。どのような申立てをするかについては、弁護士にしっかり相談しましょう。

認諾離婚と和解離婚の違いは?

認諾は原告の要求を受け容れることですが、ニュアンスの似た言葉として「和解」というものがあります。和解による離婚を和解離婚といいます。ニュアンスの似た認諾離婚と和解離婚。両者にはどのような違いがあるのでしょうか。

和解離婚とは

和解離婚も、離婚裁判の手続の中で行われる離婚です。和解離婚によって、離婚裁判は終了します。

離婚裁判でいえば、原告の「離婚する」という要求について、原告と被告が互いに歩み寄って、離婚すること、および裁判を終了させることに合意することが和解に当たります。

和解が成立すると、裁判所書記官が、これを調書という書面に記録します(和解調書)。この時点で、原告と被告の離婚が成立し、両者は夫婦でなくなります。和解調書の作成によって成立する離婚という意味で「和解離婚」と呼ばれます。

和解離婚成立から10日以内に、市区町村役場に離婚届が提出・受理されると、双方の戸籍に、和解離婚をしたことが記載されます。

「協議離婚をする旨の和解」との違い

和解離婚によく似た言葉の和解として、「協議離婚をする旨の和解」があります。協議離婚をする旨の和解の場合、和解離婚とは異なり、和解調書が作成された時点で離婚は成立しません。和解に従って協議離婚届が市区町村役場に提出・受理された時点で初めて、離婚が成立します。

認諾離婚と和解離婚はどこが違う?

共通点が多い認諾離婚と和解離婚ですが、離婚方法としては別物です。両者の違いは、どんなことなのでしょうか。

3つの違いを挙げることができます。

認諾離婚は被告が述べることだけで成立する

被告が、裁判の席で、原告の請求をそのまま受け容れることを述べるだけで、認諾離婚は成立します。原告が何かを述べることは必要ありません。これに対し、和解離婚は、原告と被告の述べることが一致し、合意した時点で成立します。原告被告の双方が述べることが必要です。

認諾離婚では、被告の意思は裁判官に向けて示される

認諾離婚では、原告の請求をそのまま受け容れようという被告の意思が、裁判官に向けて示されます。これに対し、和解離婚では、歩み寄って合意しようという意思が、当事者の間で互いに示されます。

認諾離婚では、原告が要求を曲げることはない

認諾離婚では、被告が、原告の要求を受け容れることを述べるだけで、原告が要求を曲げることはありません。これに対し、和解離婚では、原告と被告が互いに歩み寄って、要求を曲げ合うことで、合意に至ります。

ワンポイントアドバイス
離婚裁判の途中で、裁判所は、いつでも和解を試みることができます。裁判官が、和解で解決しようと提案したり、このような解決ではどうかと和解案を示すことがあります(和解勧告)。和解勧告を受け容れるべきかどうかは、軽率に判断できません。弁護士にしっかり相談しましょう。

認諾離婚になるケース

認諾離婚は、被告のひと言で離婚が成立し、離婚裁判も終わるという、一風変わった離婚方法です。実際に認諾離婚になるケースとは、どのようなケースなのでしょうか。

認諾離婚はレアケース

政府の調査によると、2017年の全国離婚総数21万2262件のうち、認諾離婚はわずか9件、割合にして0,0042%、10万件に4件という、とてもレアな離婚方法です。

認諾離婚がレアな理由として、次の3つが考えられます。

離婚裁判にまでなるのは、被告の離婚拒否が強い証し

 
認諾離婚は、離婚裁判の中で行われる離婚です。離婚裁判になるのは、協議離婚の話し合いも離婚調停もうまくいかなかったからです。そこには、離婚に応じないという被告の強い気持ちがあります。従って、離婚裁判になっても、認諾を期待することはできません。

認諾は裁判の席で行わなければならない

認諾は、裁判の席で裁判官に対して述べる形で行わなければなりません。被告に認諾の意思があっても、裁判所に行くことに抵抗があると、結局は認諾ができません。

親権者指定などが審理されているため認諾離婚ができない

離婚裁判において親権者指定、養育費、財産分与などについて審理されているときは、認諾離婚はできません。離婚裁判になるくらい争いの度合いが高いのに、親権者の指定などについて審理の必要がないというケースは、ほとんどありません。

レアな認諾離婚をあえてする理由は?

レアな認諾離婚ですが、わずかとはいえ2017年には9件の認諾離婚がありました。この9件において、9人の被告が認諾をしたのはなぜなのでしょうか。

2つの理由が考えられます。

親権者指定などが審理されていない

離婚そのものの他に、親権者指定、養育費、財産分与などについて審理されている場合には、認諾ができません。

子供がいないので親権者や養育費の問題が生じない、財産分与については当事者間で話がついている、という場合には、これらの問題は審理されないので、認諾ができます。認諾した9件は、こうしたケースであったものと思われます。

被告が認諾をする気持ちになった

親権者指定などが審理されていなくても、被告に認諾の意思がなければ、それまでです。裁判離婚にまでなる背景には、被告の離婚に対する強い拒否感があるはずです。それにもかかわらず、被告が離婚を受け容れて、認諾しようと思うのはなぜなのでしょうか。

9人の被告が認諾をすると決めた時、被告たちには次のような気持ちがあったものと思われます。
「最初から離婚に応ずる気持ちはあった。ただ、相手の態度が気に入らなかったので、協議離婚に応じず、離婚調停にも行かなかった。だから、判決で離婚させられるよりは、離婚の要求を受け容れたほうが、自分の気持ちに正直といえる。」

「最初は離婚はイヤだったけど、今は離婚に応ずる気持ちへと変わった。判決で離婚させ
られるよりは、離婚の要求を受け容れたほうが、自分の気持ちに正直といえる。」

「今でも離婚はしたくない。だけど、裁判が終わるまでにはかなりの時間がかかりそう。戸籍に裁判離婚と書かれるのもイヤだ。裁判所に行くことは弁護士さんに任せればよいけれど、被告という立場にあること自体が不愉快。争いの渦中に身を置くことでストレスだらけの毎日だ。だったらこの際、離婚の要求を受け容れて、気持ちをスッキリさせ、人生の再スタートを切ったほうがお互いのためかもしれない。」

ワンポイントアドバイス
認諾離婚は、相手の要求をそのまま受け容れるという、思い切った解決方法です。離婚問題が早く解決する反面、自分の要求が全く反映されないという面もあります。認諾離婚すべきかどうかは、慎重に判断する必要があります。もしもそういう場面になったら、ためらわずに弁護士に相談しましょう。

離婚裁判を有利に進めるには弁護士に相談を

離婚裁判では、手続の中で、認諾離婚や和解離婚をすべきかどうかという場面に突き当たる可能性があります。認諾離婚と和解離婚には、それぞれメリットとデメリットがあります。自分ひとりで軽率に判断することは、とても危険です。離婚裁判になった段階で、法律と裁判の専門家である弁護士に相談することが第一です。

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