2018/8/21 31view

生前に相続放棄はできる?相続したくない場合の生前にできる相続対策

この記事で分かること
  1. 被相続人の生前は相続放棄できない
  2. 相続放棄をしなくても遺産を受け継がないことはできる
  3. 相続させたくない、という場合は遺言や生前贈与で対策しよう

相続放棄は相続の権利をなかったことにする手続きで、しかも相続放棄を撤回することはできません。そのためか相続放棄は相続開始後に限られています。だから相続放棄したい時は被相続人の死後すぐに行動できるよう準備しておくと良いです。また、誰かに相続させたくない時も被相続人の生前から対策可能です。

生前の相続放棄は不可、できるのは相続を知ってから3ヶ月間のみ

遺産を継ぎたくない、遺産分割は他の相続人でやれば良いと思っている、遺産より債務が多すぎて相続する意味がない…などの事情があるときに用いられる相続放棄ですが被相続人が生きているうちから相続放棄したいことはよくあります。特に借金を引き継ぐことになりそうな場合はすぐにでも相続放棄したいでしょう。

しかし、生前の相続放棄はできません。たとえ相続放棄をする旨の念書や契約書があったとしても効果が否定されるのです。

生前に相続放棄できない理由と相続放棄の注意点いついてもう少し詳しく解説します。

相続放棄ができるのは相続開始を知ってから3ヶ月以内

生前に相続放棄できない理由は民法第915条にあります。

第915条

① 相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。ただし、この期間は、利害関係人又は検察官の請求によって、家庭裁判所において伸長することができる。

② 相続人は、相続の承認又は放棄をする前に、相続財産の調査をすることができる。

民法第915条一項にある通り相続放棄は相続の開始を知ってから3ヶ月以内の期間でしなくてはいけません。相続の開始とは被相続人の死亡を指すため生前の相続放棄は認められていないのです。

相続放棄をするかどうかは財産の内容を調べてから決められますが、相続放棄の手続きでは財産や負債についての概要を申述する義務があります。

第二順位、第三順位の相続人は被相続人の死後ですら相続放棄できないことも

相続が開始するのは民法において相続人と定められた人だけです。例えば被相続人に子がいる場合それより順位の低い兄弟姉妹は相続人にならないため被相続人の死後もしばらく相続放棄ができません。兄弟姉妹が相続放棄できるのは法定相続人としての順位が高い子や直系尊属が全員相続放棄をした後です。

そのくらい厳格に運用されています。

相続が開始していないのに相続放棄の意思表示はできない

相続放棄を生前に認めてしまうと、親族がプレッシャーをかけて相続放棄させようと企むでしょう。もしかしたら法知識がない人を騙して合意させたり、財産を隠した上で相続放棄に合意させることも考えられます。しかし、相続放棄ができるのは相続が始まった後なので相続の権利を持たないうちにした念書や契約書は無効です。

念書や契約書を書かされた場合もそれが無効であることは主張できますし、そもそも強制的に合意させられた契約は効力を取り消すことができます。

ちなみに、相続放棄が有効になるためには家庭裁判所に申述して受理されなくてはいけません。

ワンポイントアドバイス
被相続人の生前に相続放棄できないのは、大元である民法の規定が根拠です。よって、面倒でも相続開始を知ってから3ヶ月の間に手続きしてください。家庭裁判所への書類提出は手渡しでも郵送でも可能です。

相続放棄をスムーズに行うため生前からできること

相続放棄をスムーズに行うため生前からできることはあります。相続放棄は意外と手間のかかる手続きなので被相続人の生前から準備してけば余裕を持って申述できるはずです。

必要書類を把握しておく

相続放棄に必要なのは申述書と被相続人や相続人の戸籍謄本、被相続人の住民票除票です。戸籍謄本については相続人の続柄によって被相続人・相続人それぞれの集めるべきものが異なるので事前に調べてミスをなくしましょう。

相続放棄の申述が受理されないと債務から逃れられません。

戸籍謄本の取り寄せ手順を把握しよう

戸籍謄本の取り寄せは本籍のある役所に申請するだけです。ところが、法定相続人の数が多かったり疎遠な人がいたりで戸籍謄本の取り寄せに手間取ってしまうことがあります。特に直系尊属と兄弟姉妹が相続放棄する場合は被相続人の生まれてから亡くなるまでの戸籍謄本が必要な上、自分より上位の相続人全ての戸籍謄本が求められます。

相続が開始すると精神面でも体力の面でも疲れてしまいますから、できれば生前のうちにシミュレーションしておきましょう。

財産目録を作っておく

相続放棄の申述書には財産の概略を記載する場所があります。事前に財産目録を作っておくと良いでしょう。財産目録を作ってしっかり計算することで相続放棄でなく限定承認が良い場合や、想像以上に債務が多かった場合も慌てずに対応できます。

相続財産を把握できずにこまるケースは多いので、相続放棄しないとしても早めに作成しておきたいです。

債務整理をしておく

債務を受け継ぎたくないのであれば被相続人が生前のうちに債務整理しておけば良いです。債務整理は借金の減額あるいは免除ができる制度なので相続人の負担を大幅に減らせます。
債務整理には利息だけをカットする任意整理、債務を減額する個人再生、債務を免除する自己破産があります。それぞれの効力に応じたデメリットはあるのですが相続が近いのなら債務が免責される自己破産がおすすめです。ブラックリストに載ることもそこまでデメリットにならないはずです。

遺産を受け取らないだけなら相続放棄は不要

そもそも自分が遺産を受け取りたくないだけなら相続放棄しなくて良いです。なぜなら遺産分割は相続人の合意によって自由に決められるからです、よって遺産を受け取りたくないなら遺産分割協議書に自分の取り分を書かず、署名捺印をすれば大丈夫です。

ただし、このような場合は積極的に相続放棄した方が良いでしょう。

遺産分割協議が長引きそう

遺産分割協議は相続人全ての合意が必要です。遺産分割協議が長引くといつ相続できるのか煩わしくなりますし、相続争いが起きると相続人の一人として巻き込まれかねません。

そのようなストレスに耐えてまで得たい遺産なのか考えた方が良いです、

有効活用できない財産を押し付けられそう

時には辺鄙な場所にある土地やぼろぼろの空き家を押し付けられることもあるでしょう。不動産は相続すると売るまで手放せませんから、自分の得にならない相続をするくらいなら相続放棄しましょう。

ワンポイントアドバイス
相続放棄をしなくても遺産相続を拒否できます。しかし、相続放棄をしないことで遺産分割協議が長引いたり相続争いが起きたり、換金しづらい不動産を押し付けられたりすることもあります。

相続放棄の意思決定を素早く行いたいなら生前のうちに財産を把握し必要書類を取り寄せる準備をして起きましょう。

相続させたくない家族がいる場合は相続放棄を迫る以外どんな生前対策があるのか

自分が相続したくない場合のほか、他の相続人に相続させたくない場合も相続放棄の是非が争点となります。相続放棄はここまで説明してきた通り相続開始後しか行えません。相続放棄を迫ったとしてもそれは有効にならないでしょう。

そこで、遺産相続するに望ましくない相続人がいる場合は生前にこのような対策ができます。

生前贈与をしてしまう

相続を誰かにさせたくないなら、あらかじめ他の相続人に生前贈与することが有効です。贈与は被相続人の意思で自由にできますから、生前贈与で財産を分けきれば望ましくない相続を防げます。

ちなみに、生前贈与には相続開始までの3年間に行われたものを相続税の計算に用いる規定がありますが贈与契約そのものは有効です。特別受益を主張されても贈与した財産は守れます。

遺言を書く

被相続人は遺言によって相続財産の分け方を自由に決められます。被相続人の遺言で、ある特定の相続人に一つも財産を分けないこともできます。遺言は法的拘束力を持つため遺産分割協議で覆せません。つまり相続争いもある程度避けられます。

ただ、遺言を以てしても相続人が持つ最低限の権利である遺留分減殺請求権は奪えません。そのため、幾らかの財産を奪われてしまうことは避けられないでしょう。

遺留分の放棄は生前にできるのですが裁判所で手続きしなければいけませんし、わざわざ不利益になるような契約に応じさせなければいけないのですから相応の交渉スキルが求められます。

ちなみに兄弟姉妹は遺留分減殺請求権を持ちません。

相続人の廃除を申し立てる

「この人にだけは相続させたくない」と考えている時点でその相続人が良からぬ人物であることが想像できます。民法ではあまりにも悪質な相続人から相続人の地位を奪うことが認められています。これが相続人の廃除です。(排除ではありません)

相続人の廃除はこのような相続人について家庭裁判所に申し立てます。

  • 被相続人を虐待した、重大な侮辱を与えた
  • 被相続人の財産を勝手に処分した
  • 著しい非行を行なっていた

もちろん、好き嫌いの感情だけでは認められず客観的に廃除すべき理由が必要です。

相続人の廃除は被相続人が請求して行われますが以下のような事情がある場合は強制的に相続人の地位を奪われます。こちらを相続欠格と言います。

  • 被相続人や相続人を殺した
  • 被相続人を遺棄して死に至らしめた
  • 遺言書の偽造、改竄などを行なった
  • 被相続人に対し脅迫・詐欺を用いて遺言を操作した
ワンポイントアドバイス
ある相続人に遺産を渡したくないなら相続人の廃除を申し立てるのが良さそうですが、相続人の廃除が認められるにはよほどの理由が必要です。そのため、生前贈与や遺言で対策をした方が効果的と言えます。

相続人の廃除に当たりそうなことが起きているなら弁護士に判断を仰ぐのがベターです。

生前から対策すれば相続は楽になる。相続放棄を考えているなら弁護士に相談しよう

相続放棄は相続開始後しかできない手続きです。しかし、相続放棄について生前から対策しておけば滞りなく手続きを終えられます。また、相続をしたくないけれど相続放棄の期限を過ぎてしまった場合や自分以外の相続人に遺産を渡せない事情がある場合も制度をうまく活用すれば被相続人および相続人に望ましい結論を導けます。

相続はどの家庭にもあり問題になりやすい案件なので、生前から弁護士に相談しておくことを勧めます。相続事例に詳しい弁護士なら対処に困った問題にきめ細やかなサポートが期待できます。

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