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離婚慰謝料の時効は離婚成立から3年!慰謝料請求期限の注意ポイント

この記事で分かること

  • 離婚慰謝料は離婚後でも請求できますが、離婚後から3年の請求期限があることに注意が必要です。
  • 離婚後3年が経過すると自動的に請求権が消滅するのではなく、時効を止めることもできます。
  • 婚姻関係が継続していれば、配偶者への慰謝料請求に時効はありません。

離婚後に慰謝料請求する場合は、離婚が成立したときから3年の時効に注意しなければなりません。また、時効を停止・中断する方法についても知っておきましょう。

離婚慰謝料の時効は3年!起算点はいつ?

起算点とは、時効の計算がはじまるスタートのこと。離婚慰謝料の請求期限が3年間ということは耳にしたことがある方も多いかもしれませんが、時効を考えるときに大切なのは、どの時点からカウントがはじまるか、ということです。

離婚慰謝料の時効開始は離婚が成立したときから

民法の規定に照らし合わせて考えると、慰謝料を請求する権利は、法律に違反する行為(=不法行為)によって損害を被ったことを知ったときから3年間は行使できるといえます。離婚の場合、「相手の不法行為(たとえば、不倫やDVなど)によって離婚という損害を被った」といえるので、離婚慰謝料の時効の開始は、離婚が成立した日(=損害を被ったとき)となります。

つまり、離婚の成立日から3年が経てば慰謝料の請求権は消滅し、それ以降の請求は難しくなりますが、3年以内であれば、離婚後でも慰謝料の請求は可能だといえます。

離婚しない場合も慰謝料は請求できる

慰謝料は、不法行為によって損害を被ったときに、その賠償として金銭を請求するものです。そのため、たとえば、相手の不倫やDVなどによって精神的苦痛を受けたり、別居などの夫婦関係の破綻につながったりした場合は、離婚までには至らなくても慰謝料を請求できます。

不倫を例にとると、不倫という夫婦の貞操義務に違反する行為自体に精神的苦痛を負ったときは、不倫(不法行為)の事実を知った時点から3年間が時効となります。不倫により夫婦関係が破綻してしまった(別居に至ったなど)ときは、夫婦関係が破綻した時点から3年間が時効です。

配偶者に不倫されたときは、不倫相手にも慰謝料を請求できます。しかし、あなたが不倫相手の名前や顔、住所などを特定できている場合、その時点から3年で時効により慰謝料請求権が消滅してしまうことに注意が必要です。

ただし、不倫が直接的な原因となって最終的に離婚した場合は、離婚したことで被った精神的苦痛に対しても慰謝料を請求できます。この場合、不倫の事実を知ってから3年が経過していても、離婚成立から3年間は、不倫相手に対しても慰謝料を請求できる可能性があります。

また、配偶者に対して不倫の慰謝料を請求する場合は、婚姻関係が継続する限り時効はありません。不倫の事実を知ったときから3年などの期間の制限はないため、たとえ別居していても、法律上の夫婦である限り配偶者に対しては慰謝料請求が可能です。

ワンポイントアドバイス
時効が成立した後でも慰謝料を請求する手立てがまったくないわけではありませんが、請求が認められる可能性が低くなってしまいます。「慰謝料を請求したいが、やり方がわからない」などの場合は、なるだけ早めに弁護士などの専門家へ相談しましょう。

離婚慰謝料の時効を止める方法

離婚慰謝料を請求したいが、時効の成立が間近に迫っている……そのようなとき、実は、時効が成立するまでの期間を延長したり、更新したりすることが可能です。

時効の停止(完成猶予)とは

時効の停止とは、わかりやすくいえば、時効の計算をいったん止めることを指します。法律上の「催告(慰謝料を請求してくださいという要求)」という手続きを行うと、その時点で、一定の期間は時効の計算が猶予されます。

時効を停止する方法

催告は、郵便局が文書を送った日付や内容を公的に証明してくれる、内容証明郵便の送付で行うのが一般的です。慰謝料を請求したい相手に対して内容証明郵便を送ると、その時点から6ヵ月間は時効の計算が猶予されます。

重要なのは、時効が停止する6ヵ月間はあくまでも、時効が成立するまでの猶予期間にすぎないという点です。6ヵ月の間に法的な手続きを一切取らず、相手も慰謝料の支払いを認めない場合は、時効が停止していた期間はなかったものとされます。

時効が停止している6ヵ月の間も、時効期間のカウントは続いていることがポイントです。そのため時効の停止は、時効成立までの期間が間近に迫っているときの対策としては有効ですが、6ヵ月の猶予期間に何らかの法的措置をとることが重要になります。

時効の中断(更新)とは

一方で、時効の中断とは、時効期間の計算がいったんストップし、さらにその時点で時効のカウントが0に戻ることを指しています。離婚慰謝料の請求の場合は、時効を中断するとその時点からさらに3年、時効成立までの期間が延長します。

時効の中断に必要なのは、提訴や支払督促、離婚慰謝料の調停成立、差押など、法的な手続きです。このほか、慰謝料を請求された側が支払いを認めた場合も、その時点で時効の中断となります。

ワンポイントアドバイス
離婚慰謝料の請求期限が間近に迫っている場合は、まず請求する相手に内容証明郵便を送付し、その後に時効の中断に必要な手続きを進めましょう。6ヵ月という限られた猶予期間の中で法的措置をスピーディーに進めていくには、弁護士など専門家の力を借りるのがベストです。

時効が成立した後でも離婚慰謝料は請求できる

時効が成立してしまう前に請求を行うのが確実ではありますが、時効が成立してしまった後でも、相手に慰謝料を払ってもらえる可能性はあります。

時効の援用について

より厳密にいうと、時効期間が経過するだけでは、不法行為を行った相手の慰謝料を支払う義務が完全になくなるわけではありません。慰謝料を請求された側が「時効により、慰謝料の支払いは行いません」という意思表示をしてはじめて、あなたの慰謝料請求権が消滅するのです。これを、時効の援用といいます。

つまり、相手が時効の成立に気づいていなければ、離婚の成立から3年経った後でも、慰謝料を支払ってもらえる可能性があります。ポイントは、相手が「支払いを待ってほしい」といってきたり、慰謝料の一部を支払ってきたりなど、慰謝料を支払う姿勢を見せてきたときは、その時点で時効の成立が無効になる点です。

そもそも時効が成立していた事実がなかったことになるのですから、後から相手が「離婚してから3年経っていたので、やっぱり払わない」などといってきても、その主張は法的に認められません。

離婚慰謝料を確実に支払ってもらうには

離婚後でも時効が成立する前であれば、慰謝料の請求は可能です。しかし、より慰謝料の獲得を確実なものにしたければ、やはり離婚届を提出する前に慰謝料についても話し合っておくのが最良の選択といえるでしょう。なぜなら、法律上の婚姻関係が継続する限り、離婚慰謝料の請求権が時効により消滅することもないからです。

もちろん、「慰謝料などは後からでも請求できるなら、とにかくまずは離婚を」という考え方も、状況によっては一理あるかもしれません。しかし、相手が連絡先や住所なども知らせず離婚後に行方がわからなくなり、成す術がないまま時効が成立してしまうこともあります。

離婚届を提出する前であれば、夫婦の話し合いで折り合いがつかない場合も、財産分与や養育費などその他の離婚問題と慰謝料請求も同時に、調停や裁判で一度に解決してしまうことが可能です。離婚後の生活に憂いを残さないためにも、離婚に関連した問題がすべて解決してから離婚届を提出する、と心得ておくのがよいでしょう。

ワンポイントアドバイス
離婚前と離婚後に請求が認められた離婚慰謝料の額を比較すると、離婚後のほうが、離婚前よりももらえる金額が低くなる傾向にあります。金銭的なメリットからいっても、慰謝料請求は離婚前に済ませておくのがベストです。

時効間近の離婚慰謝料請求は弁護士に相談

ここまで見てきたとおり、時効の成立条件や時効の停止・中断の考え方は非常に複雑です。理解も容易ではない上に、実際に法的な手続きを進めていくとなると、一般の方にはなかなか難しいところがあります。特に、時効が迫っているとなると迅速な対応が求められますから、離婚成立後の慰謝料請求は弁護士に相談すると安心です。

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