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審判離婚とは?利用シーンと調停離婚や裁判離婚との違い

この記事で分かること

  • 審判離婚では、裁判官が離婚やその他の条件に関して決定を下します。
  • 審判離婚による離婚の決定は、夫婦の一方の異議申し立てで無効にできます。
  • 離婚について夫婦の合意が得られているときや、国際離婚などで適用されることが多くあります。

離婚調停を経て、裁判官の判断により離婚が決定する審判離婚。しかし、裁判離婚と比較するとその効力は弱く、実際に利用されるケースはほとんどありません。では、審判離婚が望ましいとされる離婚のケースとは、いったいどのようなものなのでしょうか?

審判離婚の特徴と離婚成立までの流れ

まずは、そもそも審判離婚とはどのような離婚の方法なのか、その特徴や離婚成立までの流れを解説していきます。

審判離婚とは

審判離婚とは、離婚調停が不成立となったときにとられる離婚の方法です。調停が不成立となった場合、通常は改めて裁判を行わなければ離婚は認められません。しかし、審判離婚では、調停での話し合いの内容を含めその他一切の事情を考慮し、裁判官の判断で離婚を認めることができます。審判での決定には、裁判での判決と同じく法的拘束力があります。

審判離婚により離婚が成立するまでの流れ

審判離婚の開始から離婚成立までの流れは次のとおりです。

審判離婚の申し立て

家庭裁判所へ「審判申立書」を提出し、離婚に対する審判の申し立てを行います。

異議の申し立て

審判での決定に納得できない場合は、審判後2週間の期間内に限り、異議申し立てが可能です。この期間に夫婦のどちらからも異議申し立てがなされなければ、審判後2週間がたった時点で審判が確定し、離婚成立となります。

離婚届の提出

審判確定日から10日以内に、裁判所から発行される審判確定証明書と審判書謄本を添えて、役所へ離婚届を提出すれば、離婚手続きは完了となります。

ワンポイントアドバイス
離婚調停などとは異なり、離婚審判は望めば誰もが申し立てられるものではありません。審判離婚を行うべきかどうかの判断は裁判官にゆだねられており、審判離婚が妥当なケースだと裁判官が判断した場合のみ、申し立ての手続きに進むことが可能です。

審判離婚と調停離婚・裁判離婚との違い

審判離婚の方法がとられるのは、非常に特別なケースに限られています。では、審判離婚よりも一般的な調停離婚や裁判離婚とは、どのような違いがあるのでしょうか?

調停離婚との違い

調停離婚は、調停委員と呼ばれる第三者に間を取り持ってもらうとはいえ、話し合いが基本です。そのため、離婚するかしないかの最終的な判断は、夫婦のそれぞれにゆだねられています。

一方で、審判離婚の場合、審判のベースに調停があるとはいえ、離婚が妥当だという判断を下すのは裁判官です。最終的な決定権が当事者ではなく裁判官にあることが、離婚調停とは異なる審判離婚の特徴です。

裁判離婚との違い

裁判官に最終的な決定権があること、確定審判に法的な拘束力があることは、審判離婚と裁判離婚との共通点です。一方で、主に次の2点において、審判離婚と裁判離婚とには大きな違いがあります。

審判での決定は無効にできる

離婚裁判での決定は、簡単には覆すことのできないものです。どうしても納得できない場合は原則1回に限り再度裁判で争うことができますが、第二審でも離婚が認められれば、夫婦それぞれの合意には関係なく、その時点で離婚が成立します。

一方、審判離婚の場合、審判による決定に不服がある場合、審判後から2週間以内であれば異議申し立てが可能です。そして、夫婦のいずれかが異議申し立てを行った時点で、審判による決定は無効となります。

また、審判の異議申し立てに、明確な理由は必要ないとされています。単に納得ができないからという事実だけでも、審判での決定が簡単に覆されてしまう可能性があるのです。

ただし、異議申し立てができるのは離婚の可否についてだけであり、慰謝料や財産分与などその他の離婚問題の審判に不服があるときは、高等裁判所へ再審請求を行う「即時抗告」となります。即時抗告の場合、不服を申し立てたからといって、審判の決定がすぐに無効になることはありません。

審判での裁判官の裁量権は限定的

裁判の場合、夫婦それぞれの合意などには関係なく、さまざまな事情を考慮して、裁判官により離婚やその他の条件について判決が下されます。一方で、審判の場合、最終的な決定権が裁判官にあるとはいっても、裁判官は夫婦のそれぞれが申し立てた内容から逸脱するような決定を下すことはできません。

ワンポイントアドバイス
審判離婚の制度がなかなか活用されていない背景には、決定が簡単に無効にできてしまうなど、審判離婚そのものの効力の弱さが大きな要因としてあります。

審判離婚の意義とメリット

審判離婚の効力の弱さから考えると、わざわざ審判離婚を活用する意味が見出せないかもしれません。しかし、審判離婚にもきちんと制度の目的やメリットがあります。

審判離婚の意義は調停での話し合いを最大限結果に反映させること

審判離婚を適用する最大の目的は、調停での話し合いの結果を離婚という結果に反映させることだといえます。離婚調停では離婚の合意のほか、慰謝料や財産分与、親権や養育費など、離婚に付随するさまざまな問題について話し合い、条件を決めていきます。

そのため、すでに夫婦の双方から離婚の合意は得ているものの、そのほかの条件面で折り合いがつかないために、調停不成立=離婚が認められない状況に陥ることもあります。

しかし、数ヶ月にわたり離婚成立に向けて話し合いを重ねてきたのにもかかわらず、条件面などでのちょっとした意見の違いから調停が不成立に終わってしまうのでは、調停離婚という制度自体の意義が希薄になってしまうでしょう。

そこで、夫婦それぞれの申し立ての内容に反しない範囲において、裁判官の裁量で離婚を認める審判離婚という制度が用意されているのです。

裁判離婚と比較した場合の審判離婚のメリット

また、審判離婚には、裁判離婚にはない次のようなメリットもあります。

裁判よりも手続きが簡単

訴訟を提起する手続きは、さまざまな法手続きの中でも特に難しいものです。一方で、離婚審判の場合、申し立ての手続きは調停とほとんど変わらず簡易的なものであり、また、申し立てにかかる費用も非常に少額で済みます。

夫婦双方のプライバシーが守られる

裁判は原則として公開で行われるため、離婚裁判の場合は夫婦のプライバシーが公にさらされることがデメリットのひとつとして挙げられます。一方、離婚審判は公開では行われないため、それぞれのプライバシーが脅かされることのない点もメリットといえます。

ワンポイントアドバイス
離婚裁判となれば、判決が出るまでに1~2年はかかるとされていますが、離婚審判の場合は審判後から2週間以内には離婚が確定するため、よりスピーディーな解決が望めます。

審判離婚が利用される具体的なケース

実際に審判離婚が活用されるケースとして、具体的な事例を3つご紹介します。

調停成立時に夫婦が出廷できない

すでに調停で話し合いをまとまっているものの、仕事の都合やけが・病気など何らかの理由で調停成立時に夫婦の一方、またはどちらも出廷できないときは、審判離婚が利用されることがあります。

また、一方が離婚に同意していない場合でも、調停期間を延長するため、相手を困らせるためなど、悪意を持って意図的に調停に出廷しないときは、審判を行うのが妥当だと判断されることがあります。調停の申し立て後に相手が行方不明になってしまい、今後の調停への出廷の見込みがないケースなども同様です。

夫婦の一方が外国人である

日本人と外国人の国際結婚の場合、外国人は日本と自国の両方で、その国の法律に則った離婚手続きを進めることで、正式に離婚が成立します。しかし、海外のほとんどの国には協議離婚や調停離婚といった、夫婦間の話し合いで離婚が成立する法律の規定がありません。そのため、協議離婚や調停離婚で離婚する場合は、外国人が自国に戻った際、その国ではまだ離婚が成立していないことになります。

日本でも相手の国でも離婚を成立させるためには、裁判離婚(=裁判所を介した離婚手続き)を行うのが確実です。とはいえ、離婚裁判には離婚成立までに時間も費用もかかってしまうことから、国際離婚の場合は、裁判官の判断で審判離婚が利用されることもあります。審判というかたちで裁判所が離婚に関与することで、相手側の国の法律にも対応することができるのです。

夫婦が子どもの親権を争っている場合

夫婦に未成年の子がいる場合、子どもの親権者を確定しなければ離婚は成立しません。また、状況によっては、親権者を早く決めなければ、子どもに生活環境などに悪影響が出るケースもあります。夫婦の双方が離婚には合意しているが親権で争っているという場合も、審判離婚が利用されるケースのひとつです。

ワンポイントアドバイス
親権者を決定するための調停では、調停が不成立となった場合は裁判官の判断にかかわらず、自動的に審判へと移行します。

離婚問題の解決は弁護士に相談

裁判に比べて手続きが簡単なため、一般的には弁護士に依頼しなくても進められといわれる離婚調停。しかし、実際には、調停委員を納得させて離婚を有利に進めるために、法律の専門家である弁護士の力がカギとなるケースは多いのです。調停から弁護士に依頼しておけば、その後に審判や裁判となった場合も、あわてずに対応することができるでしょう。

離婚を検討している方は相手へ離婚の意思を伝える前に、一度弁護士へ相談してみてください。

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